【書籍化作品】無名の最強魔法師
起死回生の一手
話しをした後、エメラダ様は、その場に残ると仰られたが、エメラダ様の側近と思われる男性騎士が4人ほど迎えにきたので、エメラダ様には村長の家でお休み頂けるようにお伝えして分かれた。
「さて、どうしたものか……」
俺は、一人呟きながら前方に陣地を構えているウラヌス十字軍を見据える。
俺が発動できる魔法は、あくまでも俺が想像出来る範囲であり、麻酔関係の魔法は知識にない事から想像ができない。
そのために魔法を発動させることが出来ない。
逆に人間の肉体構造については基本となる知識を中学・高校時代に習うので、それを参考にして肉体強化の魔法を発動させる事は出来る。
そして、それは攻撃魔法と防御魔法にも及んでいる。
つまり、俺が使える魔法というのは前世の物質界の物理に準じた物しか使えないという事だ。
だから相手を無力化する魔法というのは限りなく狭められる。
相手の意識を狩る魔法なら大気の構成物質の割合を変化させればいいが、その魔法がどれだけ人体にダメージを与えるのか想像が出来ない。
そして今回の一番の問題は、エメラダ様から無茶振りされた相手に怪我を負わせず無傷で撤退させろと言う点だ。
そのような事が出来る魔法なんて想像がつかない。
「ユウマくーん」
「ん?」
声がした方向を振り向くと、村側の掘の外に幼馴染のリリナが立っていた。
リリナは両手に大きな布袋を抱えている。
おそらく夜食を作って来てくれたのだろう。
そう考えると、今日はほとんど食事を取っていないことを思い出した。
お腹も思い出したように食事を催促しだす。
俺はリリナからの差し入れを受け取るために《探索》の魔法を発動させてウラヌス十字軍に動きが無い事を確認して塀の上から跳躍しリリナの傍に着地する。
するとリリナはすぐに言葉を話しかけてきた。
「ユウマ君。大丈夫だった?お父さんとか何も話してくれなかったから、いくらイルスーカ侯爵軍がきちんとしているって言っても、村長とかユウマ君を悪者にしていたら?って思うと。そしたらユウマ君がひどい仕打ちを受けたらと考えたらね……私、とても心配で」
瞳に涙を湛えてリリナが俺を見上げて見つめてくる。
どうやら、リリナにはかなり心配をかけさせてしまったようだな。
俺はリリナの頭の上に手を置くと撫でながら言葉を紡ぐ。
「大丈夫だ。エメラダ様はそんなにひどい人では……」
話の途中で、エメラダ様に足で踏みつけにされたり、腰のサーベルに手をかけていた痛みと姿を思い出す。
「……無いと信じたいな」
擁護できる点がまったくない。
リリナもそうだがエメラダ様も、すこしだけでも暴力的なところを無くせば良いのに……。
「それって本当に大丈夫なの?ユウマ君、どこか抜けているから心配になっちゃうよ」
心配そうに俺を見てくるリリナを見て俺は内心ため息をついた。
こんなんじゃリリナが、一人立ちできないな。
いつか誰かと結婚するかも知れないのだ、
その時に、『手のかかるユウマ君がいるから、私がいなくなっても大丈夫かな?』と言われないようしなければ……。
「それにしても寒くなってきたよね?これ暖かい白湯だけど……」
俺はリリナに差し出された湯気が立っている白湯を口にする。
「うん、おいしい。やっぱり寒いんだな」
ずっと家に帰らずに2週間以上も外で暮らしていた事もあり、体が寒さに慣れていたのだろう。
お湯を飲んだ瞬間、体が温まっていくのを感じる。
「そうだね。あと少しで冬だもんね……そしたら冬篭りとかで動物さんとかいなくなるから食料とか大変になるね。ユウマ君も猟師の仕事が大変になるよね?」
「――んっ?リリナ、今の言った言葉をもう一度言ってくれないか?」
俺の言葉にリリナは頭を傾げた。
「猟師の仕事が大変になる?」
「違う、その前だ」
「冬篭りで動物さんがいなくなる?」
「――それだ!リリナは天才だな!さすがはリリナだ!」
俺はリリナを抱きしめる。
「ちょっと!ユウマ君。まってよ!何……でも、このままでもいいかな……」
リリナは俺に語りかけながら、顔を真っ赤にして俺の胸に顔を当ててきた。
そして潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
「ねえ……ユウマ君。私、役に立てた?」
リリナの言葉に俺は頷く。するとリリナは照れくさそうに笑顔を向けて話しかけてくる。
「よく分からないけど、ユウマ君の力になれたなら良かった」
その言葉と仕草を見て思わず俺はドキッとしてしまった。
そしてすぐに頭を振って考えを切り替える。
そして、リリナの言葉を参考にしてこれからの事を考える。
冬になれば体温低下を起こし凍傷を引き起こす。
なら雪を降らせてウラヌス十字軍に冬の到来を知らせて野戦のために陣地を強いて置く事は危険だと分からせればいいんだ。
古来より冬になると戦争は止まる事が多い。
なら……。
俺は魔法を発動させるための事象想像をする。
雲というのは小さな水の塊の集合体だ。
それらは上空数キロメートルと言う高度に存在している雲は、大気の気温が極端に低い場所に存在する為、過冷却の状態で存在する。
そのため、極小の氷の結晶で出来ている。
そして上空の10キロメートル付近では、大気の温度は極端に低い。
それはマイナスの温度に達していて雲は全て氷の氷晶だけで出来ている。
そしてそれらが地表に降ってくる時に、大気の気温が極端に低い場合のみ氷の結晶が溶けない。
そしてその氷の結晶が雪となるのだ。
つまりそれと同じ現象を想像し魔法を発動させればいい。
地球で得た科学知識を動員して魔法を、事象想像を組み上げる。
”乱層雲”の魔法を発動、高高度にまずは雪を降らせる雲を作り出す。
次に大気の気温を下げる魔法、”分子速度低下”の魔法を発動する。
それに伴い、急速に周囲の気温が下がっていく。
「リリナ、村の皆にこれから数日間は雪が降ることを伝えてくれ」
俺の言葉にリリナが頷き村に走っていく。
雪が降るということは、農村では死活問題だ。
すでに作物の刈り入れは終わってるから薪さえあれば、村内なら年を越す事は可能だろう。
だが、簡易テントで野営をしてる軍隊はそうはいかない。
彼らは、防寒着すら彼らは持ってきていないのだ。
ならどうなるか?それはすぐに想像がつく。
「さて、どうしたものか……」
俺は、一人呟きながら前方に陣地を構えているウラヌス十字軍を見据える。
俺が発動できる魔法は、あくまでも俺が想像出来る範囲であり、麻酔関係の魔法は知識にない事から想像ができない。
そのために魔法を発動させることが出来ない。
逆に人間の肉体構造については基本となる知識を中学・高校時代に習うので、それを参考にして肉体強化の魔法を発動させる事は出来る。
そして、それは攻撃魔法と防御魔法にも及んでいる。
つまり、俺が使える魔法というのは前世の物質界の物理に準じた物しか使えないという事だ。
だから相手を無力化する魔法というのは限りなく狭められる。
相手の意識を狩る魔法なら大気の構成物質の割合を変化させればいいが、その魔法がどれだけ人体にダメージを与えるのか想像が出来ない。
そして今回の一番の問題は、エメラダ様から無茶振りされた相手に怪我を負わせず無傷で撤退させろと言う点だ。
そのような事が出来る魔法なんて想像がつかない。
「ユウマくーん」
「ん?」
声がした方向を振り向くと、村側の掘の外に幼馴染のリリナが立っていた。
リリナは両手に大きな布袋を抱えている。
おそらく夜食を作って来てくれたのだろう。
そう考えると、今日はほとんど食事を取っていないことを思い出した。
お腹も思い出したように食事を催促しだす。
俺はリリナからの差し入れを受け取るために《探索》の魔法を発動させてウラヌス十字軍に動きが無い事を確認して塀の上から跳躍しリリナの傍に着地する。
するとリリナはすぐに言葉を話しかけてきた。
「ユウマ君。大丈夫だった?お父さんとか何も話してくれなかったから、いくらイルスーカ侯爵軍がきちんとしているって言っても、村長とかユウマ君を悪者にしていたら?って思うと。そしたらユウマ君がひどい仕打ちを受けたらと考えたらね……私、とても心配で」
瞳に涙を湛えてリリナが俺を見上げて見つめてくる。
どうやら、リリナにはかなり心配をかけさせてしまったようだな。
俺はリリナの頭の上に手を置くと撫でながら言葉を紡ぐ。
「大丈夫だ。エメラダ様はそんなにひどい人では……」
話の途中で、エメラダ様に足で踏みつけにされたり、腰のサーベルに手をかけていた痛みと姿を思い出す。
「……無いと信じたいな」
擁護できる点がまったくない。
リリナもそうだがエメラダ様も、すこしだけでも暴力的なところを無くせば良いのに……。
「それって本当に大丈夫なの?ユウマ君、どこか抜けているから心配になっちゃうよ」
心配そうに俺を見てくるリリナを見て俺は内心ため息をついた。
こんなんじゃリリナが、一人立ちできないな。
いつか誰かと結婚するかも知れないのだ、
その時に、『手のかかるユウマ君がいるから、私がいなくなっても大丈夫かな?』と言われないようしなければ……。
「それにしても寒くなってきたよね?これ暖かい白湯だけど……」
俺はリリナに差し出された湯気が立っている白湯を口にする。
「うん、おいしい。やっぱり寒いんだな」
ずっと家に帰らずに2週間以上も外で暮らしていた事もあり、体が寒さに慣れていたのだろう。
お湯を飲んだ瞬間、体が温まっていくのを感じる。
「そうだね。あと少しで冬だもんね……そしたら冬篭りとかで動物さんとかいなくなるから食料とか大変になるね。ユウマ君も猟師の仕事が大変になるよね?」
「――んっ?リリナ、今の言った言葉をもう一度言ってくれないか?」
俺の言葉にリリナは頭を傾げた。
「猟師の仕事が大変になる?」
「違う、その前だ」
「冬篭りで動物さんがいなくなる?」
「――それだ!リリナは天才だな!さすがはリリナだ!」
俺はリリナを抱きしめる。
「ちょっと!ユウマ君。まってよ!何……でも、このままでもいいかな……」
リリナは俺に語りかけながら、顔を真っ赤にして俺の胸に顔を当ててきた。
そして潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
「ねえ……ユウマ君。私、役に立てた?」
リリナの言葉に俺は頷く。するとリリナは照れくさそうに笑顔を向けて話しかけてくる。
「よく分からないけど、ユウマ君の力になれたなら良かった」
その言葉と仕草を見て思わず俺はドキッとしてしまった。
そしてすぐに頭を振って考えを切り替える。
そして、リリナの言葉を参考にしてこれからの事を考える。
冬になれば体温低下を起こし凍傷を引き起こす。
なら雪を降らせてウラヌス十字軍に冬の到来を知らせて野戦のために陣地を強いて置く事は危険だと分からせればいいんだ。
古来より冬になると戦争は止まる事が多い。
なら……。
俺は魔法を発動させるための事象想像をする。
雲というのは小さな水の塊の集合体だ。
それらは上空数キロメートルと言う高度に存在している雲は、大気の気温が極端に低い場所に存在する為、過冷却の状態で存在する。
そのため、極小の氷の結晶で出来ている。
そして上空の10キロメートル付近では、大気の温度は極端に低い。
それはマイナスの温度に達していて雲は全て氷の氷晶だけで出来ている。
そしてそれらが地表に降ってくる時に、大気の気温が極端に低い場合のみ氷の結晶が溶けない。
そしてその氷の結晶が雪となるのだ。
つまりそれと同じ現象を想像し魔法を発動させればいい。
地球で得た科学知識を動員して魔法を、事象想像を組み上げる。
”乱層雲”の魔法を発動、高高度にまずは雪を降らせる雲を作り出す。
次に大気の気温を下げる魔法、”分子速度低下”の魔法を発動する。
それに伴い、急速に周囲の気温が下がっていく。
「リリナ、村の皆にこれから数日間は雪が降ることを伝えてくれ」
俺の言葉にリリナが頷き村に走っていく。
雪が降るということは、農村では死活問題だ。
すでに作物の刈り入れは終わってるから薪さえあれば、村内なら年を越す事は可能だろう。
だが、簡易テントで野営をしてる軍隊はそうはいかない。
彼らは、防寒着すら彼らは持ってきていないのだ。
ならどうなるか?それはすぐに想像がつく。
コメント
ウォン
記憶がないにしても知識はあるってね?いってたよね?
ノベルバユーザー108509
前世の記憶が無い。気がする設定なのに中学、高校時代って言っちゃっていいんでしょうか???