こんなふざけた裁判に弁護士なんていらない!

Len Hat

第一章 第5話【矛盾した拳銃に異議を】

裁判長「まず,事件を目撃したという参考人の言葉を聞きたいと考えます.」
検事「では,証人をここへ」
検事の呼びかけに応じて豪華な装飾を身につけたご婦人,やせ細った成年,屈強そうな中年男性が法廷に入場した.
3人が証言台に立つと,検事が「では証人よ.それぞれ名前と職業を」
中年男性「エルダー・セルデン.軍需工場で働いている」
成年「僕の名前はルアノ・フォッサー.日雇い労働者です」
婦人「私の名はアデーレ・ヴァルト.カール・ヴァルト社の代表取締役であるカール・ヴァルトの妻をしていますわ」
弁護士「ヴァルト社ですって」と小声で驚きを口にした.
椿「ヴァルト社がどうしたんですか?弁護士さん」
弁護士「ヴァルト社はローネリアン内で銃火器を取り扱っている会社の一つで,同じ銃火器を扱っているルドー社とグロート社に並ぶ大企業なのです.その方がどうしてここに」と椿に説明している時,カンッカンと弁護士の言葉を遮るかのように裁判長が木槌を鳴らした.
裁判長「それでは,さっそく証人に証言を命じます.今回の事件において,諸君が見た.その事実について」

***証言開始~目撃したこと~***
エルダー「確かあれは...丁度昼過ぎだったな.いつもと同じように酒を飲んだ時に突然パンって銃声が聞こえたんだよ.」
アデーレ「その時,私もテーブル席でお酒を嗜んでいたら,後ろからパンと聞こえましたわ.」
ルアノ「僕もカウンター席でお酒飲んでいる時に聞こえました.音がした方に向くとその人が右手に銃を持って立っていたんです」
椿「僕はやっていない」
弁護士「ちょっと君、落ち着いて」
裁判長「被告は静粛になさい。続けてください」
ルアノ「その人を見たときに犯人だって言いました。」
エルダー「そこにいる青年がそう言ったとき、俺がそいつを指して大声で言ったさ。逃すなってな」
アデーレ「私もその人と血を流れてる人を見て、思わず悲鳴をあげてしまったわ」
ルアノ「するとその人が銃を手放したので、僕は隣にいる男性と一緒に捕まえました。」
エルダー「青年の言う通りに俺がそいつの腕を掴んで拘束したぜ」
アデーレ「私は落とした銃を手に取って、ようやくホッとしましたわ」
***証言終了***

裁判長「証言が終了しました。それでは弁護士は尋問をお願いします」
弁護士「君、準備いい?」
椿「準備って?」
弁護士「これから私たちは尋問するのよ」
椿「尋問って?」
弁護士「尋問っていうのは、先ほど証言について検証し、もし証言と矛盾していることがあったら、問いただすことよ。でも、今は情報が足りないから、まずは証人に質問することね」と呆れた顔で言った。
椿「わかりました。まずは質問ですね」とほぼゲームでやることと同じだなと思いながら言った。
裁判長「どうやら弁護士の話が終わったようなので、尋問を開始してください」と言った直後、早速
弁護士「それではアデーレさんに質問ですが、拾った銃はどうされましたか?」と尋問を始めた
アデーレ「拾った銃なら治安維持局の方たちに渡しましたわ」
検事「その時の拳銃がこちらです。」
提出された拳銃はあの時拾ってしまったものと同じだとわかった。改めてその拳銃を見てみるとその拳銃は自動式拳銃であることがわかった。
弁護士「裁判長、まずその拳銃を調べさせてください。」
裁判長「よろしいでしょう」というと拳銃は弁護士の手元の渡った。
弁護士は拳銃からマガジンを抜くと抜いたマガジンから弾を取り出した
弁護士「私は弾を調べるから、君は銃の方を調べて」と残し、弾調べ始めた。
二人が調べている間、検事は証人たちに質問している。

 椿は銃本体を調べると所々おかしいところがあった。その拳銃はスライドが全体的に角がなく丸みを帯びており、フレームがそれらを包み込むように取り付けられている。グリップ部分はマガジンよりかなり太めに作られているが、トリガーがない。その他は特におかしなところはなかった。ただトリガーのない銃に不思議と思った彼はその銃を手に取ろうとグリップを握った瞬間、カチッと鳴らし大きくスライドが後退した。

それを見た弁護士は「何ホールドオープンしているの」
椿「違います。拳銃を握ったら、こうなったんですよ」
弁護士「変わった銃ね。」
椿「確かにそうですね。弁護士さんの方はどうでした?」
弁護士「空砲しか撃てないように全部弾頭が抜かれているわ」
椿「空砲しか撃てない?」
弁護士「もし、これが凶器だとすると少しおかしいわね」
椿「そうなんですか」
弁護士「これが凶器なら確実に被害者を殺害するために全ての弾に弾頭をついていないとおかしいわ。それにその拳銃は私が軽く見た感じだけど異国で作られたものだと思う。」
椿「本当ですか」
弁護士「これで余計にこっちが不利になったわね」
椿「少しその拳銃を貸してください」
弁護士「ちょっと」
椿「アデーレさん、この拳銃についてどう思いますか」
裁判長「どうされましたか、弁護側」
椿「拳銃について詳しい方としてアデーレさんに質問します。この拳銃について何か知っていることはありませんか?」
アデーレ「知っていることと言われましても、今までこのような型の拳銃は見たことはありません。...ただ言えることは少なくても我が社の拳銃ではないことは確かですわ。それにおおよそですが、ローネリアンにある会社で作られたものではありませんわ。」
椿「つまり、異国で作られたものだということですか」
弁護士「ちょっとそれ言っちゃ」
アデーレ「その可能性が高いですわ。...てっまさか!」
椿「何か知っているんですね。アデーレさん」
アデーレ「えぇ、事実かどうかよくわからないのですが、ここ最近で密輸入された銃が裏で売買されていることがあるみたいなのですわ」
裁判長「なんと」
検事「この拳銃がそうだというのですか」
それを聞いていた傍聴席がざわめいた
検事「この拳銃をどこで作られたかは本件には関係ない」
弁護士「どうしてですか」
検事「この裁判で問われていることは誰が被害者を撃ったかということだ」
弁護士「うっ」と言葉を詰まらせる
検事「それにこの事件は極めて単純だ。証言と証拠が被告を指している。他におかしいところはない」
椿「おかしいところならあります」
検事「なんですと」
裁判長「それはなんですか」
椿「凶器の拳銃に残された弾です。」
検事「弾のどこかおかしいのですか」
弁護士「こちらで調べた結果、全ての弾には弾頭がありませんでした」
椿「もし、犯人なら確実に被害者を殺害するために弾頭は抜くはずがありません」
検事「ふん、それをする理由ならあるでしょう」
弁護士「どんな理由ですか」
検事「その場から逃げるためです。威嚇射撃で追ってこないようにし、逃げるつもりだったのでしょう。」
弁護士「そんなの憶測にすぎません。」
検事「この件に関しては確かに憶測でしかないが、検事側には被告人を疑うもう一つの証拠があります」
弁護士「なんですって」
椿「なんだって」
検事「裁判長閣下、検事側は証拠を提出します。」と証拠品を提出した。
椿「ち..が..う..の..に」と力なくつぶやいたあと、提出した証拠品をみる。

 検事側が提出した証拠は複数の書類がファイルにまとめられていた。ファイルの表紙には「事件文書」と書かれていた。そこには今回の事件について詳しく書かれていた。その中で目を引いたのは「加害者から拳銃の発泡による硝煙反応が発見された。特に左手から左腕にかけて強く反応した。」と「試薬で検証した結果、拳銃から加害者の右手の指紋が検出された。」の二つである。彼にもはっきりと矛盾していることを理解した。彼はこの絶望的な状況でもまだ諦めるわけにはいけないと思った。横目で弁護士の様子を伺うと彼女は拳を強く握りしめながら俯いていた。多分検察側が証拠品を提出した後からずっとこの状態だったのだろう。その様子を見ていた検事は「どうやらこれで決着がつきましたね」とつぶやいた。検事の言葉に彼は憤慨した。こんな不十分な証拠で有罪が決まってしまうことにふざけるなと思ったからだ。彼は今まで自分の受けた理不尽な仕打ちや我慢していた感情を一言に込めて法廷にむかって放った。
「異議あり!!」
その言葉は法廷中を力強く響きわたった。
その場にいた全員が彼の言葉に圧倒され、一時的に法廷が静まり返った。

数分の静寂の後、裁判長「なんですか、この静寂は」
検事「被告人これは一体なんのつもりですか」
椿「矛盾です」
裁判長「むっ!」
検事「はぁっ」
弁護士「えっ!」
椿「検事側から提出した証拠品から矛盾を見つけました」
検事「一体何を言っているのですか?そんなわけないでしょう」
裁判長「被告人続けてください」
椿「検察側から提出したこのファイルには「加害者から拳銃の発泡による硝煙反応が発見された。特に左手から左腕にかけて強く反応した。」ということが書かれていました」
検事「それのどこがおかしいのですか」
椿「その前にすみませんが、アデーレさんに質問します」
アデーレ「なんでしょうか」
椿「拳銃を発砲した場合、体に一番多く硝煙がつく場所はどこですか?」
アデーレ「少量なら全身につくけど一番多くつくのは拳銃を持っている方の手ですわ。」
検事「それのどこが問題ですか被告人が左手で撃っただけでのことでしょう」
弁護士「それだとルアノさんの証言と矛盾してます」
検事「見間違いでしょう」
ルアノ「そんなはずは」
椿「ルアノさんの証言は矛盾していません。この書類にも「試薬で検証した結果、拳銃から加害者の右手の指紋が検出された。」と書かれていました」
検事「くっ」
椿「これでは検事が言ったことと証拠品の辻褄が合いません。」
検事「では、これらはなんだと言うのかね。それが説明できなければ話になりませんな」

 検事の言葉で改めて考えてみるが、なぜこのような矛盾が生まれたのが全く検討がつかなかった。このことに彼が頭を抱えているのに対し、隣にいた弁護士は引きつった顔でふてぶてしく微笑んでいた。その後、彼女は検事に向かって

弁護士「それは犯人が被告人に罪をなすりつけるために行った偽装工作です」と断言した。

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