転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 王宮夜会のための準備も終えた昼下がり、最近趣味としている乗馬をしようと出かけるための着替えを行っていた。しかし、朝早くから出仕していたはずのアランが館へ戻ってきた。彼は何か危急の用事があったみたいで、部屋を出てすぐのところでアリアを待ち構えていた。
「どうしたの?」
 普段は見ない婚約者の行動にアリアは訝し気に尋ねた。アランはアリアの姿を見ると、ちょうどよかった、と呟き、
「ちょっと王宮まで一緒に来てほしい」
 と言った。アリアはなるほど、と納得はしたものの、何故このタイミングで王宮に呼ばれたのかがわからなかった。しかし、この後は大した用事もないため、素直に応じるしかない、と思ったアリアはおとなしく彼について行くことにした。
 普段は王宮まで馬車で行くものの、ちょうどいい服装だったため、アリアも馬で行くことにした。
「何があったの?」
 アリアは道中、アランに尋ねてみたが、彼の答えはアリアの納得させるものではなかった。
 王宮へ着き、厩舎へ馬を預けた後、アランはアリアを連れて王宮内の王の執務室がある方へ向かった。昔通ったことのある道だな、と思いつつも、今回呼び出された原因がわからないため、非常に歩くのが気まずかった。案の定、彼は王の執務室のところで立ち止まり、扉をノックし、
「陛下、殿下・・。スフォルツァ公爵令嬢をお連れしました」
 と言った。普段は『アリア』と呼ばれているだけに、アランから『スフォルツァ公爵令嬢』と呼ばれるのは、どこか他人のように感じられてしまう。しかし、アリアのそんな感傷は他の誰にも共有はされない。誰も何の感情を抱かなかったかのように、比較的豪勢な扉が内側から静かに開き、アリアとアランは中へ招かれた。アリアは扉の側で立ち止まったが、アランは宰相、内務相がいる方へ向かって行ってしまった。
 室内にはアリアだけではなく、何人かの貴族もまた集められていた。記憶が間違っていなければ、全員王家の血が入っている者ばかりだろう。
 そして、今回は、そもそも王から直接招かれたわけではなく、仮に招かれていたとしても、アリアだけで会ったらうっかり礼を忘れてしまいそうなくらい馴染みの場所だが、今回はそういかなかった。ただでさえ、昨年まで何かと騒がせていた―――――自発的にではないにせよ―――――アリアは、そもそも社交界では一種の異端児でもある。その彼女が挨拶をうっかり忘れたがために、些細なことから果ては婚約のことまで、誹謗中傷の言葉を浴びせそうな貴族がいるかもしれないといこともあり、彼女はひざを折ってきちんと謁見の時の挨拶をし始めた。
「この度は、陛下並びに殿下に謁見させていただくことが出来、誠に――――――」
 しかし、王がその口上を遮った。
「よい」
 アリアは驚いてうっかり中断したまま、顔を上げてしまった。辺りを見回してみると、他の貴族たちも苦笑いをしている。
「ここにいる者たちは其方のことを知っておるし、こいつらもそんな挨拶はしておらん」
 王はため息をつきながらそう言った。そして、扉が閉められ、中にいる人間をもう一度見渡した。国王夫妻とクリスティアン王子とベアトリーチェ、バルティア公爵にモンロー公爵、サランドア侯爵、クルベナ侯爵の各親子、そして、何故か南方送りになっていたはずの祖父のジェラルドと領地に戻っていた母、エレノアがいた。
「全員が揃いましたから始めましょう」
 王とのやり取りを聞いていた宰相が少し呆れ顔をしながらもそう言った。

「今回の夜会を区切りとして、儂は退位する」
 王の切り出した言葉に全員が頷く。しかし、それはすでに公然の秘密とかしたものだろう、とアリアは首をかしげた。それならば何も自分たちを呼ばなくてもよい。ただ、代替わりするのだから、別に王家の血が入っている貴族の承認が必要とかそういう訳ではないはずだ。ほかの当主たちも首をかしげていた。王はその様子を見て満足そうにし、息子である王太子に目配せした。さらに全員の疑問が深まっていた。王太子は一歩前に出ると、アリアたちの方を見て、喋り始めた。
「ちなみに、私もあの事件の後遺症が思ったよりひどく、王としての公務をこなせる自信がありません。よって、残念ながら王位を受け継ぐことはできません」
 王太子の発言に呼ばれた貴族たちはざわついた。アリアもこうなる可能性を予想はしていたが、本当に現実になるとは思っていなかった。
「では、いったい誰が継ぐのですか」
 クルベナ侯爵が尋ねた。誰もがその言葉に頷いた。しかし、さらに王の言葉は皆の予想を上回るものだった。

「それを皆に話しあってもらうためにこの場に呼んだ」

 王は一人ずつ見回しながら言った。
 ちなみに、この中で現王家の血筋をひくものは王族と王妃、ベアトリーチェを除き、内務相とバルティア公爵親子以外の全員だ。よっぽど先々代の血筋の子供が名乗り出てこない限り、後は全て女子であり、どこかへ嫁いだり修道院に入ったりしている。もちろん、流石に娘であってもミスティア王女は、この場に呼ばれることはない。

 そうして、一世一代の大きな話し合いが始まった。

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