転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 翌日の朝議で、アリアが次期王妃として諸国訪問することが発表された。反対意見が出そうかと思われたことであったが、何を企んでいるのか、以前アリアの王妃冊立に反対していた貴族たちも黙り込んでおり、大きな反対意見は出なかった。
 しかし、アリアにも知らされていなかったことだが、次期王妃としての侍女兼護衛兼貴族代表として、アルメル夫人が同行することになった。出立式に母親が婚約者と同行することを、どうやらこちらも初めて聞いたらしいアランがかなり憮然とした表情でいることにアリアは気づいた。




 最初の訪問地――――前回は非常に寒い時期に来たミゼルシアではラシード王に式典の前に謁見することが出来、今までのリーゼベルツの状態を話した。すると、彼は非常に残念そうな顔をした。
『いやぁ、あなたがリーゼベルツ王家の血をひいているからこそ、今回の王朝交代の決め手となったのでしょうが、我がは、本当はあなたを妻に望んでいたのですよ』
 そう言ったのは、女性の恰好をしたザウル―――――本名はザミラ・スヴォニウフ公爵令嬢、ラシードの幼馴染であり、デビュタントしてからは側近として父親の名前を使い、男装までしていたらしい―――はそう笑いながら教えてくれた。ちなみに、ラシード王の妻となるのはザミラであり、彼女に挨拶した時、彼女の正体に全く気づかず、二人にからかわれたアリアだった。
 二人の結婚式に参列したアリアは、大勢に人たちに囲まれた新郎新婦を見て、自分たちもこのように皆に祝福してもらえるのだろうか、と悩んだ。しかし、今更引き貸すことはできない。そう、彼女は思い、今は認められなくてもいずれ認めてもらい、自分もこうやって祝ってもらえる日が来ることを願いながら、と二人への祝福の拍手を送った。



 そして、スルグラン。
 彼の国では、執政の姪の夫となるユリウスも来ており、ずいぶんと久しぶりに彼とゆっくりした。
「やはり、馬術の国と呼ばれるだけありますね」
 ユリウスは羨ましそうに言った。アリアはええ、そうね、と笑いながら、試合会場を見ると、女性の部でレクサ姫が優勝しているのが見えた。それに気づいたアリアは弟をけしかけた。ねえ、ユリウス、と呼びかけ、
「あなたもリーゼベルツの代表として出てみたら?」
 と口に扇をかざしながら言った。その言葉に、一瞬ユリウスは固まり、そばで見ていたメッサーラ執政や軍師ヨセフ、そして、アリアの背後にいるアルメル夫人はニヤリと笑った。一瞬、ユリウスは身じろぎして脱走を図ったが、遅かった。彼は会場に引きずられて行き、審判に名前を呼ばれてしまった。少し恨めしそうな顔でアリアたちの方を見ていたが、いざ試合になると、彼の顔つきは変わった。彼はどうやら、騎士団の中では槍の名手と有名であると、以前聞いたことがあり、彼は本当に優勝するんじゃないかとアリアは思っていた。

「残念だったわね」
 試合が終わった後、正式な客人である二人のために開かれる晩餐会までは時間があったので、アリアは首都の一角にある執政の屋敷を貸してもらって、そこで少し身支度を整えさせてもらうことにした。まだ、メッサーラもヨセフも執務に追われているとのことなので、今はユリウスと二人きりだ。
「ええ。でも、今度開かれたときは再戦を申し込んでやりたいですね」
 彼は男性部門で準優勝だったのだ。優勝したのは執政直属の護衛の一人で、以前アリアも会ったことのある人物だった。しかし、準優勝だったユリウスだったが、レクサ姫はそれでもユリウスに公衆の面前で再度求婚し、張本人はかなり赤くなっていた。



 最後に、スベルニア。
 ユリウスになぜかスベルニア近くの国境まで送ってもらったアリアは再び、アルメル夫人と二人旅を続けた。
「もうすぐ皇都ね」
 南方にそびえたつ活発な火山のふもとに位置するこの国―――――火山による灰が常に降り注ぐ地域が多いため、『灰の国』と呼ばれるスベルニアの皇都付近にいた。リーゼベルツと異なり、皇都に入るためにはかなり厳重な検問が準備されている。その検問の列に並びながら、アリアはその人の多さにも驚いていた。
「ええ、そうですね」
 アルメル夫人はあまり驚いていないようだが、この人込みを知っているのかを尋ねると、
「私の幼い時は家族総出でこの国まで来て、商売をしておりましたから」
 と答えてくれた。アルメル夫人は元々、薬屋を経営するセレネ伯爵の親戚の娘だ。どうやら、少女時代にこの『蓮祭り』を見に来たことがあるという。
 無事に検問を通過し、皇都に入った。すでに皇都で泊まる場所は指定されており、そこへ人込みをかけわきながら向かった。
 宿泊する場所に行くまでの道中で、見つけた銀髪の男を見かけた瞬間、アリアはその男に勢いよく走っていった。男は身分がバレないようにするためか、お付きの服を貸してもらったかしていたみたいで、申し訳ないがその顔には非常にそぐわない服装だった。
「申し訳ありません」
 アリアが声をかけると、そばにいたものが彼女を排除しようとしたが、銀髪の男はそれを制した。彼は無言でアリアをある建物内へと誘導した。アルメルもそれに何も言わずについてきた。


「君は我々の予想をはるかに上回る人材のようだな」
 その銀髪の男――――レゼニア教の最高指導者、ヴァンゲリス宗主はアリアにそう言った。どうやら、アリアを連れてきた場所というのは、レゼニア教第二の聖地であるこのスベルニアにおける彼専用の宿泊場所であり、かなり豪勢な作りになっている。
「それはどうも」
 アリアはその言葉が誉められているのか、貶されているのがわからなかったので、曖昧に答えておいた。ヴァンゲリス宗主はそのようなアリアの態度に怒るわけでもなく、クツクツと笑った。
「まあ、良い。次代のリーゼベルツは良き伴侶を選んだようだな」
 宗主の言葉にアリアはどういう意味か、問うた。宗主はアリアの質問に、

「同じ過ちをいつの時も人は繰り返す。だが、それを止めれるのも、また、人間だ」

 とだけ答えた。しかし、アリアはそれがどのような意味を持つのか、分かった。そして、もし仮に、それが繰り返された場合へのペナルティも、同時に理解した。
「はい、わかりました。繰り返さぬように、最大限努力いたします」
 彼女の言葉に、宗主は満足したように頷く。

 宗主との対談はこれで終了だ。予想よりも早く用事が終わってしまったアリアは、ついでだからと謁見の列に並ぼうと思い、皇城へと向かった。しかし、どうやら『蓮祭り』の時は謁見待ちの列が少なく、すんなりと皇帝の元へ案内された。
 最初は全く気付かなかったみたいだが、アリアが名乗ると皇帝は慌てて彼女を奥へと案内させた。
「お姉さま」
 奥から現れたのは5年ぶりに会う妹、リリスだった。彼女はいい意味で変わっており、かなり体つきもよくなっているような気がした。
「久しぶりね」
 アリアがそういうと、リリスは泣きそうになっていた。どうしたものかとアリアが戸惑ったが、すぐに彼女から答えを聞くことが出来た。どうやら、彼女は皇室の諸事情により、皇太子ではなく、別の皇族へ嫁ぐこととなったらしい。特別皇太子妃、皇妃という地位がいいわけではないのだが、皇太子が成人するまでの5年も待って、このような仕打ちなのか、とリリスは訴えた。確かに、それには同意できる部分があるが、アリアは個人としても、国としてもそれに対して、リーゼベルツ国を通してではないと抗議することはできない。だが、おそらくすでにリーゼベルツへ報告がいっているだろうと思ったので、しばらくおとなしく待つようにと言っておいた。
 その後、アリアはリリスと少しの間積もる話をしたが、流石に今回は正式な客人ではないので、晩餐が開かれる前に退散した。

 そして、アリアは翌日から本格的に始まった『蓮祭り』を見物し、リーゼベルツへ帰国した。

 帰国後、ディートリヒ王とアランに様々なことを報告し、最終的にスベルニアに対して抗議を行うことを決定させた。
 そして、この数か月の間でリーゼベルツ内の状況もかなり落ち着いたという。

 どうやら、これで誰しもが落ち着いて暮らせる世の中になるみたいだ、とアリアは感じて、王宮の中庭から青空を見上げた。

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