転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 前触れなく王都に戻った一行は元宰相一派の一員でもあり、国王本人やバルティア公爵をはじめとする親国王派の貴族を監禁していた貴族たちを次々と捕縛していった。
 その後、捕らえた元宰相一派の貴族たちを担当の騎士と役人に引き渡したアリアたちは国王に謁見していた。そこには現宰相や内務相、バルティア公爵も同席しており、バルティア公爵夫人アルメルもなぜかその謁見の場にいた。国王はやはりダリウス王子が早逝したことにより、一気に老けたように感じられた。
「まずは此度の内乱を治めてくれて感謝する」
 ディートリヒ王は頭を下げた。アリアたちも軽く会釈する。
「して、其方たちには甚大なる無理を言ったと思っている。申し訳なかった」
 再び彼が頭を下げたが、今回はアリアたちの大半は頭を下げなかった。
「で。本題だが、今回の処分については公開裁判で判決は行う。しかし、いくつか証拠が不十分なところもあり、現在、法務の文官をはじめとした特別隊が取り調べをすでに開始している」
 ディートリヒ王は非常に難しい顔をした。その続きをクレメンスが言った。
「とりあえず、馬鹿貴族どもは武官の間で流行っているらしい『地獄の取引悪魔のささやき』でもしておけば、根性はないだろうから勝手に吐いてくれると思っているが、女性であるフレデリカ・スフォルツァやミスティア王女殿下にさすがにそれ・・をするわけにはいかない。で、どうしようか考えあぐねているところだ」
 彼の言葉に武官であるセルドアやユリウス、アランは非常に微妙な顔をしている。宰相とバルティア公爵、そしてなぜか女性であるはずのアルメル夫人は全く動じていない。アリアだけが首を傾げてじっと見つめたので、クレメンスが渋々それを説明しようとすると、
「止めなさい」
「姉上に変なこと吹き込まないでください」
「駄目ですよ」
 と三人ほどから静止がかかった。しかし、一人だけ、
「それ、私が言おうか?」
 とにやにや笑っている人もいた。
 しかし、先に静止した三人から悲鳴なようなものが聞こえ、
「絶対にあなたも言うのはやめてください」
 と懇願され、とうとうアリアが『地獄の取引悪魔のささやき』なるものの内容を知ることはなかった。

「王女殿下はまあ、巻き込まれたにしろ、あのフレデリカっていう女は使っちゃっていいんじゃないの?」
 アルメルが物騒なことを言い出した。
「流石にそれは、僕らでは出来かねますよ」
 クレメンスは慌てて言いつのるが、アルメルはにっこりと笑う。その微笑みに何故か、バルティア公爵を含めたアリアを除く・・・・・全員が冷や汗を感じた。

「私がヤりますわ」

 彼女が言った言葉に一瞬間が空いた。しかも、誰しもが遠い目になりつつある。どういうことかわからなかったアリアが何気なく、
「アルメル夫人がお出来になられるならそれでも良いのではないではありませんか?」
 と言うと、完全に全員の魂魄が抜け落ちたような状態になった。いち早く戻ってきたのはバルティア公爵だった。
「いや、だがな、君が出て行って問題ないのかい?」
 しかも、彼は何故か彼女を認める方向性に持ってきていた。それにより、何故か全員の魂魄が元に戻ってきた。
「ええ、あの女には私もさんざん辛酸を舐めさせられましたから」
 アルメル夫人の背後には見えない炎が存在するようで、今度はアリアが一歩引いてしまった。
「まあ、今の一族5人を否定するわけではありませんが、スフォルツァ家には散々舐められた真似をされまして、非常に腸が煮えくり返っているのですよ」
 それを聞いたアリアとユリウスはこの場が正式な場でなければ、土下座したことだろうと思ってしまい、互いに目を合わせ頷いた。
「あの、申し訳ありませんが、スフォルツァ家うちがどんなことをしたのか、今度書き連ねて送っていただけませんでしょうか?」
 ユリウスが恐る恐る言う。その言葉にアルメル夫人が笑う。
「ふふ。構わなくてよ。覚悟していらっしゃい」
 と言ったが、目が笑っているので、とりあえずは問題ないだろう、と少しだけ胸をなでおろした。
「本題に戻すが、アルメル夫人はできるのか?」
 ディートリヒ王は尋ねた。すると、彼女は寸暇を置かず、
「ええ、出来ますわね」
 と断言した。

 そうして数日経ち、正式に反乱の終息と第二王子の薨去が発表され、反乱の首謀者たちの裁判が行われることになった。
「では、今からザナラシア戦役における首謀者3名・・をはじめとする戦犯の公開裁判を始める」
 国王の宣言により、全員の注目が中央へと集まる。
 まだ幼くデビュタントさえ済ませていない王女、かつては愛人として王宮に君臨していたものの、今では全くその影さえ見ない女、そして、自身への利益もしくは誰かへの義理立てへのために今回の大規模な混乱に陥れ、そして、この国の王子や自身の軍師を犠牲にした貴族たち。
 それを裁くのは、今回の内乱の元凶ともいえるが、今回新たに臨時で雇った内務相補佐のおかげで持ちこたえている国王、そして女の身内でありながら、女だてらに数々の功績を残している若き内務相補佐・・・・・、そして、国王に付き従っている貴族たち。

 全ての終わりと始まりの裁判が始まった。

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