転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 その日はアランと二人で暮らしている屋敷に戻ることはなかった。母とそれから、祖父とこれからの話をしなければならなく、遅くまでスフォルツァ家にいざるを得なかったからだ。本当なら、そこにアランも加わるべきだったが、彼もまた王宮の仕事が手放せないらしく、城へ下ることが出来ないと手紙が来ていたので、仕方がなかった。
 さらに、翌日からは現在の屋敷に移ったものの、話し合いの結果から、しばしばしばらく滞在することとなった母と祖父との打ち合わせ・・・・・のために一日中スフォルツァ家へ戻っており、屋敷へは夜遅くに戻る、という状態になった。また、王宮での仕事が多いアランはほとんど屋敷に帰ることが出来ない状況であったために、二人がまともに話す時間は少なく、会えない日もあった。

 そんな中―――――――
 王宮夜会まで一週間に迫った日。アリアはドレスの採寸の合間に庭を散策していたら、タイミングよくアランがスフォルツァ家を訪ねてきた。
「久しぶりだな」
 アランは少しやつれていた。どうやら、話し合いでの次期国王の決定が大幅に仕事を増やしているみたいだ。アリアはいいえ、と言い、微笑んだ。アランはアリアの手を取り、エスコートしながらゆっくりとしゃべり始めた。
「とりあえず、今後の大まかな日程は決められて、王宮夜会後に開催される最初の貴族議会で次期国王のことは公にするらしい」
 彼が初めに話したのは、今後の流れだった。アリアは内心苦笑をした。
(そんなことはあなたが知っていれば、いいことよ。私は権利も義務も捨てた女ですから、ね)
 そんなアリアの内心にはお構いなしに、アランは続けた。
「その後は、陛下が退位されてから二週間後に新王が即位することとなる」
 アランの言葉にアリアはそう、と言った。
「忙しくなるわね」
「ああ」
 二人ともどこか上の空だった。
「アリア」
 アランが久しぶりに、アリアのことをそう呼んだ。たったそれだけの事であったが、先日、アリアのことを『スフォルツァ公爵令嬢』と呼ばれて以来、『アリア』と呼ばれていなかったので、アリアは嬉しかった。
「たぶん、これから先は二人だけのために時間を取ることはできないだろう。だから、もし可能であるなら、明日、遠駆けをしないか」
 アランの言葉に彼女は迷いなく頷いた。
 その日、アリアは久しぶりにアランと共に食事をした。最近王宮で起こった出来事やこれからの話をしていくうちに、ここにいられるのはあと僅かなのだと、もう一度思った。


 翌日、朝早くにアリアとアランは屋敷を出発した。二人がこうして並んで走るのは先の内乱の時以来だが、こうやって何でもない日に走るのは初めてだった。以前、クロード王子に騙されたような形で遠駆けしたことはあったが、純粋に楽しめたのは今回が初めてだった。
「着いたよ」
 アランがアリアを連れてきたのは、以前クロード王子と来たことがある場所だった。
「ここって――――――」
 アリアが周りを見渡すとそこには、いくつもの家が立ち並ぶ城下町があった。
「ああ、アリアは知っているんだっけ」
 アランが少し落ち込んでいた。どうやら、元々は王立騎士団の一員あり、クロード王子の護衛でもあった彼は、クロード王子がしでかしたこと・・・・・・・を知っていたらしい。
「え、ええ」
 アリアは知らなかった振りでもすればよかったのかと、思ったが、今更だったので、なるべくそこには触れないようにした。しかし、予想に反して、アランはアリアの背後に立ち、背後から彼女を抱いた。アリアは驚き少しもがいたが、アランは全く動じる気配がなかった。
「もうこれ以上、僕はアリアのことを政の道具として巻き込みたくなかったし、アリアも巻き込まれたくなかっただろうけれど、巻き込んでしまったよね」
 彼はかなり落ち込んでいるようだった。しかし、アリアは首を横に振った。
「いいえ。最終的に決めたのは私自身よ。しかも、あなたがあそこで言ってくれなかったら、あの話し合いは永久に拗れていたでしょうね」
 そう言うと、アランの腕の力が弱まった。そのタイミングを見計らい、アリアはその腕をほどき、アランの眼を見据えた。

「私はあの決断が良かったと思っている。むしろ、あなたに謝らなくてはならない。あなたに負担を負わせる結果になってしまった」

 アリアの言葉にアランは無言で首を振った。そして、二人はどちらからともなく、額をくっつけあった。
「ともに、この困難を乗り切りましょう」
「ああ、全くだ」
 二人は目を見合わせ、笑った。

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