転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

12

12
「『引換条件』とは『陛下の退位』という事ですか?」
 宰相が控え目に尋ねた。王は頷き、
「その通りだ。反乱軍側の貴族たちも最後の最後までウィリアムの思惑に気づかなかった。だから、簡単に乗せられ、反乱を起こした。それに、こちら側もどんな目的を反乱軍が持っているのか、という事を最後まで気づけず、手をこまねき、誰一人として出兵しなかった。そこを突くだけでもよかったが、こちら側の貴族に対してはついで・・・だから根回しも済ますつもりで、あえて伝達しておいた」
 その発言に4人とも呆れていた。
「ついでって陛下は、何故今の段階で?」
 クレメンスは尋ねた。確かにアリアも、根回しをするのならこんなバタバタとした時期ではなく、もう少し落ち着いてから行う方が得策ではないかと思った。すると、ディートリヒ王はあるものを机の引き出しから出し、全員の目の前に置いた。全員の頭の上に疑問符が浮かんだことは間違いなかった。宰相やクレメンスでさえその書簡について知らされていなかったのだ。
「これは、セリチアからの王族、いえクロード王子殿下からの親書ですよね?」
 その手紙をアリアは見たことがある。数年前にクロード王子が送ってきた手紙と同様のものだ。アリアの言葉を聞いた4人は、アリアがそれを知っていることに驚いた。
「そうだが、何故スフォルツァ嬢がこの手紙の差出人を知っているのか?」
 宰相がアリアに尋ねた。彼はアリアとクロード王子の関係を知らないらしい。
「数年前の夜会で強制的に文通仲間として認定してきたクロード王子から送られてくる封書と同じ紋章の透かしが入っておりますし、そもそも同じ材質の封書が使われています。それに、それが殿下自身、私的な紋章だと仰っていたので、てっきり私用の封書かと思ったのです」
 アリアは転生していることがわかって間もなく学んだ周辺諸国の特徴の一つに、セリチアでは私的な紋章を持つという事を聞いたことがあり、前世における日本の皇室と同じような制度を持つんだな、と思ったことがある。ちなみに、現国王はストレリチア、兄のフィリップ王子は日日草、クロード王子はプリムラという花が紋章として存在しており、国王と王太子位についている者はその紋章にオリーブに似た草の縁取りをするはずだ。
「なるほど、あの王子らしいな」
 国王が納得したように言う。
「へっ?」
 その言葉にアリアは思わず気の抜けた声を出してしまった。
「この紋章が透かしに入っている封書は、『最速に配達し、かつ内容も検閲してはならない』という決まりがある」
 ディートリヒ王の言葉にアリアは唖然とした。それは明らかに超重要書簡を私的に流用していたことになる。
(明らかに権力の無駄遣いね)
 アリアは現実逃避を思いきりしたくなった。他の人はすでに、アリアがクロード王子から個人宛に届いた書簡と同じのものだと言った瞬間から、思いっ切り現実逃避をしているような気がした。
「えっと、今度私が彼と会ったときに、彼の目の前で破り捨てるのは不味いでしょね?」
 アリアはその封書がある意味、不幸の手紙だという事に気づいた。
「――――――――難しいだろうな」
 ディートリヒ王もアリアの思考を読み取ったらしい。『難しい』と言いながらも、一応目は笑っている。現実逃避から戻ってきたクレメンスが、アリアとディートリヒ王の間に割って入る。
「で、その権力を私的に流用している王子からの用件は?」
 彼の方は、確実に目は笑っていない。
「ああ、すまない。クロード王子からの書簡の内容はこれだ」
 と、封書の中の便箋を取り出した。これもまた、アリアには見覚えがあるものだった。それを全員が読み終わると、誰しもが無言になった。ざっくりとした手紙の内容としては、
『父であるセリチア第38代国王ギヨームが死去した。よって、周辺諸国の元首を葬儀に招待させていただく。また、それに伴って新国王として兄のフィリップが即位するから、ついでに戴冠式もぜひ参加してほしい』
 というものだった。
「面倒ですね」
「全くだ」
 セルドア、クレメンスの2人が口々に言う。実際にはアリアも思ったし、宰相も同じこと思ったみたいなので、ここにいる四人とも同罪だろう。
「で、誰を参加させますか?」
 クレメンスはにこやかに王に問うた。王は当然とばかりに頷き、
「もちろん、次期国王としてクリスティアンを向かわす」
 と言った。さすがに隣国がそのようなこちらもホイホイ行事を作るわけにはいかなかったようだ。そのために、根回しを先にしておくつもりだったみたいだ。
「では、その同伴としてセレネ伯爵令嬢を?」
 セルドアは少し不安そうに尋ねた。まだ、ベアトリーチェは正式に婚約してから日は長いものの、あまり国際的な行事に参加していない。一応この世界ではほとんどの作法は共通しているので、ほとんどの作法については大して問題ないと思うが、諸国の貴族については疎いだろう。なので、きちんと受け答えが出来るのかは今からに掛かるだろう。さらに、反対から見た時、すなわち国外の貴族からしてみれば、『この令嬢の名前聞いたことないけれど、王太子の隣にいるくらいだから、婚約者かそれに準ずる立場なのだろう』という程度の認識でしかないだろう。下手をすれば、なんで『アリア・スフォルツァ』が王太子の婚約者ではないのだろう、という声も上がってくるのではないかとアリアは想像できた。
「ああ。この際だからついでに・・・・共に初めての外遊として、セリチアに出向かせる」
 とディートリヒ王は言った。どうやら、婚約者であるベアトリーチェもこのままうまくいけば王妃になる。未来の王妃の行動はリーゼベルツの評価にも関わる。なので、今のうちからしっかり評価を積み立てて置けよ、というのが国王の意思らしい。アリアもそれには賛同でき、婚約者であるクリスティアンはベアトリーチェをしっかりと『国の顔』として制御・・出来るのかが問われる。もっとも、彼自身が問題行動を起こしていたら論外なのだが。恐らく彼に限ってはありえないだろう。

「転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く