転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

11

11
 以前、アリアが傍聴した元宰相の裁判やアリア自身が被告人として出廷した裁判においては、比較的小ぢんまりとした議場で行った。しかし、今回はその時以上の人数の貴族を裁かねばならなく、その上、裁判を傍聴したいという人が多かったため、玉座の間に臨時の議場を作り、そこで裁判を行うこととなった。
 アリアは『内務相補佐』という身分を臨時的に得た。親国王派の代表格であるとされているアリアを裁く側に組み込みたいという国王からの思惑もあったし、アリア自身も今回の裁判には何らかの形でかかわり、身内叔母への引導を自分で渡したいという思いもあったので、もし王から言われなければ、何らかの脅迫エサを持って行ってお願いしたことだった。
 裁判はかなりサクサクと進んだ。すでに王立騎士やソフィア夫人によってこってりと絞られている被告たちはかなりぐったりとしており、反論も全く出てこなかった。アリアもあの叔母が反論せずに黙っていることはないと思っていたのでこの席にいたのだが、どうやらそれは必要ないことだったらしい、と思ったその時だった。

「なんで私だけなのよ」

 突然ヒステリックな声を上げたのは被告人の一人であり、今回の主犯とされているフレデリカ。彼女の血走った眼はアリアの方に向けられていた。
「他のみんなは家族や親戚一同被告席こちら側にいるのに、なんであなたはこちらに来ないの、ねえ?」
 アリアは思わずその言葉に吸い込まれそうになった。しかし、後ろに控えていたアランとセルドアが強く引き留めてくれたおかげで、彼女の方に行くことはなかった。
「私だけってあなたは何とも思わないの?はあなたをずいぶんと可愛がってあげたじゃない?」
 フレデリカは猫なで声を出した。その時にはアリアは完全に冷え切っており、その声に対しても何も思うところはなかった。
「ねえ、黙っていないで、なんか言ったらどうなのよ、この偽善者・・・が!」
 フレデリカの一言にとうとう騎士たちがキレそうになっており、中には剣を抜こうとしている者までいる。

「ええ、あなたが言っている通り、私は偽善者なのかもしれませんね」
 アリアには考える時間は残されていなかったが、それでもかなり言葉を慎重に選んだ。公爵家の人間としての誇り、そして、臨時雇用であるとはいえども国王の側近としての役目を忘れてはいけない。アリアの言葉にフレデリカは一瞬勝ち誇った眼を向けたが、その後に続けた言葉に凍り付いた。
「あなたとは決定的に違うのが二つ。あなたは自らの意思で動こうとしなかったこと、それに、持っている権力を自らのために行使しなかったことです」
 アリアは別に諭そうとか説き伏せるためにやっているわけではないので、本当の善人や宗教家から見たら偽善と言われても仕方ないだろう。しかし、それをしたからといって、別に罪が重くなるわけでもないし、ましてや彼女がしてきたことに対しての償いにもならないだろう。もっとも、彼女がそれを素直に受け入れるとは思っていないのだが。
「あなたは確か先々代の公爵の命令により王宮へ上がったはずです。そこから先は何をなさりましたか。ただ、媚を売って王女殿下をお産みになり、そこからは貴族たちの甘い汁を吸っていたのはあなたではありませんか。私はまあ、あなたに一時期懐きましたが、あなたのようではあってはならないことを思い出した・・・・・おかげで、こうして多少強引なお願いをされることもありますが、私自身の意思で動いてきました」
 アリアは一応ごまかしておいた。もちろん、本当のことを言ったところでアラン以外の誰も信じてくれないだろうが。
「後者についても同じです。あなたが行使したのがあなた自身のためとあなたを取り巻く貴族に対してだけです。あなた自身がお産みになったミスティア王女殿下さえご自身のことはあなたに何もされていなかったというのに。それをいまさら母親面して王位のことまで手を出す。どれだけスフォルツァの家の名前に泥を塗るおつもりですか」
 アリアは啖呵を切った。一応、スフォルツァ家の継承権は持っていないが、まだ一員ではある。その証拠に、他の貴族たち――――特にアリア自身が被告人となったあの裁判を見た者たちは非常に白い目で見てきたが、国王は何も咎めなかった。後ろにいるセルドアも何故か小さく拍手していた。
「ですから、私があなたにあなたたちの場所まで下りていく義理もありませんし、その必要性もありません」

 アリアの一喝後、フレデリカはおとなしくなった。
 そして、最後に全員の処罰が言い渡された。



「う、すみません」
 アリアは裁判が終わった後、国王の執務室に呼ばれていた。そこには宰相、内務相、軍務相がそろっており、宰相と内務相からお小言を食らっていた。
「全くだ。あなたがあんな啖呵を切るなんて思っていなかった」
 クレメンスは呆れたように言った。
「しかも、一応聞きようによっては不敬罪にもあたるぞ」
 アリアも言ってしまった後に気づいていた。これも不敬罪に当たるのかなぁ、なんていうことを考えながら最高級の革張りのソファにもたれかかり、最高級の布地でできたクッションに顔を埋めていた。しかし、ディートリヒ王は笑う。
「いや、あれは儂には言えぬからな」
 そう言って紅茶を飲む。
「まあ、そうでしょうね」
 宰相は少しため息をつきながら言う。
「ええ、今回の主犯でもあるフレデリカ・スフォルツァは極刑、ミスティア王女殿下は王籍はく奪の上、王都から少し遠いディート伯領での謹慎生活、すでに戦地で命を落としているウィリアム・ギガンティアについては咎めなし、という事でよく落ち着かせましたね」
 そう。今回の決着は一筋縄ではいかなかった。なぜなら主犯であるはずのウィリアムがすでに戦地で命を落としているからだ。彼の証言さえあれば、ミスティア王女の処分はもっと軽くできたはずだし、彼らの動きについてももっと解明されたこともあっただろう。ちなみに、未だにダリウス王子暗殺事件についても真犯人である彼のおつきの侍女は黙っているという。
「ああ、少し悶着はあったが、引換条件を出したら、おとなしくなった」
 ディートリヒ王の一言に全員が黙り込んだ。その『引換条件』に付いてなんとなく心当たりがあったからだ。

「転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く