ノーリミットアビリティ
第57話 罰ゲーム
数日後、テストの結果が返って来た。
「なん……だと……?」
「はーはっはっはっ!」
教室内に木霊する高笑いと、絶望した声。
「68点!レイン、お前の点数をもう一度聞かせてくれ!」
「6……3……。くそっ、シークに負けるなんて!」
レインは机を拳で叩き項垂れる。
わずか五点差、されど五点差である。
シークの勝ちである。
「惜しかったね、レイン」
アルトが横でレインを慰めていた。
「た、たった五点だ!俺は負けたとは認めない!」
「五点だろうが一点だろうが負けは負け。おとなしく罰ゲームは受けろ!はっはっはっ!」
「お前、俺の苦手科目で勝って嬉しいか!」
「嬉しい!お前が苦しむ姿を見るのが今の俺の一番の楽しみだ!」
「このゲス野郎!十科目中九教科も負けておいて、よくそんなことが言えるな!?」
「くっくっく!俺はお前に絶望を味あわせるためならどんな代償を払っても構わない!例えそれで赤点を取ることになろうともだ!」
「ダサい!今のお前は最高にダサいぞ!けど何故だ!何故か少しかっこよく見えてしまうのは?!」
シークは勝ち誇ったように笑い、レインは頭を抱えて呻く。
「……シークってレインに対しては性格変わるよね」
横で見ていた奈落山がそっと呟く。
「お前達、68点と63点って……。レベルが低過ぎるだろ!私なら頭を悩ますところだぞ」
シーク達の会話に割り込んで来たのは98点のテストを机の上に置き、間違えたところを見直していたシャーリーだった。
シャーリーは、あの日から一緒の授業を受ける日はいつも近くに座っている。
「レベルが低いって、平均点は56点。中の上だぜ?それに、そもそもお前と違って小さい頃からエリート教育は受けてないんだ。俺は68点でも十分喜べるぜ?」
「ジン様の横にいるお前がそんなのでどうするんだ!目指すなら100点を目指すべきだろう?それにだな……」
シャーリーがつらつらとお説教をし始める。
そんなシャーリーを見て、シーク達はやれやれと首を横に振る。
「んじゃ、次の教室に行こうぜ!」
レインが意気揚々と立ち上がり、颯爽と教室を出て行こうとする。
だが、影のようにレインの背後に回ったシークが満面の笑みでその肩に手を回し、
「そうだな。罰ゲームの打ち合わせをしないといけないからな!」
「それは忘れてくれよ!」
レインの叫び声が虚しく教室内に響き渡った。
その日の夜……レインは寮に帰ってこなかった。
「いやぁ食った食った」
「シークってよく朝からそんなに食べれるね」
「ぼ、僕も朝はあまり食べれないですよ。羨ましいです」
しかし、三人はそんなことは全く気にしていなかった。
いつも通り朝食を食べ、そしていつも通り学校に行く支度をし、そしていつも通り部屋を出る。
そして三人でエレベータに乗り込む。
「シーク君、おはよう!」
「ああ、おはよう」
相変わらず誰かも分からない相手に挨拶をされる日々だが、もうシークはすっかり慣れ、面倒臭がらずにちゃんと挨拶を返す。
そしてそのまま寮をでる。
だが、寮の前がいつもより騒々しい。
「あれ、みんな上を見上げて指を指してるよ?」
「本当ですね、何があるんでしょう?」
「どうせ大したもんじゃ……」
そう言って振り返り、上を見上げたシーク達の目に飛び込んで来たのは、屋上テラスから吊るされたレインだった。
「レイン……お前……」
「そんな……レイン……」
シークは目尻を抑えて顔を伏せ、アルトも同様に顔を伏せる。
「えっ、えっ!?」
防蔓だけは状況が分からずにあわあわしていた。
次の瞬間、シークは勢いよく顔を上げると、レインに向かって叫ぶ。
「そんなとこで遊んでたら風邪引くぞぉ!」
「ちっげぇぇよぉ!!」
起きていたらしい。レインから反応があった。
「おお、生きてたのか。ま、頑張れよぉ!」
「レイン!遅刻しないようにねぇ!」
そう言ってシークとアルトは振り返り、学校へ向かう。
「え、えとえと……頑張ってください!」
防蔓も頭を下げてシーク達についていった。
「たすけろよぉぉぉぉぉぉぉ!」
背後から聞こえてくるレインの叫び声がシーク達の背中を叩いた。
「なん……だと……?」
「はーはっはっはっ!」
教室内に木霊する高笑いと、絶望した声。
「68点!レイン、お前の点数をもう一度聞かせてくれ!」
「6……3……。くそっ、シークに負けるなんて!」
レインは机を拳で叩き項垂れる。
わずか五点差、されど五点差である。
シークの勝ちである。
「惜しかったね、レイン」
アルトが横でレインを慰めていた。
「た、たった五点だ!俺は負けたとは認めない!」
「五点だろうが一点だろうが負けは負け。おとなしく罰ゲームは受けろ!はっはっはっ!」
「お前、俺の苦手科目で勝って嬉しいか!」
「嬉しい!お前が苦しむ姿を見るのが今の俺の一番の楽しみだ!」
「このゲス野郎!十科目中九教科も負けておいて、よくそんなことが言えるな!?」
「くっくっく!俺はお前に絶望を味あわせるためならどんな代償を払っても構わない!例えそれで赤点を取ることになろうともだ!」
「ダサい!今のお前は最高にダサいぞ!けど何故だ!何故か少しかっこよく見えてしまうのは?!」
シークは勝ち誇ったように笑い、レインは頭を抱えて呻く。
「……シークってレインに対しては性格変わるよね」
横で見ていた奈落山がそっと呟く。
「お前達、68点と63点って……。レベルが低過ぎるだろ!私なら頭を悩ますところだぞ」
シーク達の会話に割り込んで来たのは98点のテストを机の上に置き、間違えたところを見直していたシャーリーだった。
シャーリーは、あの日から一緒の授業を受ける日はいつも近くに座っている。
「レベルが低いって、平均点は56点。中の上だぜ?それに、そもそもお前と違って小さい頃からエリート教育は受けてないんだ。俺は68点でも十分喜べるぜ?」
「ジン様の横にいるお前がそんなのでどうするんだ!目指すなら100点を目指すべきだろう?それにだな……」
シャーリーがつらつらとお説教をし始める。
そんなシャーリーを見て、シーク達はやれやれと首を横に振る。
「んじゃ、次の教室に行こうぜ!」
レインが意気揚々と立ち上がり、颯爽と教室を出て行こうとする。
だが、影のようにレインの背後に回ったシークが満面の笑みでその肩に手を回し、
「そうだな。罰ゲームの打ち合わせをしないといけないからな!」
「それは忘れてくれよ!」
レインの叫び声が虚しく教室内に響き渡った。
その日の夜……レインは寮に帰ってこなかった。
「いやぁ食った食った」
「シークってよく朝からそんなに食べれるね」
「ぼ、僕も朝はあまり食べれないですよ。羨ましいです」
しかし、三人はそんなことは全く気にしていなかった。
いつも通り朝食を食べ、そしていつも通り学校に行く支度をし、そしていつも通り部屋を出る。
そして三人でエレベータに乗り込む。
「シーク君、おはよう!」
「ああ、おはよう」
相変わらず誰かも分からない相手に挨拶をされる日々だが、もうシークはすっかり慣れ、面倒臭がらずにちゃんと挨拶を返す。
そしてそのまま寮をでる。
だが、寮の前がいつもより騒々しい。
「あれ、みんな上を見上げて指を指してるよ?」
「本当ですね、何があるんでしょう?」
「どうせ大したもんじゃ……」
そう言って振り返り、上を見上げたシーク達の目に飛び込んで来たのは、屋上テラスから吊るされたレインだった。
「レイン……お前……」
「そんな……レイン……」
シークは目尻を抑えて顔を伏せ、アルトも同様に顔を伏せる。
「えっ、えっ!?」
防蔓だけは状況が分からずにあわあわしていた。
次の瞬間、シークは勢いよく顔を上げると、レインに向かって叫ぶ。
「そんなとこで遊んでたら風邪引くぞぉ!」
「ちっげぇぇよぉ!!」
起きていたらしい。レインから反応があった。
「おお、生きてたのか。ま、頑張れよぉ!」
「レイン!遅刻しないようにねぇ!」
そう言ってシークとアルトは振り返り、学校へ向かう。
「え、えとえと……頑張ってください!」
防蔓も頭を下げてシーク達についていった。
「たすけろよぉぉぉぉぉぉぉ!」
背後から聞こえてくるレインの叫び声がシーク達の背中を叩いた。
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