【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

記憶の竪琴(28)




「エリンフィート……か……、何の用だ?」
「ユウマ、待ちなさい。従属神を倒すということは世界の理が変革されるから――。だから私に……」
「だから、お前に任せろってことか?」
「ええ、そうよ」
「それは、出来ないな」
「どうして!?」
「コイツは、俺の身内に手を出した。つまり俺の敵だ。チッ――」

 俺とエリンフィートが話している間に、ルーグレンスが距離を取る。

「エリンフィート! どうやら、お前の目論見と、その男の考えは違うようだね」
「黙りなさい! 従属神の分際で!」
「その分際を始末すれば、世界の理が歪みあらぬ方向へと世界が構築される。それを貴様は恐れている。そうでしょう?」
「――ッ!?」

 二人が何の話をしているのか皆目見当はつかない。
 だが――、

「エリンフィートの思惑がどうだろうと関係ないな」
「なっ!? いまの話を貴様は聞いていなかったのか! 私を殺せば世界の理が変革されると――、そう教えたはずだが――」
「そんな事は知った事か!」

 風刃の魔法を発動。
 一瞬で空間の断裂が生まれ――、真空の刃が従属神ルーグレンスに殺到する……が――。
 全てが弾かれる。

「……その魔法はすでに見た。貴様の力は、物理現象に属しているというのは既に解析済み! ――なら、神格を持つ魔法ならば!」

 ルーグレンスの周辺に光の鏡のような生み出されていくと同時に、全てが一瞬――、煌めく!
 無数の閃光が俺の肉体を貫く。

「――ッ!? 光の貫通系の魔法? ――いや、これは……」

 身体強化魔法を展開している肉体を貫いてくる光を、冷静に見ながら判断していく。
 おそらく光系――、レーザーによる攻撃の可能性が非常に高いと――、俺の中の知識が教えてくる。
 それと同時に――。

 上空、十キロの地点に巨大な大気の歪みを――、そして、太陽の光を収束するイメージを頭の中で想像する。

 魔法を――、事象を――、現象として思い描く。

「人間には到達しえない魔法! 従属神ルーグレンスとしての切り札たる魔法! エリンフィート共に死ね! 人間!」

 さらに無数の鏡を作りだしてくるが、俺は――、ルーグレンスの戯言を聞き流しながら、頭の中で魔法を完成させる。

「太陽光線!」

 俺の魔法の発動キーたる漢字を言葉で呟くと同時に――、上空十キロに展開された大気の歪みが、まったく減衰しない太陽光と太陽風を収束し一本の巨大な光な光を作りだす。

「死ね!」
「貴様がな!」

 ルーグレンスの死刑宣告とも言える言葉と共に光が俺とエリンフィートに向けて放たれるが、それと同時に俺は地下水を操り――。

「水壁!」

 膨大な水が、俺とエリンフィートの前に現れ――、ルーグレンスが放った光を全て遮断する。

「――なっ!? ば、馬鹿な!?」

 防がれるとは思っていなかったのだろう。
 驚愕な表情を見せたルーグレンスだったが――、一瞬の間を置いたところで俺は腕を降ろす。
 
「――なっ!?」

 ようやく気が付いたのかルーグレンスが上空を見上げたが――、その瞬間、数万度の光の集束砲とも言える光の槍がルーグレンスの姿を消し飛ばす。

「ユウマ!」

 俺の名前を叫んでくるエリンフィートの声が聞こえたが――、それは光の集束砲の余波で掻き消えた。


 


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