ノーリミットアビリティ

ノベルバユーザー202613

第23話 挫折の始まり

「ふぁー」
「大きな欠伸だね、シーク」
「奈落山か。まあな、昨日は結構大変だったからよ」
「へー」

シャーリーとの決闘の次の日、シークは奈落山と同じ教室で授業を受ける準備をしていた。

「それは昨日、シャーリーが帰ってこなかったことと何か関係があるのかな?」
「……まあな実はな」

シークは奈落山に昨日の事の顛末を話す。

「……そうだったの。シークも大変だったね」
「いや、俺よりもシャーリーの方がヤバイだろう。特に精神面の方が」
「うーん、そうだね……。そっとしておいた方がいいかな?」
「ああ、……あ?」

その時だった。時間ギリギリになって教室のドアが開く。
入って来たのは、件のシャーリーだった。
その瞬間、今まで騒がしかった教室内が凍ったように静まり返ってしまった。
その顔からは表情が消え、今にも消えてしまいそうな儚げな雰囲気を醸し出している。
そしてそのまま静かに教室の一番前のど真ん中の席に座る。
昨日と違い、カバンからノートを取り出す気配はなく、ただただ俯くばかりだった。

すると、昨日も同じクラスだったレイシアが、今度は友人らしき取り巻きの女子を二人連れてシャーリーの下に向かう。
そして、その長い髪を豪快にバサリと搔き上げると、シャーリーに対して挑発的な態度で声を掛ける。

「あら、シャーリーさん、御機嫌よう!本日もご機嫌麗しくて?」

どう見たって麗しくないはずなのだが、昨日の意趣返しかレイシアは強気だ。

「……」
「シャーリーさん、また無視ですの?本当にホロウ家の方は頭が弱いのかしら?」

昨日と同じように無視され、またレイシアが額に血管を浮かべながらシャーリーを刺激する。
しかし……。

「……」

昨日と違って、シャーリーはまたもや無言のままだった。

「ちょっと!幾ら何でも無視はないんじゃないんですの!」

そのシャーリーの行動に、また無視されたと思ったレイシアはシャーリーの机を強く叩く。

「ヒッ……!?」

小さな悲鳴。
最初、その様子を見守っていた生徒達も含め、レイシア自身、誰の声だったのか分からなかった。
しかし、それら視線はすぐに一点に集まる。
シャーリーだ。

(まずい!)

シークは慌てて立ち上がるのと、シャーリーがすすり泣きを始めるのは同時だった。

「来い、奈落山!」
「……え、あ、うん!」

一瞬遅れて奈落山も状況に気付いたようだ。
二人は小走りにシャーリーの下に向かうと、シークはシャーリーとレイシアの間に身体を入れて立ち塞がる。

「悪いがここらで勘弁してやってくれないか?」
「え……あ……」

レイシアも状況がまだよく分かっていないようだった。
その間に奈落山がシャーリーの肩を抱き、保健室に連れて行く。
二人を見送ったシークはレイシア達に視線を戻す。すると、目の前のレイシアを含めた三人が震えていることに気付いた。
ゆっくりと自分の顔に手を持って行く。
シークは鏡など持ち合わせてはいないが、今の自分の顔が相当怖い顔をしているのだろうということに気付いて手で少し目を覆う。

「ご、ごめんなさい……」
「謝るなら俺じゃなくてあいつに謝れ」

シークは静かに告げる。

「わ、私のせいでしょうか?」
「違う。あれはお前のせいじゃない。だから気にしなくていい」

シャーリーがあのようになってしまった理由は他でもない、シークのせいだ。
その負い目もあり、シークはぶっきら棒に言う。
そして手を下ろし、ため息を一つ吐くと、自分がいた席に戻ろうとする。
だが、それでは収まりがつかないのか、レイシアがシークを呼び止める。

「わ、私に何か出来ることはありませんの?」
「ねぇよ。何もない」
「あ……」

しかし、シークは振り向くことなくレイシアの言葉を拒絶する。
そして、シークが席に着くのと同時に授業の始まりのチャイムが鳴った。
教師が同時に入ってくる。

「ん?どうしたんだ、お前ら?」

教師は教室内の異様な空気に気づき、生徒達に質問するが、それに答える者は一人もいなかった。

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