転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

5

5
「いないですって?」
 総攻撃へ向かったはずのアランからの手紙にはそう書かれていた。どうやら、セルドアへの手紙にも同じことが書かれていたみたいで(もっとも、彼への手紙の方が詳しく書かれていたようで読むのに時間がかかっていた)、かなり険しい顔になっていた。
「彼は僕たちにどうして欲しいと?」
 セルドアは伝令の騎士にそう尋ねた。尋ねられた騎士は、
特には・・・
 と答えた。その答えにアリアは疑問を覚えた。セルドアの方を見ると、彼はただ無表情で騎士を見つめていた。やがて、
「少し相談したいことがあるから、ここで待っていてほしい」
 と言い、アリアを連れて、人目のつかないところへ向かった。二人とも全くやましい事をしていないが、周りからは生暖かい目で見られた。
「こういうのも悪くないですね」
 連れてきた本人であるセルドアも何故か嬉しそうだ。アリアは意味が分からず首をかしげたが、彼はそれに答えることはなかった。
「まあ、アラン君・・・・に見つかったら怒られるから、ほどほどにしますよ。それはさておき、あのアラン君からの手紙は彼の本心ではないと考えて良いでしょう。アラン君からの言伝がない、というのもおかしいですね」
「どういうことですか?」
 アリアはそこまでは思い至らなかった。しかし、今朝会ったばかりのウィリアムのあの眼は何だったのかが気になる。
(嘘だったの―――――)
 もちろん、アリアとウィリアムは敵同士。しかし、彼のだけは本物だと思っていたのに。
「もしかすると、向こうで何かが起こっている、もしくは起こったという事でしょう。しかし、僕たちが向こうの状態をこの場で知ることは難しいと思います」
「もしかして、領館へ向かうという事でしょうか」
 アリアはセルドアが言った言葉で、すぐに次自分たちがとるべき行動はわかった。
「ええ、あなたはどうされますか」
 彼はアリアに強要することはなかった。彼はアリアがこの総攻撃の結末を知ったところで傷つくことを恐れたのだろう。しかし、アリアは首を横に振った。もう傷つくことを恐れてはいけない。
「行きます」
 アリアは微笑んだ。
 それから、二人は伝令が待機しているところへ戻り、待機している騎士を含めた全員に告げた。
「全員で屋敷に向かいますよ」
 彼の言葉を聞いた瞬間、伝令騎士の顔色が変わったことに気づいた。やはり、何かこの総攻撃の結末には何かあったのだと。

 その場に待機していたものは二人の騎士以外、領館の方へ向かった。アリアは相変わらずセルドアの前に乗せてもらっていた。
「本当に大丈夫ですか?」
 馬を走らせながらセルドアは再び尋ねた。彼はアリアが9歳の時に大きく変わって・・・・・・・、人との接触に気を使っていたことをどうやら気づいているらしかった。アリアはその確認に微笑んで、頷いた。
「そうですね。セルドア様やクレメンス様、ユリウスにベアトリーチェ様がいてくださったおかげです」
 アリアの言葉にセルドアは驚いていた。しかし、すぐに表情を引き締め、それでしたら、よかったですとそっけなく言う。しかし、耳が赤くなっているので、無表情も効果はない、と心の中で笑う。
 そして、しばらく無言の状態が続き、それは街まで来て領館がはっきりと見えるところまで到達するまでだった。
「そういう事、ですか」
 セルドアは唖然としている。それはアリアを含めて、その場に居合わせた者たち、伝令に来た騎士たち以外はすべて同じ表情をしていた。
 すぐさま領館の中へ入り、隅から隅まで手分けして探した・・・
「アラン達は、本当はどうしたの―――――」
 アリアは騎士たちに問いかける。屋敷の内部まで見終わったセルドアもすでにキレかけており、あと一歩アリアが止めるのが遅ければ、彼らの首はつながっていなかったことだろう。感謝してほしいものだと感じた。そして、同時に、アランの伝言の意味が半分ほど分かった。伝令の騎士たちは顔を見合わせたが、セルドアが本当に斬るという脅しをかけたので、渋々ではあるが話し始めた。
「ウィリアム・ギガンティアが反乱軍あちら側の人質になっていたのです」
 話はアリアの予想を上回っていた。彼らの話から、どうやらウィリアムは何故か味方であるはずの反乱軍に捕らわれていたようだ。その彼が捕らわれているとことを見たアラン達は、疑問に思ってこの建物内に侵入したが、捕縛した側と交戦した。しかし、人質がいるのと敵の建物内という悪条件が重なり、うまく彼を救い出すことは出来なった。その後、人質となったウィリアムを連れて反乱軍は逃げたらしい。その時、彼らがいいのことしたことは一つ。
『ウィリアム・ギガンティアの身柄引き渡しと投降をしてもよいが、その際はアリア・スフォルツァが欲しい』
 と宣ったそうだ。そう言い残して彼らは館を去り、おいて行かれたアラン達は彼らの後を追っていったという。
 その話にアリアは少し納得できなかったが、セルドアはだいぶ納得したらしい。
「おそらく周辺諸国からの世論の操作でしょうね」
「え?」
 アリアはその言葉に少し合点いったが、それでも尚、訳が分からなかった。
「あなたから『正義はこちら反乱軍側にあると言い出した・・・・・ことにするでしょう」
 セルドアは涼し気に言う。
「しかし、相手も馬鹿じゃないですよ?何のために私が反乱軍側に付こうとしたのか探るでしょうし、今までの矛盾だって生じてくるじゃないですか」
「ええ、でも、彼らを疑問の渦に巻き込むのですよ」
 セルドアの指摘にアリアはハッとした。
(そういう見方もあるのか――――――)
 アリアは『白か黒か』というように物事を見てきていなかったように感じられ、反省した。
「で、今彼らはどちらの方向に行くと言っていたのですか――――」
「まさか、行かれるのですか」
 騎士は驚く。どうやら、本来は特にアリアを巻き込まないつもりで、彼らだけの力だけで取り返すつもりだったという。その彼らの覚悟にアリアもセルドアも驚き、不安を感じた。
「いくらなんでも、彼らだけを犠牲にするつもりはありませんよ」
 セルドアは騎士に向けていた怒りを敵に向けがっているものの、この場にその相手がいないのでもどかしいみたいだ。
「ええ、行きます」
 そう言い、アリアの方をしっかりと見て、
「あなたはユリウス君のところに戻っていてください」
 という。しかし、アリアもただ見ているだけの性分ではない。
「いいえ、皆さんと共に行きます」
 彼女もまた、これ以上誰かを犠牲にするわけにはいかない、と感じているのだ。彼女が行動しないわけにはいかなかった。セルドアはため息をつき、しばらく間をおいてから、言う。
「分かりました。ですが、絶対にあなただけは傷つけさせません。それがアランやユリウス君をはじめとして僕たちの思いです」

 そうして、騎士たちから反乱軍、そしてアラン達―――総攻撃隊が向かった先を聞き出したセルドアはアラン達の後を追っていき、領館から北東へ少し離れたところにあり、王家直轄領と反乱に参加した子爵が所有する隣接領ギリギリのところにある高原を目指した。

 高原についたアリアたちはちょうど、先に着いていたアラン達と反乱軍がにらみ合っているところに出くわした。
 アラン達はセルドア、そして何より遠ざけたはずのアリアの姿を見、悔しそうな顔をした。

 この反乱において最後の決戦が行われる直前の出来事は、アランやセルドアにとってとても不本意なものとなっていた。

「転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く