転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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『しかし、王太子殿下が王位継承権を辞退されるとなると、いったい誰が』

 全ての視線が国王に集まる。彼らの脳裏には目の前にいる王の数奇な運命にあった。彼の二番目の息子は先の内乱で命を落としている。そして、その妹である王女は先の反乱で、反乱側と通じていたという理由で王籍を外させられている。そういった状況下で、彼の後を継ぐ予定だった最初の息子もこのように毒に侵され、王位継承権を辞退した。誰もが予想していない状況で、困惑していた。
『今回のことは全く予想されていなかったので、普段なら一年ごとに更新されている王家の家系図もまだ更新されていません。ですので、この場にご用意させてもらったのは、昨年の物ですが』
 宰相が全員の目の前に巻物を開けて置く。そこには、初代王から脈々と続く王族の名前、生没年が書かれており、アリアの祖父ジェラルドも載っている。
『とりあえず、これを見る限り、最も王家に近いのはジェラルド様ですが、いかがでしょうか』
 宰相は伺うように見るが、ジェラルドは案の定、首を振る。
『私には政は向かない。何より、あなたは先だっての反乱をお忘れだろうか』
 アリアも祖父の言葉に正しい、と心の中で頷く。
『私やアリアも同じく、女性でありますし、いろいろと問題がありますでしょう』
 祖父に続き、エレノアもまたそう言った。この国では女王も認められているが、数が少ない上に、何より反乱の原因となった事例が多い。それを考えても、アリア、エレノアは不適だろう。サランドア侯爵が最初に、ジェラルドが国王になることを望んだ人間であったが、ジェラルドを筆頭に拒んだため、ジェラルドの家系が王位に就く可能性がなくなった。しかし、呼ばれた3家の当主はそれぞれかなり微妙な顔をした。どうやら、ジェラルドがその手の話を断るとは思っていなかったらしい。
『では、あなた方のうちだれが王位に就かれますか』
 その言葉に3貴族は互いにけん制し合っていた。そのような状況を見て、宰相もいったい誰を任命すればいいのか困り果てていた。クレメンスやセルドアは無表情だったので分からないが、恐らくは彼と同じ気持ちになっているに違いなかった。しかし、アリアもここで好んで王位になど就きたくない。
『では、最もこの中で活躍されている方、というのはいかがでしょう』
 しばらくの沈黙の後、伯爵出でありながら、宰相を勤めているヨハネスはさすがに自分よりも上の貴族たちにかなりの神経を使いながら、そう言った。しかし、その言葉に貴族たちはある一点を見つめた。
(――――――はあ)
 見つめられたアリアは全力で逃げたくなった。
 確かに実績はある。というか、勝手に実績にされてしまっている。しかし、いくら何でも公爵家当主やらと一緒にされたくない。自分たちの方がもっと今までに積み重ねてきただろう、と思ったが、アリアは何も言わなかった。
『お断りします』
 全員が見つめていたので、先手を打つことが出来たと思った。アリアの発言に、3貴族は明らかに落胆し、国王やクリスティアン王子、クレメンスはそりゃそうだろう、といった表情をしていた。しばらく考えていると、それまで黙っていたアランが口を開いた。
『ある意味、アリア・・・にとってみれば断りたい案件だと思うけれど、こういうのはどうかな?』
 その発言に一瞬、アリアは迷った。しかし、その迷いこそがこれ以上のない時間の無駄なのではないかと思い、アランの提案を聞くことにした。アリアが頷くと、アランはにっこり笑い、提案をした。
『僕が王位に就く。そして、アリアが王妃となればいいんじゃないのか』
 その提案に誰しもが、はぁ?という表情をした。しかし、アリアと国王親子、クレメンスとアランの父親であるバルティア公爵はそれを言い出した理由に興味がわき、彼の言葉の続きを待った。
『そうすれば、もし仮にアリアが王位に就くこととなったときのバッシングはないだろうし、『筆頭公爵であるバルティア家の息子』という肩書がすでにあるから、意見を言ってくる奴はいないと思う。だが、それと同時にアリアが国の中枢にいないとやっていけない状況にも陥っているのも確かだ』
 その強気な発言は、意外なことに国王の同意を得た。
『確かに宰相補佐の言うとおりだな。アリア姫がいてこその外交、という部分も多いからな。しかし、何故自らがこの場に就こうと思った』
 国王は挑むようにアランを見た。アランは先ほどと変わらない笑みで国王へも答える。
『俺はあなたの立場に立ってみたいと思った。そうすれば、どれだけこの立場が重いのかを知りたい、そして、この立場の使い道を間違えたくないから』
 アランの野望に王太子までも呆気に取られている。しかし、アリアは彼らしいと思ってしまった。
『そして、何より。すでに俺はアリアと婚約をしている。アリアを誰かにとられるくらいなら、自らがその場をもぎ取りたい』
 しかし、その直後に言われたアランの言葉に、誰しもが赤くなった。もっとも、一番赤くなっていたのはアリアだろう。そんな熱に、冷水を浴びせ掛けるかのようにバルティア公爵がアランに尋ねる。
『バルティア家はアーニャのものになるがいいのか』
 その問いに、アランは頷く。
『ええ、もちろん。アーニャ姉上は確か、ブランデ侯爵の三男殿との婚約真っ最中だったはずなので、バルティア家こちらに来てもらえるような手はずにすればいいのですよ。まあ、最も問題なのはアリーヌ姉上ですが、あの人・・・については、勝手に夢を追い求めて嫁いでいったんでしょう、という事で、すでにバルティア家の相続権は放棄させてありますので、問題ないと思いますよ』
 アランの実父への返答にアリア以外のその場にいた全員、こいつ15歳なんだよね、と思ってしまうくらい実の姉(上の方)への冷酷な指摘だった。

 しかし、国王もその意気込みに深く頷き、全員の了承がとられたところで、話はまとまったのだった。

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