転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 総攻撃は騎士たちにわかりやすいように、年功序列、武官としての階級制度の下、セルドアによる指示で行われた。セルドア達が来るまえだったら、アランと共に本陣に残り指示を出す予定だったが、彼らが来たことによりアランも先陣を切ることになり、アリアは後方で指揮を執るセルドアの馬に乗せてもらうことにした。ちなみに、ユリウスは本陣で待機組だ。
「アラン、気を付けて」
 アリアは出立前のアランに声をかけた。アランは返事をしなかったが、はっきりと頷くのが見て取れた。
 そうして、彼らは街へ降りて行き、指揮組も街へ降りて行った。
「あなたはなかなかやりますね」
 セルドアが呟く。アリアはセルドアにどういうことか尋ねた。
「僕としては、公爵家の令嬢ともなると、自分から動くのではなく、守られるお姫様の方が現実的だと思ったまでですよ」
 彼はアリアに微笑む。その微笑みはアランと婚約をしているアリアでさえ、昔からころっと・・・・落ちそうな笑みだ。しかし、アリアは少し彼の言い草に頬を膨らませた。ほかの人が見たら、子供じゃないのだから、と窘められそうだが、セルドアは彼女の頬を撫でただけだった。
「まあ、あなたは元から無私の塊だから、僕たち兄妹も救われたのだし、今だって、誰かのためにこうして来ているんでしょう」
 セルドアの声はウィリアムのことで悩んでいたアリアの心を不思議と落ち着かせてくれた。
「ええ、そうですね」
 彼女はしっかりとセルドアの服をつかんだ。それを見セルドアはアリアの頭を撫でる。
「僕もあなたのように強ければいいのですが、ね」
 一瞬聞こえた囁きは彼女が聞き取るのには十分ではなかったものの、なぜか踏み込んではいけないような気がして、そっと彼の顔を見上げるだけでとどめた。


 本陣からは少し下がったところではあるが、比較的開けた場所で一行は立ち止まり、街の様子をうかがった。総攻撃が成功した場合は手前の方から狼煙を上げることとなっている。そのため、全員が手前の方を注視していた。
(なかなか上がらない――――?統制はとれている面子だから、現地での指揮が取れなくなって混乱するという事もないはずだ)
 アリアは総攻撃へ向かった騎士たちを信じていた。それに、ウィリアムのことも信じたかった。
(彼が言った通りなら、おそらくもうすでに到達していてもいいくらいの距離だ。何かイレギュラーなことでもあったのか―――――)
 アリアは心配でたまらなかった。セルドアや他の騎士たちも少しそわそわしているような気がしたが、今の自分には、何も声をかけることが出来ない。
 その時、背後に人の気配がしたので一斉に振り向いた。
 そこには、総攻撃の一員として出陣したはずの騎士が一人、戻って来ていた。誰かであるかを確認すると、セルドアをはじめとした後方指揮組は非常に険しい表情をした。
「どうした」
 セルドアは息を切らしている伝令役の騎士に尋ねる。騎士は数回荒い息を吐くと、

「すでに屋敷はもぬけの殻、反乱軍はこの街を発っています」
 その騎士は跪いて言う。その言葉にアリアもほかの全員も絶句する。
(やはり、あれは罠――――――)
 ウィリアムの言葉が浮かんだが、今は考えられない状態だった。もちろん、敵であり、そもそもこの反乱を起こしたのは彼だ。その彼のいう事は信用できない、というのに、信用した自分が恨めしかった。しかし、ウィリアムへの信用問題より、気になることがあった。
「アラン達は――――――」
 彼女は総攻撃へ向かった騎士たちを思った。
「全員無事です。あ、すみません、アリア様へ手紙を預かっています。そして、こちらはセルドア様へ、です」
 そう言って、伝令は『手紙』とは言い難いが、確かに手紙であるものをアリアとセルドアに渡した。

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