【書籍化作品】無名の最強魔法師
託された思い(3)
リンスタットの姿をした女性の表情を見てすぐに建物から出てエルフガーデンの集落に向かう。
集落についた俺は眉元を潜める。
そこでは、以前に俺が見た事象の焼回しと言って言いほどのモノであった。
村人に忌避の視線に晒されたリネラスが、エルフガーデンの集落に居た唯一の味方である母親であるリンスタットに近づくところで――。
「近づかないで……」
「ママ?」
まだ幼い子どもには、リンスタットが何て言ったのか理解が出来なかったのだろう。
ただ、リネラスが庇護を求めて近づき拒絶したのは、理解できたようで――。
青い瞳には大きな涙を湛えていくのが分かった。
それは、傍から見ていても十分に理解出来てしまうほど、残酷で酷い内容で。
そのうちに村人から糾弾が始まり、石が投げられ、リネラスの祖父が庇って倒れる。
そこまでがすべて、忠実に再現された。
「もう、いいでしょう?」
声がした。
気が付くと周囲は黒く塗りつぶされていて何も存在しない空間で――。
「どうして、放っておいてくれないの?」
「どうしてって――」
聞こえてきた声に答える。
俺の言葉には、何の意味もなく何の理由も無く何の整合性も無い。
「こんな……こんな世界を……。――こんな自分を攻め続けるだけの世界をお前は、お前の深層心理は、自身は望んでいるというのか?」
「違うわ」
「違う? 何が違うというんだ?」
俺の問いかけに答えたのは、足音であり音が響いてきた方へ視線を向けると、そこには幼女の姿をしたままのリネラスが立っていた。
「この世界は、本来あるべき姿の世界――」
「あるべき姿の世界?」
俺の言葉にリネラスはゆっくりと頷く。
「そう。誰もが望まない世界で、本来あるべくして存在した世界――」
「何を言って……」
目の前に立っている女が何を言っているのか俺には理解ができない。
「まだ分からないの?」
「何がだ……」
「他人が深層心理の世界に入るなんて普通は出来ないのに……でも、あなたは干渉する事が出来ている。それが何を意味するのか……。本当に求められてるモノは何なのか貴方は分からないといけない。だって――。それが……」
鳥の囀りと共に俺は唐突に目が覚める。
「3度目のループか……」
俺は額に手を当てて考える。
2度目に現れた女は、間違いなくリネラスではないと思う。
何故なら、リネラスは、あんな風に俺に接してきたりはしない。
そう考える……。
「ここは深層心理の世界というのは間違いない。問題は、エリンフィートは、他人の深層心理の世界に干渉する事は出来ないとは一言も言っていなかった。仮にも土地神なのに、それを知らないわけがない」
考えれば考えるほど矛盾点に突き当たる。
少なくとも本当の事を俺に告げないという理由だが、思い当たる節が無い。
「くそっ! どうしたらいい? 2回目のループで構築されているストーリー以外の道筋を辿ろうとしたら最初の地点から始まる。ということは……どこかでルート以外の道筋があると言う事になるのか?」
一人呟きながらも、この世界では何が必要なのか何が求められているのかという答えが見当たらない。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
考え込んでいると、幼女のリネラスが俺に話しかけてきた。
どうやら、ストーリーが始まってしまったよう。
もちろん、その後はサマラが出てきて、リネラスの祖父が現れ俺を冒険者ギルドのエルフガーデン支部まで連れていってくれる。
まるで予定調和のごとく話が淡々と進んでいく。
そして、リネラスがリンスタットに甘えている姿を見ると、胸が締め付けられるように痛くなる。
そんな俺を見ていたリネラスの祖父は「ユウマ君は、子供が好きなのかな?」と、問いかけてきた。
俺は振り返り、リネラスの祖父である男の表情を見てようやく気が付く。
その表情は、どこか悲しみに沈んでいるように見えた。
だから、俺は――。
「子供ですか――」
言葉を選びなら口にする。
どういった言葉を彼は期待しているのだろうか?
たしか、一回目の時には、俺が「無邪気に甘えているなと思いまして」と言う言葉に対して「本当に、そう思うのかね?」と疑問で返してきた。
その時は、たいして気には止めなかったが、今なら彼が何を俺に問いかけようとしてきたのか、少しは分かる気がする。
「貴方が本当に俺から聞きたいのはリネラスの事ですよね?」
リネラスの祖父である彼は、俺の言葉を聞いて初めて表情を変えた。
「何がいいたのかね?」
「リネラスのことです。彼女は、これから起こりうる事に怯えて必死に思い出に縋っているように思えます」
「なるほど……」
男は俺をまっすに見ながらも頷き「それで、君はどうしたいのかな?」と問いかけてくる。
その答えはすでに決まっている。
「俺はリネラスを、この世界から救い出したいと思っています」
「なるほど……この世界が君の記憶をベースに作られるとしても、そう思っているのかな?」
「――!? そ、それはどういう……」
集落についた俺は眉元を潜める。
そこでは、以前に俺が見た事象の焼回しと言って言いほどのモノであった。
村人に忌避の視線に晒されたリネラスが、エルフガーデンの集落に居た唯一の味方である母親であるリンスタットに近づくところで――。
「近づかないで……」
「ママ?」
まだ幼い子どもには、リンスタットが何て言ったのか理解が出来なかったのだろう。
ただ、リネラスが庇護を求めて近づき拒絶したのは、理解できたようで――。
青い瞳には大きな涙を湛えていくのが分かった。
それは、傍から見ていても十分に理解出来てしまうほど、残酷で酷い内容で。
そのうちに村人から糾弾が始まり、石が投げられ、リネラスの祖父が庇って倒れる。
そこまでがすべて、忠実に再現された。
「もう、いいでしょう?」
声がした。
気が付くと周囲は黒く塗りつぶされていて何も存在しない空間で――。
「どうして、放っておいてくれないの?」
「どうしてって――」
聞こえてきた声に答える。
俺の言葉には、何の意味もなく何の理由も無く何の整合性も無い。
「こんな……こんな世界を……。――こんな自分を攻め続けるだけの世界をお前は、お前の深層心理は、自身は望んでいるというのか?」
「違うわ」
「違う? 何が違うというんだ?」
俺の問いかけに答えたのは、足音であり音が響いてきた方へ視線を向けると、そこには幼女の姿をしたままのリネラスが立っていた。
「この世界は、本来あるべき姿の世界――」
「あるべき姿の世界?」
俺の言葉にリネラスはゆっくりと頷く。
「そう。誰もが望まない世界で、本来あるべくして存在した世界――」
「何を言って……」
目の前に立っている女が何を言っているのか俺には理解ができない。
「まだ分からないの?」
「何がだ……」
「他人が深層心理の世界に入るなんて普通は出来ないのに……でも、あなたは干渉する事が出来ている。それが何を意味するのか……。本当に求められてるモノは何なのか貴方は分からないといけない。だって――。それが……」
鳥の囀りと共に俺は唐突に目が覚める。
「3度目のループか……」
俺は額に手を当てて考える。
2度目に現れた女は、間違いなくリネラスではないと思う。
何故なら、リネラスは、あんな風に俺に接してきたりはしない。
そう考える……。
「ここは深層心理の世界というのは間違いない。問題は、エリンフィートは、他人の深層心理の世界に干渉する事は出来ないとは一言も言っていなかった。仮にも土地神なのに、それを知らないわけがない」
考えれば考えるほど矛盾点に突き当たる。
少なくとも本当の事を俺に告げないという理由だが、思い当たる節が無い。
「くそっ! どうしたらいい? 2回目のループで構築されているストーリー以外の道筋を辿ろうとしたら最初の地点から始まる。ということは……どこかでルート以外の道筋があると言う事になるのか?」
一人呟きながらも、この世界では何が必要なのか何が求められているのかという答えが見当たらない。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
考え込んでいると、幼女のリネラスが俺に話しかけてきた。
どうやら、ストーリーが始まってしまったよう。
もちろん、その後はサマラが出てきて、リネラスの祖父が現れ俺を冒険者ギルドのエルフガーデン支部まで連れていってくれる。
まるで予定調和のごとく話が淡々と進んでいく。
そして、リネラスがリンスタットに甘えている姿を見ると、胸が締め付けられるように痛くなる。
そんな俺を見ていたリネラスの祖父は「ユウマ君は、子供が好きなのかな?」と、問いかけてきた。
俺は振り返り、リネラスの祖父である男の表情を見てようやく気が付く。
その表情は、どこか悲しみに沈んでいるように見えた。
だから、俺は――。
「子供ですか――」
言葉を選びなら口にする。
どういった言葉を彼は期待しているのだろうか?
たしか、一回目の時には、俺が「無邪気に甘えているなと思いまして」と言う言葉に対して「本当に、そう思うのかね?」と疑問で返してきた。
その時は、たいして気には止めなかったが、今なら彼が何を俺に問いかけようとしてきたのか、少しは分かる気がする。
「貴方が本当に俺から聞きたいのはリネラスの事ですよね?」
リネラスの祖父である彼は、俺の言葉を聞いて初めて表情を変えた。
「何がいいたのかね?」
「リネラスのことです。彼女は、これから起こりうる事に怯えて必死に思い出に縋っているように思えます」
「なるほど……」
男は俺をまっすに見ながらも頷き「それで、君はどうしたいのかな?」と問いかけてくる。
その答えはすでに決まっている。
「俺はリネラスを、この世界から救い出したいと思っています」
「なるほど……この世界が君の記憶をベースに作られるとしても、そう思っているのかな?」
「――!? そ、それはどういう……」
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