転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「全部?」
「この反乱自体が彼の仕組んだことだったのですか?」
 アリアは頷き、今までのウィリアムと反乱軍、そして国王側の動きについて、推論を述べる。
「ええ。もちろん、彼にも実際にお誘い・・・はあったのでしょう。でも、彼はそれを利用しようとしたのよ」
 アリアの言葉に誰しもが驚いている。しかし、誰からも止める声は聞こえてこなかった。
「彼は、ウィリアム・ギガンティアはディート伯のお気に入りっこだからね」
「お気に入りっこ?」
 クレメンスとの本当の関係はわからなかったが、恐らくはあっているはずだ。
「はい。ディート伯は内務相であり、ウィリアムは法務の人間でしたが、多分フェティダ公が捕縛されたときからつながっていたのではないのかと思います」
 アリアの推論はこうだ。
 多分、クレメンスとウィリアムはフェティダ事件(アリアの勝手な呼び名)時に何らかの事情で結託した。その時以降、二人はしきりに情報交換を行い、ディートリヒ王がセリチアへ追われたときも、クレメンスは王宮内に残り、ウィリアムを国王の元へ派遣したのだ。そして、今回の事件はおそらく元宰相一派が何らかの動きをしていること―――――例えば、フレデリカと接触し、王位簒奪を狙っているとか―――――を察知したのだろう。なので、クレメンスは元宰相一派とみられているウィリアムをその地へ派遣し、事の真偽を確かめようとした。しかし、ウィリアムの方が一枚上手で、クレメンスからお願いされた事の真偽を確かめるだけではなく、彼らに下ったように見せかけ、『反乱軍の軍師』という地位を勝ち取り、自らを囮に使ったのだ。
 そうすれば辻褄があってくる。ミスティア王女の南方へ行く計画も恐らくはクレメンスからもたらされたものだろう。その道中で彼女を浚い、この国のためだと言って反乱軍側に引き入れる。たぶん、ウィリアムに説得されたのであろう。ほかの連中、特に母親であるフレデリカのいう事は聞かなかっただろう。
 そんな大逆を犯したウィリアムは、どこまでやって良いことかは彼自身で判断していただろう。だから、国王から派遣された軍を多少痛い目・・・に合わせはしたが、彼自身は壊滅状態に追いやっていないだろう。
「じゃあ、誰が我々の軍を、そして、ダリウス王子を襲撃したのでしょうか」
 そこまでアリアが説明し終えると、セルドアが尋ねる。
「たぶん真相はこうだと思います」
 アリアは続きを話し始めた。
 ここまで来る道中で一部を襲撃したり、情報戦に持ち込んだり、ちまちました嫌がらせのような攻防を続けさせたりしたのは確かにウィリアムだろう。しかし、彼は全滅させたり、王子を襲撃したりするというクレメンスの指示外のことは行っていないとみていいだろう。十中八九、元宰相一派の貴族がそれぞれの私兵に命じて行わせたことだと思う。しかも、責任は全てウィリアムに擦り付けて。王宮におけるダリウス王子の暗殺もクレメンスが命じたり、ウィリアム配下の者が行ったりという可能性は薄いだろう。
 そう言った瞬間、彼らは互いに目を見合わせた。
「もちろん、今言ったことはあくまで推察ですし、恐らくその証拠はどこにも残っていないでしょう」
 アリアはただし、と付け加えるのを忘れなかった。その条件・・に、ほかの面々はアリアの言葉をただ静かに頷いた。
「最後。今日一日の出来事を追ってみると、まず、朝一番にウィリアムは私に会いに来ました」
 アリアの言葉に全員驚いている。アランもアリアを腕に抱く力を強めている。
「会いに来たのは、単純に館を総攻撃しやすいところを教えに来ただけです。まあ、今となってもう一つ言えることといえば、彼自身はこの戦が終わったら彼自身なりに責任を取るつもりだったみたいですよ」
 例えば、死を持って償うとか。
 アリアはわざと一呼吸おいて言った。その答えに全員息をのんだ。アリアも彼の表情を覚えていなければ、そして、彼の行動を考えなければわからなかった。
 これも今となっては分からないが、ウィリアムはアリアに会いに来るまでに誰かにあとをつけられていたのではないか。そして、それに気づいており、わざと彼ら・・に捕まったのではないのか。しかし、ウィリアムが捕まるところまでは彼の考え通りだったが、捕まってから誤算だったのは、アリアの身柄を反乱軍側の貴族が欲しがったことではないか、と考えた。そして、本当にアリアが人質交換に応じたように見せたことも彼の想定外だったのではないか。
「そうすれば、彼の言動に対して全て納得いくではないでしょうか。」
 人質交換の場に姿を見せたアリア。恐らくウィリアムを捕まえた貴族たちは全ての鍵を握っているのがウィリアムだと、もう気づいていたのではないか。自分たちを謀っていたことも。だから、人質交換をする、という旨の書置きを残したのにもかかわらず、本当はその意思はなく、ウィリアムの最期の言葉から考えられたのはただ一つ。

「私自身を殺すことですよ」

 アリアは当然後悔していた。自分自身があの場にいなければ、そして、自分自身が王の駒となって動かなければこんなことにはならなかったのか。そうすれば、ウィリアムは死なずに済んだのではないのか。
「もちろん、少し誇張を入れて話すと、私はたぶん今現在リーゼベルツの評価につながっていると思います。その私が殺されたとなると、その犯人は周辺諸国からかなりの制裁を食らうことになると思います。それに、私を守れなかった国に対しても。ですので、反乱軍側はそれを利用したのではないでしょうか」
 アリアの話している内容に誇張も間違いもない、とほかの誰もがそう思っていた。しかし、話しているアリアの表情も、聞いている全員の表情も抜けきっている。アランは腕の中のアリアの様子がぐったりしていることに気づき、もういいと言った。アリアは彼の言葉に対して首を振ったが、
「駄目だ」
 と強く抱え込まれた。

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