【書籍化作品】無名の最強魔法師
記憶の竪琴(41)
何を調べているんだ?
身体強化魔法を発動。
視力を強化した上で、幼少期の姿をしているリネラスが何の本を見ているのか見てみる。
それは、魔力に関しての本。
内容は、主に双子が生まれた時の対処法と対策に関しての記述。
「メモリーズ・ファミリーか……」
「知っているの?」
「ああ……」
俺が呟いた言葉に反応してくるリネラス。
その目は、好奇心というよりも――、どこか縋っているようにも見える。
「持っていたりする?」
「持ってないな。ある場所は知っているが……」
正確には、自生していた場所――、ローランを知っていると言った方が正確かも知れないが……。
「それって近いの?」
「ここからだと遠い」
「カレイドスコープよりも?」
その問いかけに俺は頷く。
メモリーズ・ファミリーが自生する場所は、カレイドスコープとエルブンガストの中間地点――、どちらかと言えばエルブンガストよりの場所。
馬車での移動なら数か月は掛かる距離だ。
「そうなの?」
「ああ、数か月はかかる」
まぁ、俺が身体能力を限界まで強化して移動するなら数時間で移動できる距離だが――、それは……、この世界では意味がない。
「そう……なの……」
見上げていた視線を床に落とすリネラス。
すると床は、ポツポツと濡れていく。
「お父さんからも、向かった冒険者の人からも連絡が来ないの……、このままじゃイノンが死んじゃう……。魔力に身体を食われて死んじゃう……。私は、どうすればいいの?」
「リネラス……。リネラスは、イノンと知り合いなのか?」
「…………」
無言で頷くリネラス。
その表情は床を見下ろしたままで見る事は出来ないが、木製の床に染みが増えている事から泣いている事は分かる。
「ユリーシャと、イノンは……、私の友達だから……。この町にね……、来てから虐められていたのを助けてくれた大事な友達なの……。だから! 私は助けたいの!」
「……そうか」
ようやく――、イノンとユリーシャ――、二人とリネラスの接点が分かった。
それと共に、どうしてエリンフィートが二人に拒絶されたのかと言う事も。
そして、この世界にリネラスが囚われた理由も。
イノン、ユリーシャ、リネラスは顔見知りだったからだ。
「やっぱり……、あの方法しか……」
「リネラス?」
「ううん。なんでもないの」
泣きつかれたのかフラりと立ち上がり、室内のベッドの上に倒れ込むリネラス。
その表情は、泣きつかれているからなのか憔悴しきっているようにも思える。
「まるで回想を見せられているような気分だな……」
思わず口から出る言葉。
それと共に周囲の光景が一気に変わる。
場所は、廊下で――、どこか見覚えのある場所である光景。
「ここは、もしかしてイノンが経営していた宿屋か?」
周囲を見渡し確認するが間取りといい間違いはない。
ただ、どうしていきなり周囲の光景が変わるのか……。
ループをしているような感じは受けないが。
「ねえ? ほんとに? イノンが助かるの?」
戸惑っていると、そんな声が廊下の先の部屋――、微かに扉が開いている部屋から聞こえてきた。
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