転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 ディートリヒ王と宰相で少し草案を話し合ってから各部署の長と話し合うという事で、中途半端な時間が出来たアリアは事件のショックから奥宮で引きこもってしまったベアトリーチェを訪ねた。
 王太子の婚約者である彼女付きの侍女に部屋まで先導してもらい、部屋の外で声をかけると、かなり弱った声が聞こえてきた。

「ごめんなさい」

 アリアが入って二人きりにしてもらった瞬間、ベアトリーチェが謝った。アリアは訳がわからず、その謝罪の意図を尋ねた。すると、ベアトリーチェは涙をにじませながら語り始めた。
「今回の殿下の事件は私の所為なの」
 ベアトリーチェの言葉にアリアはますます訳が分からなかくなった。どういうことなのか具体的に教えてほしいというと、彼女は涙ながらに話し始めた。
「今回は貴女抜きで頑張ってきてほしい、という陛下のご指示・・・・・・もあったから、あなたに頼らずに頑張ろうとしたの。でも、フィリップ陛下の昼食会の時に私失敗してしまったの。
 昼食会では、私は殿下と並んで座っていたの。そしたら、偶々近くに座っていたフィリップ陛下の側近の方――――確かドーモイ公爵って言っていたかしら、とにかくその側近らしい方に、私が殿下に同行したのはセリチアで良縁を見つけるためだって思ったみたいで『是非我が国にもあなたと同じ年代の男性もたくさんいるので、遊びに・・・来てください』って言われたの」
 アリアはベアトリーチェが言った言葉に驚きを隠せず、その側近とやらに腹が立った。恐らくその側近は人の話など聞いていないのだろう。ましてや、リーゼベルツの人間に対しては何らかのこだわりがあるらしい。アリアだったら、多分、堂々と『人の話を聞いていなかったですね』と言ってやっていたに違いない。
「あなたはどう答えたの?」
 アリアの問いかけに、ベアトリーチェは、
「私にはすでに決まっている婚約者がいるので、もし良縁がありそうならば、他をお当たりください、って言ったわ」
 と浮かない顔で言った。アリアはその受け答えに対して、特に問題は感じなかった。ただ、その側近とやらは非常に馬鹿にされたのではないか、と感じるかもしれない。だが、一国の王太子を殺すような真似をする馬鹿ではないだろう。いったい、どんな絡繰りがあるのかわからないが、アリアに言えることはただ一つ。

「ベアトリーチェ」
 アリアの呼びかけに彼女はびくりとなる。顔がまだ青白い。

「あなたはよくやったわ。私でもそう言っていたと思うわ」
 アリアはベアトリーチェを抱いた。今の彼女は誰のぬくもりもない。王太子の実母の王妃も今は憔悴していることだろう。その彼女がいくら未来の嫁といえども、木にかける余裕はないと思われた。だから、アリアは今の状態でなら、彼女を少しの間、抱きしめていても問題ないはずだと思った。アリアが抱きしめていると、徐々にベアトリーチェの震えは収まってきた。しばらくして離したら、アリアに全部ぶちまけることが出来たのであろう、少し顔色もよくなっていた。
 また来る、と言って、アリアはベアトリーチェと別れ、内務相の執務室に向かった。




「はあ?」
 アリアがベアトリーチェと会って話したことをクレメンスに伝えると、クレメンスは案の定、怪訝な顔をした。
「いや、多分アリア姫の推測通りでしょう。僕もフィリップ陛下、クロード殿下は性格はどうであれ・・・・・・・・、信用できると思います。
 アリアは本当に推論の域を出なかったので、誰にも言うつもりはなかったが、真犯人をあぶりだすために二人に伝えることにした。
 ベアトリーチェの言葉を信じる限り、多分、今回の毒殺未遂事件の黒幕は限りなくクロード殿下に近い貴族。しかも、それを隠しているのか隠しきれていると思ってフィリップ王に近づいている。
 二人はしばらく、アリアの言葉を吟味していたが、最終的にアリアの言葉を信じてくれることにしたらしい。
「分かった。一回陛下に奏上しよう」
 セルドアもクレメンスも頷きあって、立ち上がった。アリアは深々と頭を下げた。
「よろしくお願いします」

 しかし、三人がディートリヒ王に奏上しようと思って王の執務室に向かったところ、思いがけない人物が王宮を訪ねてきていた。
「あなたは―――――――」
 その人物はこちらを見て、にっこりした。
「いやぁ、この国に来ると、なぜか毎回スフォルツァ嬢に会えるなんて、やっぱり運命を感じないかい?」
 アリアは渦中のその人物に対して、4度目の断りを入れた。
「いいえ、全く」
 アリアのにべもない断りに、ディートリヒ王をはじめとしてリーゼベルツの面々は苦笑いをこぼしている。
「で、あなたは我が国の王族暗殺未遂事件の真犯人でもひっ捕らえたからこうやってノコノコと来ているんですか?」
 まばゆいまでの金髪は相変わらず目には毒だと思いながら、アリアは目の前の隣国の王弟・・・・・に尋ねた。
「相変わらず手厳しいね」
 クロード王子まで苦笑いしだした。

「残念ながら、俺の王位継承を望む連中だったさ。兄上にはリーゼベルツの血が混ざっているからどうだかこうだか、って前から煩かったんだよね」
 彼は涼しげに言う。どうやら、彼はちょうど王や宰相にも報告するところだったみたいで、二人でさえ唖然としていた。

「で、まあついでだし、連中を捕縛すると同時に俺は王位継承権を返上してきた」
 クロード王子―――いや、彼の言葉を取るなら、元王子、か―――は事も無げに言う。しかし、同じ王政をとるリーゼベルツの面々はそれの難しさに、戸惑った。しかし、クロード王子は笑って付け加えた。
「もう、新しい奥さん来るし、心配ないさ」
 アリアは納得いった。確かスベルニアの皇族に連なる姫がセリチアに嫁ぐ予定だったのではないか。

 結局、セリチアにおける事案はリーゼベルツがセリチアに干渉する、という事はなくなり、王太子であるクリスティアン王子の復帰まで、しばらくはこの国の立て直しに勤しむことになった。

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