【書籍化作品】無名の最強魔法師
親類の絆(24)
俺の呟いた声は、誰にも聞かれることもなく、その場で響き渡る。
それと同じくして、ざわめきが聞こえてくる。
「これは……」
辺りを見渡すと周囲は、朝方のように明るくなって―ー。
「まさか……思ったよりも時間経過が早かった? だが、何故?」
考えている暇はない。
エルフガーデンが、歪んだ原因が分かった判明した以上、リネラスが苦しむことはない。
ただ……彼女が、俺に「ごめんなさい」と謝ったときに、意味していた言葉だけが引っかかる。
まだ、何かあるのではないのかと――。
それに……。
「クソッ!」
どうしてだが、分からない。分からないが、まだ、何かピースが足りない気がする。
それが何なのか。
何を意味しているのか分からない。
俺は村の広場から、リネラスが始めてエルフが成人するときに受ける儀式――妖精の儀を受ける場所へ向かって走る。
何故か分からないが、この世界は、もうループでやり直すことが出来ない気がするのだ。
そして――。
「間に合わなかったか……」
俺の見てる先には、幼少期の姿をしたリネラスは座り込んだまま、周りに囲まれていたエルフ達に罵倒を浴びていた。
その様子を怯えた様子で、どうしたらいいか分からない表情をしたまま立ち竦んでいるリンスタットが見ていた。
彼女は、また同じ過ちを繰り返すつもりなのだろうか?
「リンスタット!」
俺が名前を叫んだことでエルフ達が一斉に俺の方へ体を向けてくる。
ただ、その顔には顔がない。
ただの案山子としか俺には思えない。
だから――。
「お前は、また同じ過ちを繰り返すつもりか?」
俺の言葉に反応したのか分からないが、リンスタットは俺をまっすぐに見てきた。
その目には、意思が殆ど感じられない。
そんな彼女の様子に、苛立つ――。
「お前が、この世界に来た理由を思い出せ!」
「……理由?……」
リンスタットは空ろな瞳をしたまま、俺の言葉に耳を傾けてくる。
そう。
彼女は、リンスタットは自分が帰れないかも知れないのに、リネラスを助けようとしていた。
それは、きっと――。
自分が、手を離してしまったことを。
自分の子どもを拒絶してしまったことを。
彼女がずっと後悔していたとしたら?
犯してきた過去の過ちに! 気持ちに! 記憶に! ずっと苦しんでいたとしたら?
それに傷ついて答えを見出せずにいたとしたら?
それは、とても残酷なことで……。
それは、とても悲しいことで……。
「お前は! 何のために! この世界に来た? お前は何をしにこの世界に来たんだ?」
「……この世界に来た? 何のために……?」
「ああ。そうだ。お前は、何のためにこの世界に来たんだ!?」
「私が来た理由……私が……」
リンスタットは、自身の震えていた手に視線を落とすと、黙ってしまう。
「駄目か――クソッ!」
リネラスに投げるために石を拾ったエルフの横面を殴る。
俺に殴られたエルフもどきは地面に倒れこむと、煙となって消えていく。
「やっぱり触れる事が出来る!」
大樹に触れられるようになってから、薄々気がついていたが――。
リネラスに石を投げようとしていたエルフの行動を阻止できるかどうか、一か八かの賭けであったが―ー。
「やっとだ……。やっと――」
ようやく、見てるだけしか出来ない状態から、リネラスを守ることが出来るようになった。
「おいおい……」
殴られ消えたエルフもどきを見ていた大勢のエルフ達は、一斉に短剣や弓のようなモノを持つと俺へと向けてくる。
そのうちの一人が弓矢を番えると幼少期のリネラスに向けて射った。
「間に合わな――ッ!?」
「――ッ!?」
目の前で、放たれた矢は真っ直ぐにリネラスに向けて放たれ――庇ったリンスタットの肩に刺さり彼女は、小さな、呻き声を上げた。
その様子に何故か知らないが、エルフもどき達は、一瞬硬直したと思うと「バ、バカナ……。こんなバカナことが……どうして……どうして……どうして逆らうことが出来る……取り込まれて何故……」と、全てのエルフが同時に声を上げると俺へと視線というか殺気を向けてきた。
「……ユウマさん、ごめんなさい。ずっと見ていることしかできなくって……」
「……お、お母さん?」
そこに居たのは、俺と一緒に、深層心理世界に来たリンスタットであり、容姿もそれに応じて変わっていく。
「ごめんなさいね。私のリネラス――。貴女はずっと、こんな世界を見て感じて苦しんでいたのね。私は、お父さんが死んだことも全て、貴女のせいに……。本当にごめんなさい……」
「――ひっ、ひっく、お母さん、お母さん。うああああああん」
俺の見てる前で、幼少の姿をしたリネラスは自分の母親に縋りつくように泣きはじめた。
俺は、それを見て小さくため息をつく。
「――さて……」
俺は、小さく呟きエルフもどき達へと視線を向ける。
エルフもどきは、全員が殺気を俺ではなくリンスタットの方へと向けていた。
「この世界が消える決定的な原因を作ったリンスタットを排除しようってことか?」
「ナニヲ?」
壊れた人形のような音声で俺へとエルフもどきは問いかけてくる。
このモノは、この世界が壊れたら困るモノ。
この世界が壊れたら消えてしまうモノたち。
だから、殺気を向けてきている。
おそらく、そんなところだろう。
「さて、親子の触れ合いに外部の人間が加わるのはよくないよな?」
すかさずエルフもどきの懐に飛び込み顔の位置に蹴りを叩き込む。
俺の蹴りで吹き飛ばされたエルフもどきは、エルフガーデンの大樹にめり込むと煙となって消えていく。
「ふむ……。魔法は使えないが、どうやら海の迷宮リヴァルアで鍛え上げた肉体は、ここが自分が作った世界だと、理解すれば使えるようだな?」
「バ、バカナ? ヒジョウシキナ!?」
「非常識? おいおい、何を言っているんだ? 俺が作った世界に勝手に! 俺の承諾も許可も得ずに入ってきて! 存在しておいて何を言っているんだ?」
俺は拳を鳴らしながら周囲の人形へと変化した者らを見ながら言葉を続ける。
「まぁ、なんでもいいが……。俺の溜まりに溜まったフラストレーションを発散させてもらうぞ?」
「コイツハキケンダ。スグニショリヲ!」
危険だと判断したのか人形達が動き出し矢を放ってくる。
向かってくる矢を全て手刀で打ち落としながら、弓を持っている人形達を蹴りで殴りで倒していく。
次々と宙に舞って煙へと変わっていく人形をリンスタットとリネラスは呆然と見上げている。
そして最後の人形を倒したところで「ユウマ?」と俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「やっと目を覚ましたのか? この眠り姫――」
振り返ると、そこにはリンスタットと、俺が本来知る姿のリネラスが肩を寄り添って座っていた。
それと同じくして、ざわめきが聞こえてくる。
「これは……」
辺りを見渡すと周囲は、朝方のように明るくなって―ー。
「まさか……思ったよりも時間経過が早かった? だが、何故?」
考えている暇はない。
エルフガーデンが、歪んだ原因が分かった判明した以上、リネラスが苦しむことはない。
ただ……彼女が、俺に「ごめんなさい」と謝ったときに、意味していた言葉だけが引っかかる。
まだ、何かあるのではないのかと――。
それに……。
「クソッ!」
どうしてだが、分からない。分からないが、まだ、何かピースが足りない気がする。
それが何なのか。
何を意味しているのか分からない。
俺は村の広場から、リネラスが始めてエルフが成人するときに受ける儀式――妖精の儀を受ける場所へ向かって走る。
何故か分からないが、この世界は、もうループでやり直すことが出来ない気がするのだ。
そして――。
「間に合わなかったか……」
俺の見てる先には、幼少期の姿をしたリネラスは座り込んだまま、周りに囲まれていたエルフ達に罵倒を浴びていた。
その様子を怯えた様子で、どうしたらいいか分からない表情をしたまま立ち竦んでいるリンスタットが見ていた。
彼女は、また同じ過ちを繰り返すつもりなのだろうか?
「リンスタット!」
俺が名前を叫んだことでエルフ達が一斉に俺の方へ体を向けてくる。
ただ、その顔には顔がない。
ただの案山子としか俺には思えない。
だから――。
「お前は、また同じ過ちを繰り返すつもりか?」
俺の言葉に反応したのか分からないが、リンスタットは俺をまっすぐに見てきた。
その目には、意思が殆ど感じられない。
そんな彼女の様子に、苛立つ――。
「お前が、この世界に来た理由を思い出せ!」
「……理由?……」
リンスタットは空ろな瞳をしたまま、俺の言葉に耳を傾けてくる。
そう。
彼女は、リンスタットは自分が帰れないかも知れないのに、リネラスを助けようとしていた。
それは、きっと――。
自分が、手を離してしまったことを。
自分の子どもを拒絶してしまったことを。
彼女がずっと後悔していたとしたら?
犯してきた過去の過ちに! 気持ちに! 記憶に! ずっと苦しんでいたとしたら?
それに傷ついて答えを見出せずにいたとしたら?
それは、とても残酷なことで……。
それは、とても悲しいことで……。
「お前は! 何のために! この世界に来た? お前は何をしにこの世界に来たんだ?」
「……この世界に来た? 何のために……?」
「ああ。そうだ。お前は、何のためにこの世界に来たんだ!?」
「私が来た理由……私が……」
リンスタットは、自身の震えていた手に視線を落とすと、黙ってしまう。
「駄目か――クソッ!」
リネラスに投げるために石を拾ったエルフの横面を殴る。
俺に殴られたエルフもどきは地面に倒れこむと、煙となって消えていく。
「やっぱり触れる事が出来る!」
大樹に触れられるようになってから、薄々気がついていたが――。
リネラスに石を投げようとしていたエルフの行動を阻止できるかどうか、一か八かの賭けであったが―ー。
「やっとだ……。やっと――」
ようやく、見てるだけしか出来ない状態から、リネラスを守ることが出来るようになった。
「おいおい……」
殴られ消えたエルフもどきを見ていた大勢のエルフ達は、一斉に短剣や弓のようなモノを持つと俺へと向けてくる。
そのうちの一人が弓矢を番えると幼少期のリネラスに向けて射った。
「間に合わな――ッ!?」
「――ッ!?」
目の前で、放たれた矢は真っ直ぐにリネラスに向けて放たれ――庇ったリンスタットの肩に刺さり彼女は、小さな、呻き声を上げた。
その様子に何故か知らないが、エルフもどき達は、一瞬硬直したと思うと「バ、バカナ……。こんなバカナことが……どうして……どうして……どうして逆らうことが出来る……取り込まれて何故……」と、全てのエルフが同時に声を上げると俺へと視線というか殺気を向けてきた。
「……ユウマさん、ごめんなさい。ずっと見ていることしかできなくって……」
「……お、お母さん?」
そこに居たのは、俺と一緒に、深層心理世界に来たリンスタットであり、容姿もそれに応じて変わっていく。
「ごめんなさいね。私のリネラス――。貴女はずっと、こんな世界を見て感じて苦しんでいたのね。私は、お父さんが死んだことも全て、貴女のせいに……。本当にごめんなさい……」
「――ひっ、ひっく、お母さん、お母さん。うああああああん」
俺の見てる前で、幼少の姿をしたリネラスは自分の母親に縋りつくように泣きはじめた。
俺は、それを見て小さくため息をつく。
「――さて……」
俺は、小さく呟きエルフもどき達へと視線を向ける。
エルフもどきは、全員が殺気を俺ではなくリンスタットの方へと向けていた。
「この世界が消える決定的な原因を作ったリンスタットを排除しようってことか?」
「ナニヲ?」
壊れた人形のような音声で俺へとエルフもどきは問いかけてくる。
このモノは、この世界が壊れたら困るモノ。
この世界が壊れたら消えてしまうモノたち。
だから、殺気を向けてきている。
おそらく、そんなところだろう。
「さて、親子の触れ合いに外部の人間が加わるのはよくないよな?」
すかさずエルフもどきの懐に飛び込み顔の位置に蹴りを叩き込む。
俺の蹴りで吹き飛ばされたエルフもどきは、エルフガーデンの大樹にめり込むと煙となって消えていく。
「ふむ……。魔法は使えないが、どうやら海の迷宮リヴァルアで鍛え上げた肉体は、ここが自分が作った世界だと、理解すれば使えるようだな?」
「バ、バカナ? ヒジョウシキナ!?」
「非常識? おいおい、何を言っているんだ? 俺が作った世界に勝手に! 俺の承諾も許可も得ずに入ってきて! 存在しておいて何を言っているんだ?」
俺は拳を鳴らしながら周囲の人形へと変化した者らを見ながら言葉を続ける。
「まぁ、なんでもいいが……。俺の溜まりに溜まったフラストレーションを発散させてもらうぞ?」
「コイツハキケンダ。スグニショリヲ!」
危険だと判断したのか人形達が動き出し矢を放ってくる。
向かってくる矢を全て手刀で打ち落としながら、弓を持っている人形達を蹴りで殴りで倒していく。
次々と宙に舞って煙へと変わっていく人形をリンスタットとリネラスは呆然と見上げている。
そして最後の人形を倒したところで「ユウマ?」と俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「やっと目を覚ましたのか? この眠り姫――」
振り返ると、そこにはリンスタットと、俺が本来知る姿のリネラスが肩を寄り添って座っていた。
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