【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

エルフガーデンの秘密(後編)

「――あ、すいません」

 俺はすぐに頭を下げる。
 どうやら、男エルフに逃げられたという事は、女性エルフにはかなり屈辱的な事らしいのかリンスタットさんは顔を真っ赤にしている。

 「ううっ……」と、呟きながら瞳に涙を貯めたまま俺を見上げてきているリンスタットさんは、リネラスを女性らしくした感じ……そして、エルフという事も相まってとても神秘的で美しくそしてかわいらしく見える。
 俺が、何と声を掛けたらいいのかと思案していると、突然――リンスタットさんは微笑んできた。

「ユウマさんは、本当はやさしいのね」
「そ、そうですか……」

 俺が、やさしい?
 そんな事ないだろうに……。

 自問自答していると「ふふっ……許してあげる」と、俺の手を握ると引いてきて切り株に座らせるとリンスタットさんも隣に座ってきた。

「えっとね、いまから100年前に、エルフガーデンが変わってしまったの。水質が変わったことで、私達エルフの女性は、とっても性に積極的になったの!!」
「積極的に?」

 俺の言葉にリンスタットさんは頷いてくる。

「ということは、男エルフがエルフガーデンから逃げたのは、女性エルフが女性エロフになったことで男性エルフは体が持たなくなって死の危険を感じて村を去ったと?」
「え……ええ。エロフって何を差しているかは知らないけど……」

 エロフを知らないとは……俺は頭の中に浮かんできた言葉をそのまま呟いただけだから良くはしらないけど……。

「たしか……エロフはエルフとエロイを足した略みたいな物だったはずですけど……」
「ええー……」

 リンスタットさんが目を大きく見開いて驚いているが、とりあえずそれは置いておくとしよう。
 しかし、それにしてもエロフがいるから男の楽園とか、セイレスは黒板に書いて俺に見せてきていたのか……。
 あれ? そういえばセイレスはエルフガーデンにきてからずいぶんと積極的になってる気がするぞ?
 もしかして……。

「リンスタットさん? もしかして、エルフガーデンにエルフが入ると性に対して積極的になったりするんですか?」
「そうね……若いエルフだとそうかも?」
「若いエルフだと?」

 俺の問いかけにリンスタットさんは頷くと「自分の体内の魔力を上手く扱えないとそうなるから……私くらいの年齢になれば大丈夫だけど、40歳を超えるまでは難しいかもね」と、語ってきた。

「あれ? リンスタットさんって年齢はいくつなんですか?」
「ユウマさんには……いくつに見えるかしら?」
「20歳後半でしょうか……」
「そう、20歳後半ね……ふふっ」

 リンスタットさん、急に機嫌を良くしてくると俺の頭を撫でてきた。

「本当は見えているのに、ユウマさんはやさしいのね……」

 リンスタットさんの言葉の意味が理解出来ない。
 本当は見えている?

「ユウマさんは……ううん。なんでもないわ……」

 リンスタットさんは途中で、話を止めると撫でていた俺の頭を掴むとリンスタットさん自身の膝の上に乗せてきた。

「リンスタットさん!?」

 突然の事に驚いた俺に「いいの! 少しは休まないと疲れちゃうわよ?」と、耳元で囁くようにリンスタットさんは話しかけてくると俺の髪の毛を触ってきた。
 それが心地よくて……俺はいつの間にか意識を手放していた。





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