転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

夢の中の事件簿~『灰かぶり』2

翌朝、今度は寝坊せずに朝早く起きることが出来た。
「さてと」
 そう言って、引き出しの中を探る。
「――――――――――――」
 何もない。
 まあ、これだけ召使扱いされていれば何もないだろう。たぶん、灰かぶりと全く同じ状況だろう、と踏んでいたので、全く驚かなかったが、それでも、今いる部屋同様、と違ってかなり待遇が悪い。
 仕方なくあるものに着替え、朝の準備にとりかった、
 しかし、昨日もそうだったのだが、どうやらこの世界で自分・・は元から存在していたみたいで、妙にこの体は仕事に慣れている。夫人と二人の息子分の朝食を作った。その後、プリセラ夫人たちを起こしに行った。
 寝起きの悪い夫人を一番後に回し、先に二人の少年を起こしに行くと、すでに名前の分からない褐色頭の方は起きており、金髪の方に対してのみ強硬手段を取った。金髪は不機嫌そうだったが、気にせずに夫人の方へと向かった。
「おはようございます、奥様」
 たぶん、夫人の性格的にもこう言った方がいいのではないかと思って言ったが、どうやらそれは当たりで、夫人の寝起きはすこぶる良いとまではいかなかったものの、昨日よりは良くなっている気がする。というか、そもそも、昨日は自分が寝坊したのにどうやって着替えたんだろうか、とふと思いだしたが、すでに過ぎてしまったことであるので、すぐにどうでもよくなった。
 夫人の用意を済ませ、今日の一日の予定をもう一度頭の中に思い浮かべた。
(本当ならば、プリセラ夫人の入浴とかそこら辺の準備からだろうけれど、まあ流石に男でなんだから自分には任されないだろう。となると、やっぱり一番は金髪男クロードだな。褐色頭は朝、挨拶に行ったときに最後にしてほしいって言われたから必然的に後回しになるな)
 という事で、最初の目的地に向かった。



Misshon1 金髪頭の準備
 金髪―――クロードの部屋に入ると同時に、部屋の中を見回した。実際の・・・クロード王子はかなり雑な方であり、何度かリーゼベルツ王宮内に与えられていた部屋に入らせてもらったことがあるのだが、非常に汚い。過去・・の自分としては考えられないことだった。だが、この『物語』の中のクロード・・・・の部屋はかなり綺麗だ。人格がまるきり入れ替わっているんじゃないのか、と思ったが、それを言う訳にはいかなく、ただ黙って作業を開始した。この金髪男は特に服装などに頓着するわけでもなく、彼もまた黙って次々と彼のチョイスを受け入れて行った。
「はい、出来ました」
 胸に入れるチーフまでアランに任せきりだったクロードは、その言葉にすぐさま引き出しの中から紙を取り出して、アランに渡した。
「これを俺が戻ってくる前までにしておけ」
 そう言われたので、彼は何だろうと紙を見てみると、さまざまな雑貨の購入リストになっていた。しかも、少なくとも一往復では買いきれない量だ。
(ふざけるな)
 ここが本当にどこだか知らないが、魔法・・が使える場所でないかぎり、時間内には無理だろう。アランが固まったのをいいことに、クロードは鼻で嗤う。
「もし、買うことが出来なければ、お前を今後は俺専属・・の召使にする」
 義兄の言った言葉にアランは深くため息をつきたくなったが、その場では控えた。これ以上、嫌がらせをされるのかと思うとぞっとしたからだ。
「―――――――分かりました」
 渋々、了承した。クロードは言いたいことは言ったらしく、犬を追い払うようにして、アランを部屋から追い出した。

 夫人の部屋に向かったが、珍しく侍女たちが彼女の準備をするからと断られた。しかし、すでに彼は夫人に身につけさせようとしていた小物類――――もちろん、夫人の趣味・・にあったもの―――を持っていったときであり、その断りが夫人と侍女たちによる嫌がらせであるのは彼にもわかった。
 ちなみに、夫人からも買い物リスト追加課題を出された。もう、すでにツッコむ気にはなれず、単純にそれを受け入れた。


Mission2 褐色頭の準備
 最後に、褐色頭の部屋に向かった。侍女たちの話でも下働きの者たちの話の中でも、実は彼の名前は一切出てきていなかった。その彼の正体に訝しみつつも、直接本人に『アンタ、誰ですか』って聞くことはできないので、尋ねることをしなかった。
 昨日の調子だとまた、全く不毛なやりとりを繰り返すことになると想像しただけで、ぞっとした。しかし、その想像は杞憂に終わった。なんと、彼は見事に舞踏会に行く格好をしていたのだ。
「遅くなって申し訳ありません」
 彼は褐色頭に会った瞬間にそう謝ったが、褐色頭は怒らないばかりか、
「うーん。やっぱあの二人にさんざんなことやられたみたいだね」
 と言い出す始末であった。どういうことか尋ねると、褐色頭は、
「んー。ま、この場で教えちゃってもいいけれど、ちょっとそれだとあの二人がいつ声をかけてくるかわからないから、舞踏会始まってからでもいいかな?」
 と言った。
「え、僕は舞踏会に参加しないですよ」
 アランはそう返すと、褐色頭は笑いながら答えた。
「大丈夫さ。君の味方になる人物がきっといるから、ね」
 その答えにアランは、本物の灰かぶりだったら『舞踏会?え、嬉しいんですけれど、ぜひ連れて行ってください』となるんだろうなぁと思い、少しばかり現実から逃げた。
(絶対に行くもんか。たとえ、この生活から逃れられたとしても)
 アランが想像したことが分かったのか、褐色頭はニマリと笑った。
「ま、じゃあ、時間・・が来るまでは元気にしていてね」
 そう言って、褐色頭は部屋を出て行った。しかも、買い物リスト追加課題を渡さずに。
 いったい何の前触れなのか、と思いつつも、さっそうと出て行く彼の姿を見送ると、彼らの外出時にするべきことをし始めた。

 彼らが出て行った後――――
 アランは馬丁に馬を借りて、方々へ出かけた。本当は掃除を先にやっておきたかったが、あの二人の買い物リストに書かれていたブツを揃えるには、いくら時間があっても足りないことが分かっていたからだ。
(歩いていくよりもはるかに、馬の方が乗り慣れているし楽だな)
 そんなことを考えながら、自宅と商店の間を往復していると、日が暮れていた。
「灰かぶりも、こんな状況だったんだろうな」
 アラン―――正確に言うならば、八月朔日ほづみ蓮としてなのだが――――が知っている灰かぶりは、義姉と継母にいじめられており、舞踏会にも多くの用事を押し付けられて、家にいたのではなかったのではないか。
(本当に似たような状況だ)
 自発的かそうでないかは違えども、本当に似たような状況であった。

「転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く