【書籍化作品】無名の最強魔法師
絡み合う思想と想い(6)
「とりあえず傷は直したが、まだしばらく様子を見る必要がある」
「そうですか――」
ユリカは、俺の目を見ながら話かけてくる。
すると、何故かは知らないが「もう大丈夫そうですね」と、呟き「ユウマさん、私はイノンさんが起きたときのために料理を作ってきますね」と、言って食堂の方へ歩いていってしまった。
そのあとをセイレスもついていく。
「ユウマおにいちゃん、さっきまですごく恐かったけど、今はいつもどおりなの」
俺の近くまできたセレンが、俺を見上げて話し掛けてきた。
「そうか? そんなに違ったか?」
「――うん。何か分からなかったけど、話し難かったけど……でも、私は、いまのお兄ちゃんの方が好きなの」
「そうか、すまなかったな……」
俺はセレンの頭の上に手を置くと撫でるようにしながら、これからの事を考える。
現状は、まだ何一つ解決はしてない。
ただ、一つ分かった事と言えば、ユリーシャ軍にもエルンペイア軍にもウラヌス教国が関わっているということ。
そして、ギルドマスターであるリネラスが狙われているということ。
アルネ王国では、妹のアリアを狙って三百人にも満たない村を、3000人以上もの軍隊で攻めてきた。
そして、今回は従属神という得体の知れない化け物まで出てくる始末。
そこから考えられることは一つだけ。
リネラスの祖父である男が言っていた。
ウラヌス十字軍は、リネラスの祖父が見つけたモノを追い求めていると。
そして――。
「……そうか――」
ようやく答えが見つかった気がする。
「セレン、リンスタットさんはどこにいる?」
「リンスタットさんなら、エルフガーデンの冒険者ギルドの建物に戻っていると思うの」
「分かった」
すぐに宿屋兼冒険者ギルドの建物から出ると、少し離れた場所に見える冒険者ギルド エルフガーデン支部へと足を運ぶ。
「リンスタット……さん……」
俺は、建物に入るとリネラスの母親であるリンスタットさんと、引き取った子供達7人が食事をしている場面を見て、声量を抑えた。
「ユウマさんですか……、どうかなさいましたか?」
リンスタットさんは、少し怯えた様子で俺に語りかけてきた。
そういえば、リネラスにしてきたことに関してリネラスとリンスタットさんとの間の問題は解決したが、俺との問題は解決していなかった気がする。
そりゃ怯えても仕方ないか。
まぁ、今更な話だが――。
「リネラスの祖父についての話を聞きたい」
「お父さんのことですか?」
「ああ――」
「そうですか……」
「貴方達は、そのまま食事を続けていていいからね」
リンスタットさんが、食事をしている子供達に声を掛けると元気のいい返事を子供達はしていた。
俺は、リンスタットさんを伴って2階に上がる。
彼女に進められて椅子に座ると、彼女は、暖めたお茶を出してきた。
「それで、ユウマさん。お話というのは?」
「ああ、リネラスの祖父は、以前は冒険者をやっていると聞いたんだが――」
「はい、父はエルフガーデン支部を作る前には、冒険者をしていました。私は、父が冒険者をしていた頃のことは良く覚えていませんが――」
「率直に話すと、今、エルフガーデンを襲ってきているのはユリーシャ軍とエルンペイア軍と言うことになっているが、裏で糸を引いているのは間違いなくウラヌス教国、強いていうなら実働部隊としてウラヌス十字軍が動いている。さらに言えば、怪しげな化け物までもが、エルフガーデンに入り込んでいて、リネラスを狙ってきている」
「――ッ!?」
リンスタットさんは、俺の言葉に顔色を変えると手に持っていたティーカップを震わせていた。
「リンスタットさん、あんたの父親はウラヌス十字軍に狙われるような物を持っていたんじゃないのか? 知っているなら教えてもらいたい」
「…………祖父は、以前に魔物を生み出す建造物を発見したと言っていました」
「魔物を生み出す建造物?」
俺は、首を傾げる。
卵などから生まれるなら、まだ納得は出来る。
ただ、それが建造物だとするとありえないと思ってしまう。
生物が建物から生まれるわけがないからだ。
魔物だって一応は、生物の一種なのだから。
「はい、その建物を偶然見つけた父は、建物の内部に入ろうと試みたそうなのですが、あまりにも湖底にあったため、たどり着くことができず諦めたそうです」
「ちなみに、どのくらいの深さにあったと?」
俺の言葉にリンスタットさんは否定的な意味を込めて頭を振ってきた。
「詳しくは私も聞かされてはいないのです。冒険者ギルドにも報告の義務はあったそうなのですが、伝えては居なかったそうです」
「冒険者ギルドに報告の義務があった?」
「はい、脅威となりそうな場所については優先的に冒険者ギルドに通報するのが冒険者の役目の一つですから」
「なるほど……」
少しずつ全容がつかめてきたぞ。
おそらく、ウラヌス十字軍がユゼウ王国内の冒険者ギルドを殲滅したのは、その魔物を生み出す情報を――その場所を秘匿している重要人物を見つけようとしたから。
そして、最初は懐柔を試みたが、それが功を制しなかった事から情報を知るかもしれない各地のギルドマスターを殲滅。
冒険者ギルドの本部に連絡が行かない様に、遠距離魔法通信士を拉致するか殺したというところか――。
そして、リネラスを狙っているということは、リンスタットさんの父親から何かしらの情報を得ている可能性があると、考えたから……。
そう考えると、冒険者ギルドが狙われた理由にも説明がつくと同時に、一国の冒険者ギルドを殲滅しても必要と思えるほどの建造物について興味が出てくる。
「そうですか――」
ユリカは、俺の目を見ながら話かけてくる。
すると、何故かは知らないが「もう大丈夫そうですね」と、呟き「ユウマさん、私はイノンさんが起きたときのために料理を作ってきますね」と、言って食堂の方へ歩いていってしまった。
そのあとをセイレスもついていく。
「ユウマおにいちゃん、さっきまですごく恐かったけど、今はいつもどおりなの」
俺の近くまできたセレンが、俺を見上げて話し掛けてきた。
「そうか? そんなに違ったか?」
「――うん。何か分からなかったけど、話し難かったけど……でも、私は、いまのお兄ちゃんの方が好きなの」
「そうか、すまなかったな……」
俺はセレンの頭の上に手を置くと撫でるようにしながら、これからの事を考える。
現状は、まだ何一つ解決はしてない。
ただ、一つ分かった事と言えば、ユリーシャ軍にもエルンペイア軍にもウラヌス教国が関わっているということ。
そして、ギルドマスターであるリネラスが狙われているということ。
アルネ王国では、妹のアリアを狙って三百人にも満たない村を、3000人以上もの軍隊で攻めてきた。
そして、今回は従属神という得体の知れない化け物まで出てくる始末。
そこから考えられることは一つだけ。
リネラスの祖父である男が言っていた。
ウラヌス十字軍は、リネラスの祖父が見つけたモノを追い求めていると。
そして――。
「……そうか――」
ようやく答えが見つかった気がする。
「セレン、リンスタットさんはどこにいる?」
「リンスタットさんなら、エルフガーデンの冒険者ギルドの建物に戻っていると思うの」
「分かった」
すぐに宿屋兼冒険者ギルドの建物から出ると、少し離れた場所に見える冒険者ギルド エルフガーデン支部へと足を運ぶ。
「リンスタット……さん……」
俺は、建物に入るとリネラスの母親であるリンスタットさんと、引き取った子供達7人が食事をしている場面を見て、声量を抑えた。
「ユウマさんですか……、どうかなさいましたか?」
リンスタットさんは、少し怯えた様子で俺に語りかけてきた。
そういえば、リネラスにしてきたことに関してリネラスとリンスタットさんとの間の問題は解決したが、俺との問題は解決していなかった気がする。
そりゃ怯えても仕方ないか。
まぁ、今更な話だが――。
「リネラスの祖父についての話を聞きたい」
「お父さんのことですか?」
「ああ――」
「そうですか……」
「貴方達は、そのまま食事を続けていていいからね」
リンスタットさんが、食事をしている子供達に声を掛けると元気のいい返事を子供達はしていた。
俺は、リンスタットさんを伴って2階に上がる。
彼女に進められて椅子に座ると、彼女は、暖めたお茶を出してきた。
「それで、ユウマさん。お話というのは?」
「ああ、リネラスの祖父は、以前は冒険者をやっていると聞いたんだが――」
「はい、父はエルフガーデン支部を作る前には、冒険者をしていました。私は、父が冒険者をしていた頃のことは良く覚えていませんが――」
「率直に話すと、今、エルフガーデンを襲ってきているのはユリーシャ軍とエルンペイア軍と言うことになっているが、裏で糸を引いているのは間違いなくウラヌス教国、強いていうなら実働部隊としてウラヌス十字軍が動いている。さらに言えば、怪しげな化け物までもが、エルフガーデンに入り込んでいて、リネラスを狙ってきている」
「――ッ!?」
リンスタットさんは、俺の言葉に顔色を変えると手に持っていたティーカップを震わせていた。
「リンスタットさん、あんたの父親はウラヌス十字軍に狙われるような物を持っていたんじゃないのか? 知っているなら教えてもらいたい」
「…………祖父は、以前に魔物を生み出す建造物を発見したと言っていました」
「魔物を生み出す建造物?」
俺は、首を傾げる。
卵などから生まれるなら、まだ納得は出来る。
ただ、それが建造物だとするとありえないと思ってしまう。
生物が建物から生まれるわけがないからだ。
魔物だって一応は、生物の一種なのだから。
「はい、その建物を偶然見つけた父は、建物の内部に入ろうと試みたそうなのですが、あまりにも湖底にあったため、たどり着くことができず諦めたそうです」
「ちなみに、どのくらいの深さにあったと?」
俺の言葉にリンスタットさんは否定的な意味を込めて頭を振ってきた。
「詳しくは私も聞かされてはいないのです。冒険者ギルドにも報告の義務はあったそうなのですが、伝えては居なかったそうです」
「冒険者ギルドに報告の義務があった?」
「はい、脅威となりそうな場所については優先的に冒険者ギルドに通報するのが冒険者の役目の一つですから」
「なるほど……」
少しずつ全容がつかめてきたぞ。
おそらく、ウラヌス十字軍がユゼウ王国内の冒険者ギルドを殲滅したのは、その魔物を生み出す情報を――その場所を秘匿している重要人物を見つけようとしたから。
そして、最初は懐柔を試みたが、それが功を制しなかった事から情報を知るかもしれない各地のギルドマスターを殲滅。
冒険者ギルドの本部に連絡が行かない様に、遠距離魔法通信士を拉致するか殺したというところか――。
そして、リネラスを狙っているということは、リンスタットさんの父親から何かしらの情報を得ている可能性があると、考えたから……。
そう考えると、冒険者ギルドが狙われた理由にも説明がつくと同時に、一国の冒険者ギルドを殲滅しても必要と思えるほどの建造物について興味が出てくる。
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