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ノーリミットアビリティ

ノベルバユーザー202613

第36話 法條院家

今日の授業が終わり、放課後、シークと奈落山は二人だけで集まり、打ち合わせをする。

「俺は舞華と昇華をやる。お前は珊瑚の相手をしてくれ」
「んー、それは構わないけど……そんなにうまくいくかな?」
「勝算は高いと思うぜ?」
「へー、何でか聞いてもいい?」
「恐らく舞華と昇華は小さい頃から本当の姉妹のように育てられてきたはずだ。何せあいつらの実の姉である湖赤と湖白も同じように育てられてきたらしいからな。だが、珊瑚は違う。言ってしまえば、舞華達と珊瑚の関係は、物凄い仲のいい友達なんだよ。この差はあいつらにとって大きいはずだ」
「なるほど……、でもシークの予想通りなら舞華は未来視を持っているよ?多分予知でバレちゃうよ?」

確かに奈落山の言う通り、舞華には一瞬先さえ見通せる未来視がある。
それ故、どんな作戦を立てようと未来視で見られ、対策を立てられてしまう可能性が高い。
しかし、シークはその問いに対して首を横にふる。

「いや、未来視はそんな便利な能力じゃないはずだ。時間系は特に制約の厳しい能力だからな」

そもそも時間系は希種指定に属する四つの能力の中で最も曖昧な定義なのだ。
例えば、空間内の時間を一定時間停止させることができる能力は空間系に属するのか、それとも時間系に属するのか。
答えは空間系能力である。
他にも、確定した自分自身にとって都合のいい勝利方法を見通す能力、『栄光への道標』は運命系の能力である。
このように未来を見る、時間を関わるといっても一概に時間系とは言えないのだ。

そもそも舞華は自分の能力を時間系だなんて一言も言っていないため、それを前提に動くことは危険である。

「それに、本当にあらゆる未来が見通せるのであれば対策なんてとっても仕方がねぇから。かと言ってお互いの短所をカバーできる程のコンビネーションを特訓する時間もねぇ。ならざっくり作戦決めて後は要現場判断で行こうぜ?」
「ねぇ君、私を勝手に巻き込んでおいて適当すぎるでしょ」
「……ピューピュー」
「……ちょっとこっちを向こうか」

顔を背けたシークの頭をガッと鷲掴みにして無理やり自分の方に向かせる。

「も、もしかしてとは思うんだけど……作戦とかまともに考えてきてないのかい?」
「いや、考えてきただろ?俺が舞華と昇華を受け持つからお前は珊瑚を……」
「適当すぎるでしょ!冗談だと言ってくれぇー!」

言い訳を始めたシークの言葉を遮って顔を覆って座り込んでしまう奈落山。

「い、いやぶっつけ本番でも結構何とかなると思うぞ?ほら、俺、一応一年最強だし……」
「うわぁぁぁーーーん!私はこんな男に負けたのかー!」
「そ、そんなに落ち込むなよ……、ちょっと傷付くぞ」

奈落山は、この世の終わりだとでも言うように嘆き出した。
顔を上げた奈落山の瞳には僅かながらに潤んでいた。
ガチ泣きだったらしい。

「どんだけショック受けてんだよ……」
「だってさだってさ、私は君の噂をずっと前から知ってるんだよ?相当ストイックで硬派な人間だって普通思うじゃん?」
「いや思うじゃんって言われてもな……。同意したら俺の存在否定することになるだろうが」
「うう……」
「いいから立てよ。パンツ見えてんぞ」
「きゃっ!」

この学園の女子は制服でスカートを着用する義務があり、彼女もまたその例にもれない。
そして、そのまま座り込めば当然その中まで見えるのは必然であろう。

「……見た?」
「見えたぞ?白の……もがっ!?」

シークがパンツの色と柄を言おうとした瞬間、空震で一瞬で近付いてきた奈落山に口を塞がれてしまう。

「このこと誰かに言ったら私と決闘する事になるからね?」
「フ……フンフン」

顔を真っ赤にして目と鼻の先で睨んでくる奈落山の気迫に負けて、シークは二度頷く。

「もう、全く……それと、君が一年最強って決まった訳じゃないでしょ?」

しっかり聞いていたらしい。手を離した奈落山が思い出したように聞いてくる。

「いや、舞華が言ってたぞ」
「え、舞華が?五條院家の情報収集能力は世界最高クラスだし……うーん、信憑性は高そうだね……。そうかー、君が最強か……」
「何だよその反応、悪いか」
「いや別に悪くはないんだけどねぇー。正直、最初君のことを聞いた時はもっとストイックな人間だと思っていたからさ」
「実際は?」
「こんな行き当たりばったりな人だとは思わなかったよー」
「ぐっ……」

シークは率直な意見に言い返せず、悔しそうに呻くしかなかった。

「まあ今のシークの方が取っつきやすくて私はいいと思うよ!」
「変なフォローは入れてこなくていいぞ」
「あっはっはっはっは」

楽しそうに笑う奈落山を見て、シークは軽くため息を吐く。
そしてその視線を落としたその先は自然と奈落山の腰に挿してある棒状の物に移っていく。
スラリと長く、そして美しいまでに磨かれたそれをシークは一度見たことがある。

「今回は得物は持ち込みオーケーだったからね。本当はこれで戦うのは最初はシークが良かったけど……。まあ味方にいるし良しとしよう」

それは奈落山が先日、列車内で振っていた奈落山の木刀。
奈落山家によって、奈落山絶のためだけに柄や刀身の長さ、反り具合や身幅までが計算され尽くした彼女が使える最高の武器。
それは、先日奈落山が使った汎用性の高さが売りの使い古された木刀を使うのとでは天と地ほどの差が出ることだろう。

「期待している」
「任せてよ!」

輝くような笑顔を向けた奈落山を頼もしく思いながらシークは校庭を目指した。

それから数分後、校庭に到着したシーク達を待っていたのは舞華達三人……だけではなく、明らかに一年生ではない眼鏡をかけた女子生徒二名が立っていた。

「待たせて悪かったな」
「いや、待ち合わせ五分前だ。……初日の歓迎会の時もそうだったが、お前は本当に時間ギリギリに来るんだな」
「悪かったよ。奈落山とつい話し込んじゃってな」
「ほぉ?作戦会議か。ギリギリまで作戦を練るとは、よほど複雑で緻密な計算がされたことと見受けられるな」
「あ、ああ!その通りだ!」

勝手に勘違いをして深読みしだした舞華に、シークは目を泳がせながらつい合わせてしまう。
奈落山は自信満々な舞華を見て、本当のことを言うに言えず、ただ気まずそうに目を逸らした。

「んで、その二人はどちら様よ?」
「審判は必要だろ?だから今回のために私が特別にお願いしてきて戴いたのだ」

そう言うと、上級生の二人は一歩前に出て来る。
二人とも眼鏡をかけており、シーク達が話している間も、ピクリとも動かずに直立していた。
制服もシワひとつない程きっちりと着こなし、異常な程の清潔感が漂っている。

「ご紹介に預かりましたコキノス組五年、法條院律葉と申します」
「同じく五年、法條院律華と申します。今回の決闘に辺り、公平中立な審判が必要だということで参上致しました」

法の原案を作成、また裁判長などを多く輩出する法の申し子。
しかし、彼女達は舞華達の身内だ。
そこに一抹の不安があるのか、奈落山が質問する。

「とは言っても先輩方は舞華達の身内ですよね?私はヘリオス人ではないので、少し心配なのですが……」

それを聞いた二人は右手に抱えていた分厚い本を心臓に持っていく。

「その心配は無用のものです。裁判(審判)をする以上、私達は絶対中立」
「我らは法を司る法條院家。それを侵す者は例え身内であろうと容赦は致しません」
「貴方達がルールを侵さない限り、私達は中立であることを三色旗と六法全書に誓います」

三色旗とは、ヘリオス国を三つの神の柱で表した縦縞の三色の国旗である。
左には軍事を司る風の神憑を表した緑色。
右には財政を司る火の神憑を表した赤色。
中心には政治を司る砂の神憑を表した砂色。

そして、六法全書とは言うまでもなくヘリオス国の法の全てが書かれた辞書である。

奈落山がチラリとシークを見る。
その視線に気づいたシークは大丈夫だとでもいうように小さく頷いた。
それを見て安心したのか、奈落山は二人に詫びの言葉を入れる。
二人も気にしていないと軽く許したところで、お互いが位置に着く。

「ではルールの確認をいたします。得物は持ち込み自由。ただし、毒などの明らかな殺生目的によって作られたものは不可。また相手を殺す、または再起不能にする程の攻撃がなされた場合即座に勝負を停止させ、敗北とみなします。また、学園地図によって『校庭』と定められた場所から相手によって突き出された、もしくは意図的に出た場合は失格。その場で戦闘の権利を失います。また……」
(細けぇー……)

ルールの穴をついたり、曖昧なニュアンスを意図的に別の解釈に変えたりと言ったことが裁判では日常茶飯事であるため、誤解のないよう、また言い訳のしようがないように細やかなルール説明が行われる。

簡単に説明すれば、勝利条件は相手を『校庭』から出すか、敗北を認めさせるか急所への寸止めである。

ーー十分後。

「以上ですが、何か至らぬ点、疑問に思いました点は御座いましたか?」
「……いや、何もない」
(細かすぎて最初の方、何言ったのか全然覚えてねぇ)
「ありがとう御座います。では、これより牙條院舞華、綺條院昇華、法條院珊瑚対奈落山絶、シーク・トトとの決闘を始めます!」

十メートルほど離れた位置に相対した二人と三人の中心で律葉と律華は叫ぶ。

「では、決闘試合、始め!」

その瞬間五人の超能力者による試合の火蓋が切って落とされた。

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