転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

外交王子の探し物Ⅳ

 隠し通路を赤の他人に教えてしまうあたり、一国の王としてはどうなのだろうと思いながらも奥の部屋に案内されたクロードは、そこにいた人物に驚いた。
「君は―――――」
 前に会った時は少し野暮ったい感じがあったが、今は全然違う雰囲気の少女――――カテリーナがそこにラシード王の妃・ザミラと共にいた。
 二人もまた、隠し通路からの侵入者・・・に驚きつつも、先導する男の様子を見ると、少しため息をついただけで済ませた。カテリーナはクロードを認めると、ザミラ妃の背後に隠れるように動いた。彼女に手を伸ばしかけたクロードは、彼女の行動に少しがっかりしながらも先に王妃の方へ立ったまま挨拶した。
「先日は私的な用件にお付き合いくださり、大変ご迷惑おかけしました。今回はこちらの国に大使としてしばらくの間、駐在させていただくことになりました」
 クロードの挨拶に直接ザミラ妃は返答しなかったものの、何かを含んだ笑いをし、
「そうか。君はもう彼女・・という呪縛から解けた、そう捉えていいんだね」
 と言った。ザミラ妃もクロードの変化にどうやら気づいたらしい。クロードは王妃の眼を見据え、
「はい」
 とはっきりと答えることが出来た。
 そして、カテリーナの方に向き、跪いて挨拶した。その作法に、国王夫妻も、そしてカテリーナ自身も驚いている。

「カテリーナ・ポルドルフ辺境女公爵・・・・・。先日はあなたに対して大変失礼なことをしてしまい、申し訳ありませんでした。もし、許されるのでしたら、あなたをセリチアへお連れしたいのです」

 クロードの発言にカテリーナは目を大きく見開いた。彼女にとって、因縁のある国への誘いは驚きと同時に恐怖でしかないだろう。彼女の感情に気づいたクロードは言葉を続ける。
「今の私の身分は伯爵です。ですので、誰にも知らせずに結婚する事も可能です。もちろん、兄のフィリップには打ち明けなければなりませんが、あなたの出自を知る者を多く作る気もありません」
 彼の言葉にほっとするカテリーナ。しかし、首を横に振った。
「ですが、クロード様がその努力をなされても人々の噂になることもあります。その場合、クロード様は後々困るのではありませんか」
 カテリーナの言葉に即座に否定したかったが、確かに思い当たる節はある。おそらく彼女は兄王に『万が一』のことがあった場合のことを考えているのだろう。彼は自嘲めいた笑いをした。
「構いません」
 彼は断言できた。
「僕はそもそも王位なんて柄にもありませんし、転がり込んできたとして、そんな面倒な役を引き受けますか。赤毛君・・・以外にはそんな役割引き受けないと思いますよ」
 国王夫妻の目の前だというのに、彼はあっけらかんという。しかし、国王夫妻は咎めないばかりか、発言の後半部分に出てきた人物に少し同情していた。カテリーナはクロードの発言に少しはらはらしたものの、クロードは気に留めずにさらに言う。
「僕と兄上は、勝手に貴族たちに争われた時があったんです。兄が即位した後も一部の貴族は兄を認めていなくて、僕はある事件を境に伯爵の身分をもらいました。それでも、我慢ならない連中がいるんですよ。そいつらを押さえるためにも、あなたとの結婚はうってつけなんですよ」
 という少し暴論にクロードは少し言い過ぎたと思ってしまい、
「もちろん、今言った話はあなたと結婚できた場合のメリットである、というだけで、この先あなたと一緒に過ごしたい、というのが本音なんですが」
 と取り繕うように、少しはにかみながら言った。
 クロードの暴論に少しガックリ来ていたカテリーナは顔を上げた。そして、ザミラの陰から出てきて、
「こんな私でもよければ、ぜひセリチアへ連れて行ってくださりませんか」
 と、クロードに言って、ちょこんと頭を下げた。その様子を見て、クロードはその可愛らしさに言葉を失った。二人の様子を見た夫妻は、
「そう決まったならば、今すぐにでもセリチアに戻れ。一応ここはミゼルシア国だ。私の命令に従ってもらおう」
「そうですね。こんなところにいるだけでこちらは目の毒になります」
 と口々に悪態をつくが、目は笑っている。その言葉は建前、という事だろう。カテリーナはその二人の真意に気づかず、かなりハラハラした様子を見せたが、
「では、『ミゼルシア国王の意に添わない行動を取ったため、本国へ追い返され』ます」
 と、クロードはあえてそれに乗った。ラシード王は笑いながら、なるほどな、と言った。彼もクロードの演技に気づいたのだろう。笑いながらさっさと帰れ、と手で二人を追い払った。



 二人は国王夫妻が用意した馬車に案内された。御者に何も言わなかったものの、二人が乗り込むと同時に、馬車は動き出し、南方へ向かい始めた。
「あんなこと仰ってしまってよかったのですか」
 動き出してしばらくしてから、カテリーナはクロードに言った。彼女は、本当はクロードの隣に座りたかったが、クロードにそれを拒まれた。断られた際、先ほどの話は嘘だったのかと思い、ショックを受けた彼女だったが、クロードは笑いながら、
『私もあなたの隣に座りたい。けれど、セリチアに着くまではあなたに嫌われたくないから』
 と少し恥ずかしそうに言っていたので、カテリーナも納得した。
「ああ、問題ないさ」
 クロードはきっぱりと言った。たぶん、兄からもミゼルシアからの抗議・・から、形式上はクロード自身に説教するつもりだろうが、それが演技だという事を兄も分かってくれるだろう。そういうと、最後の部分が三人の演技だという事に気づいていなかったカテリーナはかなり涙目になっていた。

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