転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 アリアが目を覚ました時刻はもうすでに夕食の時間に近づいており、アリアたちは領館近くの食堂を貸し切ってささやかな祝杯を挙げた。

 翌朝早くに領都内の商人が館へやってきた。商人はアリアたちが全員そろっている状況で、非常におびえた様子を見せていた。
「どうしたのですか」
 セルドアが商人に尋ねた。その商人は、
「さる方が我が商人組合の家に匿われまして、その方をここへお連れしたほうがよいのかどうか話しておりましたが――――――」
 とかなり動揺しているせいなのか、話が覚束ない。しびれを切らしたのは、意外にもユリウスだ。
「その人物の名前は?」
 ユリウスが少しイラついていたらしく大声で尋ねると、商人はびくりと肩を震わせ、
「名前はわ、分かりませんが、あ、あの特徴が」
 と言った。
(特徴?)
 その場にいる誰もが驚いていた。
「どんな特徴ですか?」
 ユリウスに代わり、セルドアが優しく尋ねた。すると、商人は少し落ち着いたように、
「その、お顔立ちがひ、非常にへ、陛下に似ているのです」
 と答えた。その答えに全員が顔を見合わせる。まさか、行方知らずとなっているクリスティアン王子の事ではないかと誰もが思ったのだ。
「その陛下とは誰ですか?」
 念のために警戒を怠らずに、セルドアが別の質問をした。
「もちろん、ディートリヒ陛下でございます。ああ、一応私は王宮へ物品を納入することができる資格を持っており、身分証がこちらに」
 と言って、バッジみたいなものをセルドアに渡す。彼は本物を見たことがあるのだろう、それをじっくり見て、
「確かに本物ですね」
 と言って、商人に返す。
「ならば、一応信用はしてもいいでしょう。では、彼がいる場所に案内してください」
 セルドアは幾分声を柔らかくし、そう言った。
「あなたたちは待っていてください。それと、数人のバルティア家の騎士を借りますね」
 セルドアは商人にも聞こえるような声でそう言った。アランもアリア、ユリウスも頷いた。

 彼らが外出してからしばらくたったころだった。非常に外が騒がしくなり、アリアたちが窓から外を見てみると、セルドアたちが帰ってきていた。
 どうやらクリスティアン王子は他の騎士と共にいたみたいで、何人か引き連れている。
「ご無事で何よりです」
 彼が館に入ってきたところでアリアたちも彼を出迎えていた。
「ああ、ありがとう」
 彼らは全員大怪我を負っていないが、恐らく細かい傷は多く負っていることだろうと思えた。少し疲れた様子でクリスティアン王子は応える。どう続ければいいのかわからなくて困っていると、
「さあ、お湯の準備は出来ているし、全員湯浴みなさいな」
 と背後から威勢のいい声がした。その声にアランがげっと呻いた。その赤毛の声の持ち主、アルメルはなぜか背後に数人の夫人を率いている。アリアもその光景に一瞬鳥肌が立った。

「いやぁ、災難だった」
 クリスティアン王子たちの湯浴みが終わると、彼らからも話を聞いた。
「どういうことです」
 全員とも全く訳が分からないという顔をした。
 しかし、話を聞くと、起こった事象・・というものは少し想像の斜め上を行っており、そちらの意味で驚いた。

「まさか熊と戦うと思わなかったんだよ」

 クリスティアン王子の一言に、アリアたちは固まり、王子側の騎士はうんうんと頷いている。
「えっと、熊って、大きいあの有害獣の事ですよね」
 いち早く元に戻ったセルドアが尋ねる。
「ああ。お前も経験したことがあるんだっけ?」
 クリスティアン王子がそういえば、というようにセルドアに聞く。彼は少し嫌そうな顔をしたのだが、ええ、と肯定した。
「なるほど。で、その軽装かつかなり武器がない状況で戦ってきた、という事ですか」
「ああ」
 王子の答えにセルドアはため息をついた。
「確かにそれはかなりの激しい戦闘・・でしたね」

 それからしばらく王子側の笑い話を聞き、こちらの非常に深刻な話はお預けとなった。

 そしてその日の午後、一行は捕虜含めて全員が王都への帰途についた。

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