転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「はっきりとしたことは言えませんが、恐らくはバルティア家の方でしょう」
 セルドアに言った時の口調とは打って変わって、至極真面目な声で王に言うクレメンスだった。
「なるほど、な」
 王はかなり後悔しているようだった。しかし、
「だが、これが貴族の務めというもの。自由に恋愛が出来ないのは致し方ないと思うが」
 とも言う。だが、一応貴族であるが、中流の冴えない伯爵家当主であるクレメンス、そもそも平民出身であるセルドアには全く縁のない話であり、二人は身近にそういった知り合いを何人か知るものの、自分には全くかかわりがないため、どこか他人事でもあった。
「まあ、どこまで彼らが進んでいるのかは分からないが、ここは見守るしかないと思いますね」
 クレメンスは重く言った。クレメンスは何人かの貴族子女を見ているが、ここまで長い付き合いになったのは彼女が初めてだ。そして、彼女と会ったのはあのデビュタントの時。その時は少女であった彼女は、今ではこの国には欠かせない鍵ともなっている。今この部屋から彼女が泣いて出て行ったとおり、彼女自身で折り合いをつけない限り、彼女自身の感情と公爵令嬢としての役割、どちらを果たすことは不可能なのだ。しかし、こうとも思う。
「もし仮に、彼女が政略結婚でどこかの貴族に嫁いだとして、果たして幸せになると思いますか」
 クレメンスはその問いを二人にしたが、彼らは曖昧な返答をした。それが彼女についてはそのままが答えとなるであろう、と言った。
「あくまでも僕個人の意見ですが、彼女だったらたぶん今以上に活躍することはないでしょうね」
 クレメンスの続きの発言に、王もセルドアも一瞬凍り付いた。
「もちろん、本当に彼女がきっぱりと諦めてそこへ嫁ぐというのならば別ですが、たぶん彼女には不可能でしょう」
「それは―――――――――」
 セルドアが続けて何かを言おうとしたが、クレメンスは一瞥して黙らせた。
「彼女は我々には知らない何か・・を持っている。だが、それを共有できる相手はアラン・バルティアを置いては他にはいないだろう。僕はそう読んでいる」
 クレメンスはきっぱりと言った。7年前から見てきた彼女は時々何かを考えるようにしており、母親のエレノアでさえ完全に心を開いていないだろう。それは、はっきりとしないもやもやとしたことだが、彼には確信して言えることがある。それが先ほどの発言だ。アラン・バルティアこそが彼女の心の鍵を開く何かを持っていると。
「しかし、しばらくは一人にしておいたほうがよさそうだと思いますよ」
 クレメンスはぼやいた。彼自身の補佐でもあるのだから仕方のないことだとは思うが、どこか、アリアの兄のようにを心配する響きを持っていた。


 一方、アリアは――――――
(ダメね――――――)
 思い切り・・・・奥宮に与えられた控室で引きこもっていた。
 奥宮には現在、王妃以外にはアリアの知っている者はいなかった。すでに王籍をはく奪されたミスティア王女もディート伯領に向かい、ベアトリーチェはそもそも王太子の婚約者としてセリチアへ旅立ったし、昔仲の良かったアーニャもセリチアへの使節の一員として向かっている。それに加えて、ほとんどの同期で侍女仲間はすでに退職して結婚している者が多い。
(結婚かぁ――――――)
 『結婚』と聞くと、また思い出してしまう。前世においては『結婚』と言えば原則恋愛結婚だったが、『涼音』の場合は一応小規模ながらも社長令嬢という事で、ゆくゆくは政略結婚――――とはいかないまでも、出来るだけ親の意向には沿わざるを得なかった。もちろん、高校生だった『涼音』は『結婚話』の『け』の字も出ていない年齢だったが、高校卒業と同時に見合いをする算段だったはずだ。
 政治的な陰謀に巻き込まれての事故死した『涼音』は、ある意味地獄を見ずに済んだのかもしれない、と今更ながらそう思った。
(でも、もう一度だけでもから会いたい―――――――)
 アリアはきちんと最後に向き合わなかったことを後悔していた。
「うん。決めた――――」
 アリアはあることを決めて、国王に謁見の申し出をするために部屋を出た。






 そして、翌日の午後――――
「帰ってまいりました」
 アリアは結果報告ついでに、という事でスフォルツァ領へ戻っていた。

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