ノーリミットアビリティ

ノベルバユーザー202613

第43話 通学路

学園に通い始めて一週間が終わった。
今日で八日目、つまり一週間が終わり、始まった日でもある。

今日の授業は先週と同じ能力基礎学から始まる。
先週と違うのはシークの横に舞華達いつもの三人がくっついて来て、先程から秋沙とどんな話をしたのか聞かれまくっているところだ。

「だからさっきから何度も言っているだろうが……。普通に明るい人だったぞ」
「そんな訳あるか!あの方はな……あの方は……」

舞華は恐怖に怯えたようにプルプルと震えながら、秋沙がいかに怖い人物かを滔々とシークに語っている。
しかし、シークが知っている秋沙は優しくて明るい快活な先輩だ。
先程から何度もそう伝えているのだが、舞華は何度も頭を横に振り、信じようとしない。

「どんだけ怖かったんだよ……。まあ、よくよく考えてみれば怒られることだけどな。同級生に突然刃物ぶん投げるとか」
「そ、それは……うう……」
「だから気にしなくていいって」

ここには防蔓やレイン達もいる為、ヴァリエールの名前は口には出さない。
だが、シークが秋沙達に会ったことは三人とも知っている。
うな垂れた舞華を見て、シークは笑いながら慰める。

そんな時だった。
背後に気配を感じて、咄嗟に隠形を使い気配を消して近くに立っていた木の陰に隠れる。

すぐ後で、舞華達の近くまで走ってくる人形を抱えた少女がいた。
マター・ドールである。

「あれぇ?シークがここにいるのが見えたんだけどなぁ?」
「居ないみたいだね?」
「居ないみたいだよ?」

奇妙な三人の声がマターの胸元からする。
彼女がいつも持ち歩いている三体の人形である。
次の瞬間、三体の人形はその首を一斉に舞華達の方に傾けて、さらに言葉を発する。

「あの人に聞いてみようか?」
「そうした方がいいみたいだね?」
「そのした方がいいみたいだよ?」

テクテクと舞華達の元に歩いて行ったマターは、一番近くにいた奈落山に声をかける。

「ねぇねぇ、さっきまでここにシークがいなかった?」
「うーんとねぇ……」

突然シークが消えたことに動揺しながらも、声をかけられた奈落山は努めて冷静さを保つ。
しかしどう答えていいのかが分からないため、チラチラとシークを見る。
それを見たシークは手信号で、「サキニイッタトツタエテクレ」と送る。
その手信号がちゃんと伝わったらしく、奈落山は小さく頷く。

「シークなら用があるからって先に行ったよ」
「そうなの?分かった。教えてくれてありがとうね!」

マターは頭を下げてお礼を言うと校舎へと走って行った。
マターが見えなくなったのを確認したシークは木の陰からいそいそと出てくる。

「ふぅ危ねぇ。奈落山、助かった」
「それは別に構わないけど……。君も厄介ごとが続くね」

実のところ、マターがシークの元にやってくるようになったのはこれが初めてではない。
三日前から、マターは事あるごとにシークの元にやってきては人形の話をしてくるのだ。

正直に言えば、シークはマターの作る今まで見たこともない程精巧に作られたその人形に興味がある。
だがそれはあくまで、戦う時身代わりとして使えるな、とか、中身のあるマリオネットとして使えるな、などといった武器としての価値を見出しているに過ぎない。
一方でマターが語るのは、自分の作った人形が如何に可愛いか、服を着せ変えればこんなにも変化するといった愛玩人形として話しているのだ。
二人の価値観の相違がそこにはあり、マターはシークが人形で戦うことを良しとしないだろうし、シークは愛玩用の人形には興味がない。

だから、正直にいってしまえばマターの話はシークにとってあまり面白いものではないし、合間合間に何故か出てくる結婚後の生活についても意味が分からない。

「好きで続かせてんじゃねぇよ」
「けど、このまま放置するのもよくないでしょ?」
「まあそうなんだが……」
「いやーモテる男は大変だな?」

頭を悩ませるシークの背後からレインが話に入ってくる。

「いや、そんなんじゃねぇよ」
「ははは、謙遜するなって」
「謙遜じゃないんだが……」
「出来るなら代わって欲しいくらいだぜ!」

レインのその言葉にシークは過敏に反応する。

「お、マジで?分かった。ならあとでマターにお前がマターの人形に興味があるってこと伝えとくわ!」
「ちょ、嘘嘘!人形なんかに興味があるわけないだろ!」
「「「なんかに?」」」

レインが慌てて首を横に振って拒否する言葉に奈落山達の癪に触るものがあったらしい。

「ちょっとレイン、人には言っていいことと悪いことがあるんだよ?」
「人の好きな物を貶めようだなどと恥ずかしい思わないのか?」
「そうですわ。女の子なら人形の一体や二体は持っていて当たり前ですわ」

三人の女子にきつく叱られてレインは縮こまる。
それを見て溜飲の下がったシークが一言。

「良かったな。お前も女子にモテモテじゃないか」
「俺が欲しいのはこう言うんじゃなぁーい!」

レインの叫びが通学路に響き渡った。

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