転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

外交王子の探し物Ⅰ

 まばゆい金髪の青年―――――かつては王弟としていた伯爵・・クロード・バスティアはある任務を遂行するため、再び北国ミゼルシア王国を訪れていた。
 すでに王子という立場ではなく、守られる立場にない。そのため供に誰もつけず、単身この国へ乗り込んできた。

「で、何の用なんだい?」
 彼と同じ髪色をもつこの国の王、ラシードはソファに座る愛する妻・・・・の膝枕で寝そべりながら、気怠げに言った。そんなラシード王の様子を見て、少しため息をつきながら、クロードは今回、この国へ来た目的を彼に伝えた。
「『セリチアの探し物』と呼ばれる花を探しているんです」
 クロードの言葉にラシードもザミラも驚きの声を上げる。
「この国でかい?」
「セリチアの方にとっての探し物ですか?」
 二人の疑問にクロードはええ、と答えた。
「まあ、僕も兄――――陛下から聞きましたし、そして、陛下も先王陛下から聞いた話だそうで、本当にその花が今でもここにあるのかどうか怪しいところではありますが」
 クロードは先ほどとは異なるため息をつきながら、そう言う。ラシードとザミラは瞬時に顔を見合わせ頷きあい、再びクロードの方を向いて話しだす。
「一応、君はこの国の留学生・・・という身分はまだ捨てていないはずだ。その身分が使えるところであれば、どこでも探してよい」
 ラシード王の言葉にクロードは拍子抜けした。そんな身分を通常だったら――――少なくともあの兄だったらそんな風に言う事はないだろう。


 クロードは王夫妻の前を辞去すると、高等機関へ向かった。ここは彼が以前『留学生』としてこの国に来た時に通っていた場所で、数か月いただけの場所ではあったものの、ひどく懐かしさを感じさせる場所でもあった。
(たぶん、彼女――――妃殿下がいたおかげだろう)
 今はリーゼベルツの王妃となっている彼女の動向を監視・・するためにミゼルシアへ派遣されたクロードだが、彼女に対して個人的にも好意を持っていたクロードは監視というよりも観察していたのではないかと、自分でも思っている。
 もちろん、自分と同じ時期に来た赤毛の騎士―――――今は一国の王だが――――は気に食わない相手ではあるものの、彼女の視線がかの王に向いてしまっている以上、どうすることもできない。
 そんなことを考えながら歩いていたら、いつの間にか目的の場所まで来ていた。

 『王立大図書館』

 ここはミゼルシア内でも一番の大きさを誇る図書館であり、国内で刊行された書籍がすべて所蔵されている場所だ。
 クロードは植物の図鑑が置いてある場所へ行き、読みやすそうな小さめの目についた数冊手に取った。前に来た時もこの図書館を利用したことはあるが、警備上の都合もあって、全ての作業を司書が行ってしまい、彼がしたことと言えば、この機関に所属しているという身分証を提示するぐらいだった(もっとも、身分証の提示さえも不要だと言われたのだが)。そのため、どのようにこの場所を利用すればいいのかさえ今一つ分かっておらず、本を手にした後、どうすればよいのかと、立ち止まってしまった。


「あ、あの」
 幾ばくか経った頃、クロードは声をかけられた。高身長であった彼は周りに声をかけたと思しき人物がすぐに見当たらず、周囲を彷徨わせると、
「ここです」
 と、少し抗議するような声音で声をかけられた。声がしたあたり―――――彼の真下――――に視線を向けると、一人の少女がいた。彼女は灰色の長い髪をおさげに結っており、絵に見るような美少女とまではいかないが、じっと見ているとスノードロップのような可愛らしさがあった。
「何でしょうか」
 彼は極めて優しく彼女に向かって尋ねた。もちろん、昔―――彼が王子であった頃は、そもそもほとんど自分へ話しかける相手はおらず、今でも昔の名残かセリチア国内では彼に話しかけられるのを待つ人の方が多い。この図書館内でも、いくらかの生徒らしき人物や司書は彼のことを知っているらしく、遠巻きに見ているだけなのであるが、その少女は彼の元の身分を知らないのだろう、直接彼に話しかけたのだ。それに気づいた司書が彼女を今頃引き離そうとしたが、クロードは首を横に振って彼女を引き留めた。
「どうされたのですか」
 再び彼は優しく彼女に問いかけた。すると、彼女は少し顔を赤らめながら、
「あの、そちらの本なんですけれど」
 と言い、口ごもった。クロードは、ああと思い、
「今、花の種類を調べようと思って、読むのに時間がかからなさそうなこの本からと思っていたんですが、何か問題でもありましたか」
 と答えた。すると、彼女は首をふるふると横に振り、
「問題、という訳ではありませんが、その本ではお探しのものが調べられないと思います」
 という。その言葉に、どういう意味だとクロードは問うた。その質問に一瞬彼女は間を置き、背伸びをしてクロードの耳元にささやいた。彼女の答えに、クロードは思わず赤面した。なんでそんなものがあの場所に置いてあったのだろうか。
 様々な恥ずかしさから、彼は何も言わずに彼女へ手にしていた本を渡し、その場を去り、自室へ戻った。

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