元神様の異世界放浪記(仮

辛味噌

第9話 帰還

 灼熱溶解焼夷炸裂球クリムゾン・フレア・ナパームの閃光が収まるの確認して衛星視力サテライト・アイで上空から戦場跡を確認する。俺の愛騎を中心に周囲250メートルは融解している。操虜呪レピティッション・プリズナーによって誘い込まれた奴らは何が起こったかすら解らず燃え尽きただろう。しかし悲惨だったのが融解範囲の外だろう。一瞬で燃え尽きた奴らはいいが時間をかけてじわじわと焼かれていくとか悲惨だな。
 取り合えずメフィリアを降ろす。気絶してるわけではないからそのまま突っ立ってるだけなんだが、ここはやはりショック療法かね? よし!

 少し屈み右手で強く引寄せた細い腰を抱いて、左手は顎に手を掛け少し持ち上げ荒々しく唇を重ねた。舌を侵入させ彼女の口内を蹂躙する。
「んっ…………」
 瞳に力が戻り抗議するようにくぐもった声をあげる。無視して応え方を知らない無知な彼女を一方的に貪った。
 唇を離すと呼吸が上手くできなかったメフィリアが乱れた呼吸を整え始める。潤み始めた双眸に甘さと熱が帯び頬を桜色に染める。その表情は少女というより前世の色香を纏いつつあり、一瞬理性を見失いそうになる。危ない危ない。
「続きは来世でって約束だったけど、心の準備もしてないのに、いきなりはないよぉ」
 やや甘い声音で抗議するが、このままこんな場所で続きをするわけにはいかない。
「ショック療法だったんだが上手くいったな」
 メフィリアの頭を撫でつつ自賛してみる。正直言うと前世の殺伐とした終末戦争を乗り切った俺らのメンタルからすると思わず「弱くなったか?」と確認を取ってしまう。

「うん。自分でも弱くなったと思う…………。争いもなく凄く幸せだったの。それが一夜で隠れ里が半壊で見知ったものも大半は殺されてものすごくショックだったの……」
 徐々に声が小さくなっていく。「まさか自分が転生したせいでとかいう罪の意識じゃないだろうね?」と問うと「そこまでは思ってないけど……」と徐々に尻すぼみな回答である。
 不意打ちでもう一回唇を重ねる。今度は舌は入れない。
 理性の戻りつつある紫の双眸を見つめつつ抱き寄せていた身体を離す。
「あっ……」
 そう残念そうな声を出さないで欲しい。

「メフィリアはどうしたい?」
「えっ……と……」徐々に頬が赤らんでいく。いや、続きをするかと聞いてるんじゃないんだよ。よし一旦冷静になろう。
 メフィリアをお姫様抱っこしてやり、そのまま泉に飛び込んだ。
「水浴びをするには、まだ早いと思うの」
「ちょっと桃色思考を冷ましたかっただけだよ」
「「…………」」
 微妙に気まずかったので早々に泉から上がろうと魔法を唱えようと思ったところ背後に魔力が満ちるのを感じた。振り返るとそこには鏡のように輝く銀色の魔導騎士マギ・ナイトフューネラルが立っていた。流石相棒はいいタイミングで来る。

「流石相棒。待ってたよ」略式で浮遊レビテーションを発動させてメフィリアを抱えたまま泉からでる。胸部の開閉機構が開き「いきなり貴方のヴァイスリッターが消えるから何があったかと急いで来てみれば心配して損しましたよ」と相棒が出てくる。
「季節外れの水浴びはせめて服脱いでからにしてください」と略式で脱水ディハイドレートを発動させて濡れ鼠の俺たち衣装から水分を飛ばしてくれる。

「ヴァルザス。こちらの方は?」
「相棒のフェリウスだ。メフィリアには銀鱗の龍王と言ったほうが判りやすいか」
「龍王らしくないから全く判らなかったわ」と洩らすと「もう長い時間を人の姿で過ごしてますからね。なんなら変化ポリモルフ解きますか?」と相棒が答える。
「ううん。周囲の万能素子マナも結構目減りしてるから、また人の姿に変化ポリモルフするのも大変だろうし、銀鱗の龍王が目覚めたとか噂が広がったら世界は大混乱よ」そうかえした。

「ところで何がありました?北の方ですごい状態になっていましたが」と聞いてくるので掻い摘んで説明する。それに対して「「明らかにやり過ぎです」」と二人に説教されてしまった。解せぬ。

「取りあえず仮拠点のムーザに戻りましょう」
 相棒の転移門ゲートでムーザの街の宿泊している宿屋に戻る。

「なんじゃ、随分と早いお帰りではないか。てっきり一週間くらいしっぽりやってくるかと思っておったぞい」と戻って早々にバルドに突っ込まれる。俺もそのつもりだったんだけどね。世の中思い通りにはならないものだ。

 紹介やらも終わらせて丁度4人揃ってるし今後の行動予定を伝えると
「あそこは大陸どころか世界の様々なものが揃いますから、拠点には良いかもしれませんね」
「美味いモノ巡りが出来ればどこでも行くぞい」
「隠れ里から出た事なかったから何処へでも」
 反対意見はないし出来るだけ早めに此処を発とう。

「ところで」と前置きしてから「ヴァイスリッター再建ですが、充てはあるんですか?こっちには補修用のパーツくらいしかありませんからほぼ新造騎になると思いますが?」と相棒が聞いてくる。それに対して「ないな」と答えておく。最悪既製品レディメイドで済ますさ。
 それにしても腹が減った。着の身着のまま連れてきたメフィリアの取り敢えずの日用品とかも買わないといけないし外出するか。
「メフィリアの着替えとか日用品を買出しに行こう」と左手を差し出す。
 好奇心がウズいていたのかソワソワしていたメフィリアは差し出された腕に右腕を絡ませてきた。
 街中をぶらぶらと二人して歩いてるが会話はほぼない。勢いで宿屋を出たはいいが、お互いどうするか牽制しあっている状態である。話したい事、聞きたいことは沢山あるのだが何から手をつけていいのか、お互いにまとまっていないのである。そうこうしているうちに最初の目的地である服飾店に到着してしまった。店舗の格は富裕層向けの為かそれなりに身なりの整った客ばかりだ。
「ウィンダリアできちんと揃えるつもりだから、ここでは2、3着で済まそう」
「うん」
 そう言って店内に入る。中に入るとメフィリアの瞳が輝きだした。この世界に限らず女性用衣装は結構デザインも素材もカラーも豊富だ。ま~着飾った美しい女性を愛でるのが嫌と言う男も居まい。高谷や異邦人から提供してもらった知識でも似たようなものが結構ある。案外向こうの世界の住人がこれらの服飾を広めた可能性もあるな。そんな事をぼんやり考えつつ、姿見の前で幾種類の服を身体に当てつつ一喜一憂してるメフィリアを眺める。絞り込めたのか3着ほど残して残りはハンガーに戻した。ちらちらとこちらと店内の奥のほうのコーナーを交互に見やっている。さりげなく確認すると下着コーナーか。
 女性の店員を呼び大銀貨一枚握らせメフィリアの下着をいくつか見繕ってやって欲しいとお願いする。請け賜りましたと言ってメフィリアをつれて奥へ行く。
 今後について思案する。ヴァイスリッターの再建、この世界の調査、光輝教を国教に据える神聖帝国の皇帝をボコる。後は神人族の隠れ里を探しだすことか?当面はこんなところだろうか?暫く考え込んでいると先ほど世話を頼んだ店員がお会計お願いしますと言ってきたので代金を払う。結構高額だな。1000ガルド超えるとは想定してなかったわ。

 最初の買い物も終わり少し無駄な緊張が解けたと言うべきか、ポツポツとお互いのこれまでの事を話始めた。これは話が長くなりそうだと思い良さそうな食事処を探し遅すぎる昼食を交えつつ有意義な時間を過ごした。ひとつ問題があったのは、メフィリアが隠れ里での生活では見ることの出来なかった色とりどりのメニューに食い意地をはって満腹すぎて動けなくなった事だろうか。正直意外な一面を見た。考えてみれば俺たちはこういう余裕もない世界で巡り会ったんだなと改めて思い、予てからの疑問を口にした。
「私が生き残りたいがために、転生を選んだとどうして思ったの?選択転生リデザイン・リインカネーションはある種の呪いよ?どちらかの魂が死を迎えるまで永遠に魂が紐付けされるんだから最良と思った人と結ばれたいと思った事がそんなに不思議?」
「あの時は選択肢に俺しかいなかった。記憶が戻って10年色々想像を廻らせてしまって不安だったんだよ」
 溜息を漏らし背負われていたメフィリアはぐっと身体を押し付けてきて耳元で囁く。
「もう大丈夫ですよ。私はここにいます」
 不思議とそれを聞いて安心してしまった。更に彼女の言葉は続く。
「本当は7歳で記憶が戻ったときに、直ぐにでも捜しに行きたかったの。でも次元門ディメンジョン・ゲートが機能しなくて、それで対策を考えているうちに記憶を閉ざす事になってしまって…………」
「メフィリアほどの魔法強度でも打ち破れないのか…………やっかいだな。最悪の場合は相棒に頼むか」
「世界が滅ぶからそれはダメ」
 怒られた。話を変えよう。
「ところでお互いに課した封印はどうする?双方の許可なく開放できない訳だが?」
「今はまだいいかな。封印してある力に縋らなければならない事態が来るとは思いたくないって言うのが本音かな。無駄に力があると無理しそうで……」
「君が?」
「ううん。貴方が」
 俺かよ。

 都市の住民が憩いの場としている噴水のある広場に着きメフィリアを降ろす。周囲にある露店に興味があるのか、顔に食べたいと書いてある。甘味は別腹というし買ってくるか。パンケーキを主食と見るか甘味と取るかは意見が分かれそうだが、パンケーキの露店と言うのは珍しいのではないのだろうか?価格は8ガルドとかなり客層を選ぶ気がするが、食器を返却すると2ガルド返してくれるそうだ。
 ソースを選べるのか……。生クリームのといちごのソースと2種類購入した。残りは次の機会だな。

 メフィリアを一人置いてきたのは失敗だったな。幼さが抜けてないとはいえその美しさは群を抜いているし非常に目立つ。なによりも存在そのものというか筆舌しがたいオーラがあるんだよな。流石は前世で男女問わず巨神族の信者を持ってた偶像アイドルではあるな。取り敢えず周囲を囲んでいる冒険者風の若いのを排除するかと思っていると…….。

 突然警報が鳴り響く。暫くすると兵士らしき一団が豚鬼オークの軍勢が接近してると触れ回っている。それを聞いた住民達は一気に各々の家へと駆け込み、露店商なども店じまい始めた。白けるな。市壁の門を閉めれば豚鬼オークの集団とかどうとでもなるじゃないか。

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