こんなふざけた裁判に弁護士なんていらない!

Len Hat

第一章 第6話【不完全な証拠品】

裁判長「一体どういうことですか?」
弁護士「まず、事前に被害者に睡眠薬で眠らせた後、殺害します。その後、誰かに拾わせるようにこの拳銃を被害者の近くに置けば、罪を着せることができます」
裁判長「なるほど、確かにそれなら可能ですな」
検事「それはあり得ませんな」
弁護士「どうしてですか?」
検事「この解剖記録に被害者の体内には睡眠薬は検出されていません。と書かれています。それにわざわざ人の多い場所で遺体を遺棄し、偽装工作をする必要があるんですか?被害者の殺害が目的なら人気のない場所で行い、遺体を隠すのが普通でしょう」
弁護士「人がいるところで殺害する理由があったら、どうですか」
裁判長「確かにそれなら、このような殺人に納得できますね」
検事「では、弁護側に問います」
弁護士「なんでしょうか?」
検事「その理由はなんですか、人前に死体を遺棄する理由は?」
椿「...」と二人のやりとりをただ見るしかなかった。
弁護士「それは被害者が死亡することで犯人のメリットになることです」
裁判長「どういう意味ですか?」
弁護士「被害者を殺害することで得するのでなく、被害者の死で得することです」
検事「被害者の死で得する人?」
弁護士「例えば、遺産目当ての犯行のようなものです」
検事「ということはこの犯行は社員か身内の犯行と言いたいのか?」
弁護士「その通りです」
検事「ふん、残念ですが、それもあり得ません」
弁護士「えっ」
検事「犯行当時、酒場の近くに彼に関係のあるものはいませんでした」
弁護士「どうしてそんなことがわかるんですか?」
検事「アリバイです」
弁護士「えっ」
検事「彼の会社の社員は犯行時刻に会社におり、身内は自宅にいたと確認できた」
弁護士「それを証明する証拠はあるんですか?」
検事「彼の社員たちはタイムカードや領収書でアリバイが取れましたが、身内のことですか...」
裁判長「どうされましたか?」
検事「実は彼の身内の全員、先ほど火災により焼死体として発見されたことがわかりました。」
検事の言葉で法廷中ざわめいた。
裁判長「なんと!」
検事「これで身内の犯行でもありません」
弁護士「そんな!」
検事「弁護士の推測は不可能なことが証明されましたな」
弁護士「くっ」
検事「それに動機の件ですが,社員か身内から恨んでいた様子はありません」
裁判長「ふむぅ」
椿「少し検事に質問してもいいですか」と話の腰を折った。
検事「なんですかな.被告人」
椿「私が被害者を殺害する動機はあるんですか?」と今までのやりとりを見て、疑問に思ったことを口にした
検事「もちろん、それを証明する証拠品もあります。なぜそんなことを聞くのですかな」
椿「検察側から提出された証拠品にはいくつか矛盾があったので、弁護側もそれについて検討する必要があると思います」
検事「その必要はありません。今必要なのは判決でございます.裁判長閣下」とこの話を終わらせようとするが
弁護士「今,必要なのは判決ではなく、証拠品を検証し、真実を明らかにすることです.裁判長」と反発した。
裁判長「静粛に,それでは本法廷の見解を述べる.本件は被告人が被害者を撃ったという前提のもとに審理を進めていたものと考える.だが,その前提にいくつかの疑問点に浮かび上がった.本法廷はそれらを無視して判決を下すことはできない.よって,検察側の要請を却下します」と審理の続行を命じた。
検事「ぐっ」と弁護側を睨みつけた。
裁判長「では,検察側はその証拠を提出してください」
検察側は動機に関する証拠を提出した
弁護士「よし,せっかく掴んだチャンスです.調べましょう!」と小声で喜びを口にした。
椿「はい」と同じく小声で答えた。
検察側から提出された証拠は手帳、財布のみだった。
弁護士「私は手帳を調べるから、あなたは財布を調べてください」
椿「わかりました」
椿が財布を調べると中にはお金がなく、あったのは名刺と紙切れだけだった。紙切れには見たこともない文字と数字が並んでいた.
椿「弁護士さん,この紙切れ」と呟いた。
弁護士「暗号かしら.読むことができれば,何かわかるかもしれないけど」と返した
椿「手帳はどうでしたか?」
弁護士「どうやら,顧客帳簿のようです.ここには被害者が相手に貸した額と返済日が載っていますが,気になるところが二つあるんです.」
椿「二つもあるんですか」
弁護士「一つはこの帳簿にアデーレさんの名前があることで,もう一つは破られた後があるところです.」と手帳を見せながら、説明した。

弁護士の言われた通りに帳簿を見ると確かに破られた後があり,アデーレの名前のところに3000ガロンの借金と返済日が近いことが書かれていた.

椿「これで検察側が僕を疑う理由がわかりましたね.」
弁護士「そうね.因みにこの紙切れ貸してくれる」
椿「どうぞ」
弁護士は帳簿の破れた部分と紙切れを合うかどうか見比べたが,どうやら会いそうになかった.
弁護士「帳簿と紙切れは違うものらしいですね.因みにこの帳簿の破れた紙切れは持っている」
椿「いいえ,持っていません.この帳簿を見るのも初めてですし」
弁護士「そうですよね」
検事「二人こそこそ何話しているのですか」と茶々を入れた。
弁護士「なんでもありません」と返した
椿「この帳簿が動機の証拠ですか?」
検事「そうです.被告人は被害者に借金をしていた.だが,返済日に借金を返せそうにないため,殺害した.さらに,被害者と被告人の繋がりを無くすためにこの帳簿から自分の名前の部分だけ破り取った.」
弁護士「では,その紙切れは見つかったのですか」
検事「いえ,事件が発生してすぐに被告人の身体検査,荷物検査,店内の捜索しましたが,見つかりませんでした.」
弁護士「それでは,証拠として不十分なのではないでしょうか」
検事「確かにそうですか,これは帳簿が証拠ではなく,その帳簿から破れた紙切れがこの犯行の証拠となるのです」
弁護士「そうですか」
椿「アデーレさんに質問ですか,この帳簿に書かれていることは本当ですか?」
アデーレ「えぇ,確かにリグイース氏から3000ガロン借りていますわ」
裁判長「大金ですな.何のためにそんなに借りたのですか?」
アデーレ「新しいプロジェクトのためにはそれなりにコストがかかるのですよ」
裁判長「なるほど」

そのやりとりをみていた椿はふとあることに気づいた。
もし,これが動機なら、アデーレさんが犯人なのではと思った。でも、犯行を証明する証拠がない。そんなことを考えると肩を叩かれた.どうやら叩いたのは弁護士の彼女のようだ.
弁護士「どうしたの」
椿「少し気になることが」
弁護士「もしかしてアデーレさんのこと」
椿「えぇ,そうです」
弁護士「確かに彼女は怪しいわ.でも,今はこの紙切れのことについて考えないと」
椿「証人に見せるのはどうですか」
弁護士「なぜですか?」
椿「証人の反応を見るんです.もしかしたら,この紙切れの持ち主がわかるかもしれません」
弁護士「なるほどね,やっていましょうか」
椿「わかりました」
検察側はこちらの様子を伺っていることがわかる.
弁護士「証人の皆さんに質問します.こちらの紙切れに見覚えがありませんか」
検事「いったいどういうつもりですか」
明らかに動揺している検事を無視し,証人の反応を見た.
エルダーは特に反応を示さなかったが,ルアノとアデーレが驚愕していることがわかる.だが,その反応は紙切れに見覚えがあるのではなく,まるで既に紙切れについて何か知っていて,それで豆鉄砲を食らった鳩のようにうろたえてた.その様子を見て
弁護士「ルアノさんとアデーレさん,この紙切れに見覚えありますね」と続けた
ルアノ「うっ」
アデーレ「それはちがい..」と言いきる前に
弁護士「もし,故意に虚偽の証言をした場合,偽証の罪に問われます」と追い込んだ。
アデーレ「それはその..」と冷静さを失っていた。
裁判長「何か知っていることがあるなら、証言してください」
アデーレ「閣下、申し訳ありません。それはこの事件と関係ありません」と反論したが
弁護士「残念ですが、この紙切れは今回の事件に大きく関係しています」とその反論をねじ伏せた。
アデーレ「どうしてですか?」
ルアノ「なぜ、はっきりそう言い切れるんですか?」
弁護士「なぜなら、この紙切れは被害者の財布から発見されたからです」
弁護士のこの発言に証人の2人は言葉を失った。検察側もあまりこの状況を理解してないようだ。
少しの間、法廷が緊迫した空気に包まれた。
最初にその静寂を破ったのは椿だった。

椿「アデーレさん。もしかして、この紙切れに書かれていることは密輸された銃に関係があるのではないですか?」

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