転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「おかえり」
 マグナムもエレノアもその日は領都の屋敷におり、二人には簡潔に話をした。
「そうだったの――――」
 二人ともダリウス王子が薨去したことについて、特にマグナムはとても残念がっていた。
(確かに、仲のいい兄弟でもあったから、『次代は兄弟仲良く治められるよね』とか言われていたわね)
 アリアの侍女時代の話ではあったものの、そういう話がちらほらと出入りの商人からもよく聞いていた。一通り話をしたらすでに日は落ちていた。夕食後、アリアは自室に戻ろうとしたが、母親に引き留められた。
「何でしょうか」
 アリアは自室ではなく母親の部屋へ連れていかれた。母親の部屋はおそらく初めて入るであろうが、シックな雰囲気をもつアリアの部屋と違って意外にもメルヘンな雰囲気の部屋であった。ベッドの端に座りなさい、と言われたのでおとなしく座った。
 エレノアは部屋着に着替えた後、アリアに尋ねた。
「ねえ、アリア。何かつらいことでもあった?」
 母親の指摘にアリアは一瞬、先日の件を話そうか話すべきではないか迷ったが、話さない方を取った。
「いいえ、何にもありません」
 アリアは微笑みながら言ったが、エレノアはため息をつき、アリアの方を見た。
「そうですか。あなたは昔からかなり頑固なところが多く、いつぞやまでは私でさえ手が付けられませんでした」
 アリアはその言葉に少し恥ずかしくなった。確かにイロイロとあったおかげで今の自分がいるわけなのだが、改めて指摘されるとなかなかつらいものだ。しかし、エレノアの言葉はこれだけではなかった。
「ですが、今のあなたは少々頑張りすぎだと思います。あなたには継承権をはく奪させてしまったのに、いまだに大きな責務をあなたは負っています。旦那様も同じ思いでいらっしゃいますが、私たちはこれ以上、あなた自身が傷つくところ見たいがため過ごしているわけではありません」
 アリアはその言葉にはっとなった。まさか、二人がそんなことを想ってくれていたなんて。エレノアはアリアの隣に来ると、彼女を抱き寄せた。
「だから、もし王都で何かつらいことがあったのならば、こちらにすぐにでもいらっしゃい」
 エレノアの言葉にアリアは今までの思いが全てはじけ飛んだ。彼女は静かに涙を流した。真実がわからない以上、アランとの婚約はどうなるかはわからない。だから、今は二人にそのことを言う事は出来ない。だが、この数日感じた想いをここで涙を流すことによって、洗い流せるような気がした。母親は彼女が泣き止むまでずっと抱きしめ続けてくれた。


 翌朝、アリアは朝食を摂った後、王宮へ戻った。
 クレメンスの執務室へいつものように行こうとすると、途中で首根っこを捕まえられ、誰かに引きずられた。
「ちょ、何するんですか――――」
 アリアは思い切り大声を上げ、ジタバタともがいた。すると、アリアをつかんでいた人間は彼女を離した。捕まえた人物を見ると、それはかなり意外にも力のないと思うようなバルティア公爵だった。
「すまない。だが、陛下たちより君を連れてくるようにと言われていたもので」
 彼はシレっと言いのけた。
「だからって、愛玩動物のようなあんな捕まえ方しなくてもよろしいでしょう」
 アリアはバルティア公爵の考え方に反発した。自分は決して愛玩動物ではない。しかし、こんな人間が好きになった人間の父親であり、公爵家当主であって大丈夫なのか、と思ったら、それが伝わったのか、非常にばつが悪そうな顔をした。
「すまなかった」
 頭は下げなかったものの、素直に謝った。そして、申し訳ないと言って、アリアの首元を覗き見た。予想していなかった事なので、アリアは驚いて飛びのいてしまった。
「ああ、これはまたすまない」
 バルティア公爵は目を伏せた。さすがに自分がした行為について、理解できたのだろう。しかし、二人が問答?を繰り返していると、いやがおうにも目立つ。遠くから二人を呼ぶ声が聞こえた。
「うわぁ。クレメンス君が怒っているよ――――」
 一応公爵筆頭という身分のはずだが、流石に『王の実務右腕』ともいわれる内務相クレメンスには勝てないらしい。
 二人並んでとぼとぼと声のした方に向いて歩いて行った。

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