異世界転移!~俺は金(マネー)で強くなる!~
六話:マネー男とランクアップ
今、俺達は盛大に注目を集めている。
ギルドの机に座っていても視線のせいでなんだかぎごちない。
なにせ金ばっかりの男とスーパー美少女がFランク中世界最速で初心者ダンジョンをクリアしたのだからそれも無理はない。
世界最速という情報を手に入れたのはサテラが一番だった。
彼女は何を思ったのかその噂を広めて今では街全体が俺のことを知っている。俺達にそれを教えたのもサテラだった。本当に何を思ったのか。
「で、貴方はどうしてそんなに不機嫌なのかしら?」
「早く帰って金でステータス割り振りてえよ、この視線もうヤダ」
ギルドマスターから話があると言われて此処に留められたのだ。音が流出するのを防ぐシールドをラフェエニルが張っているため声は漏れたりはしない。
しかし向こうからの視線はただ漏れだ。
中には睨んでいる者もいる。
熟練の冒険者ににらまれると相当な威圧感が襲う。勿論戦っているときのラフェエニルの方がもっとすごいのだがそれでも多少の影響はある。
「お待たせいたしました。ギルドマスター室に案内させていただきます」
「ん。了解」
「ちょっと待ちなさい健樹君。忠告したいことがあるの、ギルドマスターは国王にも意見が出せるくらい偉い人なの、だから失礼なことは言わないようにしてほしいわ」
「あー、敬語は無理そう。でもまあ頑張るわ」
金があれば何でもやってきた、金に尽くしてきた。そんな俺に礼の仕方とか敬語とかそんなものは微塵も分からない。
乱暴な者もいる冒険者を管理するくらいなら、多少の無礼も許せるのではないか。
そう考えているうちにサテラに案内されたのは木で作られた扉だった。
「よいしょ」
重くも軽くもない、ちょうどいいくらいの重さの扉を大げさな掛け声をして開けるとそこには目に包帯を巻いた俺の世界では中二病のような紫の髪の毛が足まである女性が居た。
サテラは彼女の姿に呆れてはいるが疑問は何も持っていないようだった。
ラフェエニルも半ば白い目で彼女を見ていたが、気づかれると困るのですぐに引っ込めていた。しばらくしてギルドマスターの女性から声がかかった。
「……貴様が、ケンキだな?」
「あーへい、そうっす」
敬語を試みようとしたものの中途半端な敬語で終わってしまう。
「貴様は自分の人気度を分かっているのか?」
「え、分からないっす」
「私よりも人気になりやがって、許さん!! ユルサぁあん!」
俺は金好き。彼女は恐らく人気度にこだわっている。
まあ、俺がそれを奪ってしまったのだから目を見開いて血泪を流しながら俺を見ているのも分からないわけではない。
「えっと……すいません? で、何で此処に呼んだんっすか?」
「至急、貴様のランクを上げることになった。これほどの人材は利用できないことが惜しい、私個人の判断だ」
「へぇ」
国王と関係が深い彼女はあまり深い機関に通さずに自分の判断でランク上げをすることは簡単だった。彼女の実力は国王の側近の騎士にも認められている。
ギルドマスターになる前はSランクまでたどり着き、賢者にはならずギルドマスターになりたいと語ったのだ。
ちなみに前代ギルドマスターは彼女の父らしい。
……というのをサテラが耳打ちで教えてくれている。マスターさんは特に気にしていない。
「それで、私の名はメリア。ギルドマスターだ。闇の星に導かれ此処まで成り立った。よろしく」
「……へい」
中二病だったのは当たりだった。
この世界でこういうことを言うのは「占い師」と呼ばれている。占いはしないが、それっぽいという理由で定着していた。
メリアの言葉には反応せずしばし間をおいて俺は返事をした。
「そういえば、だな。敬語はやめろ」
「敬語もどきなんだけどな? メリアさんにはこれが敬語に聞こえるのかよ?」
「ああ、脳内変換をするとそう聞こえる」
妄想癖もあったか。
「貴様のランクは今日から、いや今からDランクだ。Fでは討伐系の依頼がスライムダンジョンしか受けられないが、Dランクになるとそのほかの討伐系依頼も受けられる」
「金が、もっともらえるということだな?」
「そ、そうだな。噂に聞いた通りやはり金が好きなのだな。ランク上げ祝いとして五万マネーを渡しておこう。これは信頼の証でもある」
「やっっっっっっっ……たぁああああああああああああああ!!」
たかが五万円、されど五万円である。いや、五万マネーか。
五万円でギルドマスターメリアの財布は少しも揺るがないが、俺にとっては少しでも金を貰えるだけで飛び上がるほど喜ぶ。
そんな俺を見てメリアは「斬新だな」と言って微笑んだ。
これでステータスがもっと強くなる。
スライムダンジョンでの報酬は六千五百マネーだった。めちゃくちゃ強くなれる。
「今日は話は終わりだ、帰れ」
「おーう」
追い出されたのでさっさと家に帰ることにした。
家に着いた俺とラフェエニルは俺の部屋に集合し、まずステータスを割り振ることにした。五万六千五百マネーを割り振ったらひとつの種目だけでも一万を超える。
怖くてたのしくてよだれが零れそうになる。
「さて、ステータス割り振るぜー?」
「全額割り振る気なの?」
「そうじゃねえの?」
「生活費とかそういうのはいらないの?」
「出せねえの?」
「出せるけれど……ま、今のところ全部割り振りましょう」
仕方がない、とラフェエニルはため息をつきながらそう言った。食料についてはラフェエニルが出してくれるし、生活用道具については最初からそろえてある。
服は当分いらないし、無駄遣いをするつもりもない。
これが俺の節約術だ!
健樹
二十二歳
独身
称号:異世界人
魔力:10660(₊10600)
速度:10612(₊10600)
体力:10603(₊10600)
攻撃力:10606(₊10600)
防御力:10607(₊10600)
属性:———
スキル:マネー・チェンジ(所有マネーでステータスに割り振れます)/マネー・買/マネー・売(所有マネーを使ってスキル、属性を買ったり売ったりできます)
所有マネー:六千五百マネー
「あれ? 全部割り振らなかったの?」
「属性やらスキルやら買うんじゃなかったのか」
「そうだったわね。ひとまず火と水を買うマネーはあると思うわ」
健樹
二十二歳
独身
称号:異世界人
魔力:10660(₊10600)
速度:10612(₊10600)
体力:10603(₊10600)
攻撃力:10606(₊10600)
防御力:10607(₊10600)
属性:火/水
スキル:マネー・チェンジ/マネー・買/マネー・売
所有マネー:三百マネー
さりげなくスキルの説明が消え去っているのは触れないでおこう。
火と水はひとつ三千百マネーで意外にもお買い得だった。
これでも三百マネー余ったのだから、せっかくなので取っておくことにした。
「私もどれだけ買えるか分からなかったのよ、六千五百マネーあれば買えると思ったのだけれど、まさか余ってしまうほど安かったなんてね」
「チートスキルなんだからさ、雑魚属性である火とか水とかはもうちまっとした金で買えるってことじゃねえのか?」
「……そうだといいわね。私は調子に乗ってそのスキルは私が用意した的なことを言っていたけれど、違うのよ。それは全能神ゼウス様の加護よ」
「よりによってぇ!?」
ギリシャ神話なら少しは聞いたことがある。
今はラフェエニルのスキルではないということよりもゼウスの加護であったことの方が気になる。
「あら、性格はちょっとばかりヤバくてもチートスキルなのよ? ゼウス様を呼び出すわけでもないんだし、そこまで驚かなくてもいいわよ」
「だっていい噂がねえんだよ……」
「はいはい、三百マネーがあればひとつはスキルが買えるわよ」
健樹
二十二歳
独身
称号:異世界人
魔力:10660(₊10600)
速度:10612(₊10600)
体力:10603(₊10600)
攻撃力:10606(₊10600)
防御力:10607(₊10600)
属性:火/水
スキル:マネー・チェンジ/マネー・買/マネー・売/鑑定不可能LV1
所有マネー:0
鑑定不可能スキルとは「鑑定拒否」よりも一段上のスキルだ。人のステータスを見ることができるスキル「鑑定」をどれだけレベルが高くても見ることができなくする。
チートスキルを持っているのだから見られたらヤバイと思ってこれにした。
「まあ、今日はこれでいいわね」
「おう」
それだけの会話をしてラフェエニルは去っていった。
そして俺も布団の中にくるまって眠りについたのだった。
――――――色々、マジでありすぎた。
(ゼウス様? の加護って……俺目付けられてるってことだろ、怖えよ)
それだけは頭から離れなかったのだった。
ギルドの机に座っていても視線のせいでなんだかぎごちない。
なにせ金ばっかりの男とスーパー美少女がFランク中世界最速で初心者ダンジョンをクリアしたのだからそれも無理はない。
世界最速という情報を手に入れたのはサテラが一番だった。
彼女は何を思ったのかその噂を広めて今では街全体が俺のことを知っている。俺達にそれを教えたのもサテラだった。本当に何を思ったのか。
「で、貴方はどうしてそんなに不機嫌なのかしら?」
「早く帰って金でステータス割り振りてえよ、この視線もうヤダ」
ギルドマスターから話があると言われて此処に留められたのだ。音が流出するのを防ぐシールドをラフェエニルが張っているため声は漏れたりはしない。
しかし向こうからの視線はただ漏れだ。
中には睨んでいる者もいる。
熟練の冒険者ににらまれると相当な威圧感が襲う。勿論戦っているときのラフェエニルの方がもっとすごいのだがそれでも多少の影響はある。
「お待たせいたしました。ギルドマスター室に案内させていただきます」
「ん。了解」
「ちょっと待ちなさい健樹君。忠告したいことがあるの、ギルドマスターは国王にも意見が出せるくらい偉い人なの、だから失礼なことは言わないようにしてほしいわ」
「あー、敬語は無理そう。でもまあ頑張るわ」
金があれば何でもやってきた、金に尽くしてきた。そんな俺に礼の仕方とか敬語とかそんなものは微塵も分からない。
乱暴な者もいる冒険者を管理するくらいなら、多少の無礼も許せるのではないか。
そう考えているうちにサテラに案内されたのは木で作られた扉だった。
「よいしょ」
重くも軽くもない、ちょうどいいくらいの重さの扉を大げさな掛け声をして開けるとそこには目に包帯を巻いた俺の世界では中二病のような紫の髪の毛が足まである女性が居た。
サテラは彼女の姿に呆れてはいるが疑問は何も持っていないようだった。
ラフェエニルも半ば白い目で彼女を見ていたが、気づかれると困るのですぐに引っ込めていた。しばらくしてギルドマスターの女性から声がかかった。
「……貴様が、ケンキだな?」
「あーへい、そうっす」
敬語を試みようとしたものの中途半端な敬語で終わってしまう。
「貴様は自分の人気度を分かっているのか?」
「え、分からないっす」
「私よりも人気になりやがって、許さん!! ユルサぁあん!」
俺は金好き。彼女は恐らく人気度にこだわっている。
まあ、俺がそれを奪ってしまったのだから目を見開いて血泪を流しながら俺を見ているのも分からないわけではない。
「えっと……すいません? で、何で此処に呼んだんっすか?」
「至急、貴様のランクを上げることになった。これほどの人材は利用できないことが惜しい、私個人の判断だ」
「へぇ」
国王と関係が深い彼女はあまり深い機関に通さずに自分の判断でランク上げをすることは簡単だった。彼女の実力は国王の側近の騎士にも認められている。
ギルドマスターになる前はSランクまでたどり着き、賢者にはならずギルドマスターになりたいと語ったのだ。
ちなみに前代ギルドマスターは彼女の父らしい。
……というのをサテラが耳打ちで教えてくれている。マスターさんは特に気にしていない。
「それで、私の名はメリア。ギルドマスターだ。闇の星に導かれ此処まで成り立った。よろしく」
「……へい」
中二病だったのは当たりだった。
この世界でこういうことを言うのは「占い師」と呼ばれている。占いはしないが、それっぽいという理由で定着していた。
メリアの言葉には反応せずしばし間をおいて俺は返事をした。
「そういえば、だな。敬語はやめろ」
「敬語もどきなんだけどな? メリアさんにはこれが敬語に聞こえるのかよ?」
「ああ、脳内変換をするとそう聞こえる」
妄想癖もあったか。
「貴様のランクは今日から、いや今からDランクだ。Fでは討伐系の依頼がスライムダンジョンしか受けられないが、Dランクになるとそのほかの討伐系依頼も受けられる」
「金が、もっともらえるということだな?」
「そ、そうだな。噂に聞いた通りやはり金が好きなのだな。ランク上げ祝いとして五万マネーを渡しておこう。これは信頼の証でもある」
「やっっっっっっっ……たぁああああああああああああああ!!」
たかが五万円、されど五万円である。いや、五万マネーか。
五万円でギルドマスターメリアの財布は少しも揺るがないが、俺にとっては少しでも金を貰えるだけで飛び上がるほど喜ぶ。
そんな俺を見てメリアは「斬新だな」と言って微笑んだ。
これでステータスがもっと強くなる。
スライムダンジョンでの報酬は六千五百マネーだった。めちゃくちゃ強くなれる。
「今日は話は終わりだ、帰れ」
「おーう」
追い出されたのでさっさと家に帰ることにした。
家に着いた俺とラフェエニルは俺の部屋に集合し、まずステータスを割り振ることにした。五万六千五百マネーを割り振ったらひとつの種目だけでも一万を超える。
怖くてたのしくてよだれが零れそうになる。
「さて、ステータス割り振るぜー?」
「全額割り振る気なの?」
「そうじゃねえの?」
「生活費とかそういうのはいらないの?」
「出せねえの?」
「出せるけれど……ま、今のところ全部割り振りましょう」
仕方がない、とラフェエニルはため息をつきながらそう言った。食料についてはラフェエニルが出してくれるし、生活用道具については最初からそろえてある。
服は当分いらないし、無駄遣いをするつもりもない。
これが俺の節約術だ!
健樹
二十二歳
独身
称号:異世界人
魔力:10660(₊10600)
速度:10612(₊10600)
体力:10603(₊10600)
攻撃力:10606(₊10600)
防御力:10607(₊10600)
属性:———
スキル:マネー・チェンジ(所有マネーでステータスに割り振れます)/マネー・買/マネー・売(所有マネーを使ってスキル、属性を買ったり売ったりできます)
所有マネー:六千五百マネー
「あれ? 全部割り振らなかったの?」
「属性やらスキルやら買うんじゃなかったのか」
「そうだったわね。ひとまず火と水を買うマネーはあると思うわ」
健樹
二十二歳
独身
称号:異世界人
魔力:10660(₊10600)
速度:10612(₊10600)
体力:10603(₊10600)
攻撃力:10606(₊10600)
防御力:10607(₊10600)
属性:火/水
スキル:マネー・チェンジ/マネー・買/マネー・売
所有マネー:三百マネー
さりげなくスキルの説明が消え去っているのは触れないでおこう。
火と水はひとつ三千百マネーで意外にもお買い得だった。
これでも三百マネー余ったのだから、せっかくなので取っておくことにした。
「私もどれだけ買えるか分からなかったのよ、六千五百マネーあれば買えると思ったのだけれど、まさか余ってしまうほど安かったなんてね」
「チートスキルなんだからさ、雑魚属性である火とか水とかはもうちまっとした金で買えるってことじゃねえのか?」
「……そうだといいわね。私は調子に乗ってそのスキルは私が用意した的なことを言っていたけれど、違うのよ。それは全能神ゼウス様の加護よ」
「よりによってぇ!?」
ギリシャ神話なら少しは聞いたことがある。
今はラフェエニルのスキルではないということよりもゼウスの加護であったことの方が気になる。
「あら、性格はちょっとばかりヤバくてもチートスキルなのよ? ゼウス様を呼び出すわけでもないんだし、そこまで驚かなくてもいいわよ」
「だっていい噂がねえんだよ……」
「はいはい、三百マネーがあればひとつはスキルが買えるわよ」
健樹
二十二歳
独身
称号:異世界人
魔力:10660(₊10600)
速度:10612(₊10600)
体力:10603(₊10600)
攻撃力:10606(₊10600)
防御力:10607(₊10600)
属性:火/水
スキル:マネー・チェンジ/マネー・買/マネー・売/鑑定不可能LV1
所有マネー:0
鑑定不可能スキルとは「鑑定拒否」よりも一段上のスキルだ。人のステータスを見ることができるスキル「鑑定」をどれだけレベルが高くても見ることができなくする。
チートスキルを持っているのだから見られたらヤバイと思ってこれにした。
「まあ、今日はこれでいいわね」
「おう」
それだけの会話をしてラフェエニルは去っていった。
そして俺も布団の中にくるまって眠りについたのだった。
――――――色々、マジでありすぎた。
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