転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

外交王子の探し物Ⅲ

 クロードは翌日、探し物の手伝いをしてくれたカテリーナ、司書のマラット、ラシード王夫妻に礼を言い、帰国した。
 帰国するや否や、兄王に面会を申し込み、すぐに王の私室へ通された。
「見つかったのか」
 彼は一言目にそう言った。クロードははい、と答えた。すると、フィリップ王はニヤリと笑って、どんな花かと尋ねた。
「その花はこの国のような花です」
 クロードがそう答えると、フィリップ王は少し目を丸くした。クロードが探してきたものはフィリップ王の考えていたものとは少し・・違っていたのだ。
「というと?」
「その花はあまりこの付近では見られない花ですが、セリチアの国旗となっている『青花玉実せいかぎょくじつ』のと非常に似ている花ですし、それにその花が持つ花言葉はこの国のスローガンでもある『美しき隣人のために、誠実であれ』と似ています」
 クロード王子はその花の絵を写してきたものを、兄へ見せる。フィリップ王はなるほど、と頷き、
「確かに今は・・この地に自生していない花だが、大昔、この国が建国されたときにはまだ自生していて、『尊敬』の意味を彼らはその花に与えた」
 と言った。しかし、直後に、

「だが、『セリチアの探し物』はそうではない」

 とクロードの発言を否定した。クロードは兄が知っていないものだと思っていたため、その言葉に驚き、兄をじっと見つめた。
「実は私も父上に試されたのだ。もちろん、最初は今のお前と同じように解答したが、そうではなかった」
 フィリップ王はかすかに笑う。クロードはますます訳が分からなくなる。
「もう一度、ミゼルシアに行ってごらん。たぶん、あのラシード王なら気づいているんじゃないかな」
 フィリップ王はクロードが提示した紙を返却する。
「ちなみに、私の場合はこの王宮にあった。自分が気づかないうちに、抱え込んでいたみたいでね」
 さあ、行きなさい、と手で追い払われた。クロードは仕方ない様子ではあったものの、兄王の命令・・には逆らえない。

 そうして、再びミゼルシアに来た。今度は『ただの・・・客人』という立場ではなく、『駐ミゼルシア・セリチア大使』という外交官として来たのだ。
「へぇ。あの金髪が、ねぇ」
 ラシード王との会見の場でそう言われる。さすがに、今回の来訪はちゃんと公式の場でもあるため、妻に膝枕してもらっていない。
 ちなみに、彼も(クロードも)金髪なのだが、フィリップ王とは年代も近いせいか、比べられることが多いらしく、ラシード王は(勝手に)フィリップ王のことをライバル視してそう呼んでいるのだ。
「まあ、あの男が言うとおり、なんとなくは想像ついているよ」
 彼は事も無げに言う。

「もちろん、それを僕が言ったら、君のためにならないから言わないけれど、もうすでに君は見つけているんじゃない?」
 彼は軽く言う。これ以上、ラシード王にも聞くことが出来ないと判断したクロードは、ラシード王との会見後にもう一度、大図書館へ向かった。先ほどのラシード王との会見もそうだが、今回は大使という身分上、かなりの護衛がついて仰々しいと感じていたが、外すわけにもいかない。大図書館でも同じことで、今回は自分で図鑑を探すことはできず、司書に頼んで目当てのものをとってきてもらった。それを貸し出された応接室で一人きりになって読んでいると、ふとあの少女――――カテリーナのことが気になり、調べものどころではなくなっていた。
(いったい、あの少女は何者なんだ)
 今回はあの護衛や野次馬たちの数が多い。そのため、この後、公衆の面前では彼女のことを探すそぶりを見せるわけにはいかず、どうしようかと思った。ちょうどその時、扉がノックされ、その思考を中断させられた。どうやら、ラシード王付きの侍従が休憩用のお茶と茶菓子を持って来たみたいで、豪華なセットが並べられていく。並べ終わり、一礼して出て行こうとしたときに、クロードは一人の侍従を呼び止めた。
「探してほしい人物がいるんだが」
 そう言って切り出した内容に、次第に侍従の顔は険しくなっていく。どうしたものかと思って尋ねてみると、
「伯爵様はご存じないのですね」
 という答えが返ってきた。その話を聞いてみると、一瞬、納得がいったが、彼を満足させるようなものではなかった。すぐさま、大図書館を辞去し、再びラシード王のものとへ行った。

「申し訳ないが、信頼できるもの・・・・・・・を貸していただきたい」
 クロードの挨拶も抜きに言った言葉に、ラシード王は目を細める。
「気づいたみたいだね」
「ええ」
 まだ本人には伝えていないが、彼は自覚していた。彼女が好きだという事。そして、『セリチアの代々王族は、(男女関係なく)ほぼすべて恋愛結婚なしには上手く・・・成り立っていない』という事を。
 クロードのその答えに満足したのか、ラシード王は鷹揚に頷く。

「ならば、彼女を連れてセリチアへ一度戻るがよい」
 ラシード王の言葉は意表を突くものだった。
「しかし―――――」
 クロードは一瞬躊躇した。さすがに彼女には話していない。それなのに、強引に連れて行くのは不味いだろう。その躊躇を読み取った王は笑う。
「ちなみに、カテリーナは君にぞっこんだったよ。だけれど、君は誰か・・を見ていたらしくて、想いを告げなかったってザミラに漏らしていたらしいよ」
 前回彼女に会った時、確かに自分は他の人・・・のことを考えていたと思い至った。
「で、彼女はどちらに」
 早く彼女に会いたかった。気持ちがはやり、目の前の王とゆっくり話している気分になれなかった。
「今はザミラのところにいる。ここからが早い」
 王は部屋の奥にあった隠し扉を開きながらそう言う。

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