転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 その日の暮れに、街へ出した偵察隊は戻ってきた。地図を囲んでいたアリアたちはすぐさま偵察団を天幕へ通した。
「今のところ、もともと国王に領官として派遣されていたエスベル子爵は反乱軍側についており、その館がそっくりそのまま反乱軍の本部となっているようです」
 偵察隊の一人はそういう。
「すべての幹部たちが入っているのか?」
 セルドアが問う。セルドアは館の位置を聞かなかったことから、その位置を知っているのだとアリアとアランは驚いた。報告をした彼は頷き、
「はい。ミスティア王女をはじめとして、元ブラッケンベリヒ伯爵夫人ら元宰相一派、そしてギガンティア領官はすでに館に入っております」
 と答えた。街の地図の一か所にセルドアは黒の石を幹部の数だけ置いた。そこが館なのだろう。
「屋敷の警備の人数は?」
「外はそこまで強固なものではありませんでしたが、館の中にはどれくらいいるか不明です」
 彼は首をかしげながら言う。確かに正々堂々と戦う騎士たちから見れば、不思議ではあるかもしれないが、アリアだったらそうしただろうと思った。その方が敵は舐めてかかるので、こちらとしては虚を突きやすい。セルドアも同じことを思ったようで、少し首をかしげながらも話を続けさせた。
「もう一つ。街の西方、こちら側と北方の住民はすでにその場所に住んでいない・・・・・・模様です」
 その言葉に誰しもが絶句した。
(まるで、そこから攻めろと言わんばかりの構図)
 先ほどの屋敷の警護、そしてこの一連の彼らの行動が不可解すぎる。全員が同じことを想っている。
(誰が操っている・・・・・のだろう)
 アリアはそれが知りたい。しかし、それを知るのはおそらくこの戦いが集結してからだろう。
(だけど、その人間は『自らの破滅』と引き換えに私たちに何を求めている――――?)
 反乱軍の中にいる『内通者』の意図がさっぱり読めない。
 全員とも全く理解できていない状況だったが、それでも偵察隊は帰ってきて、彼らから情報はもたらされた。
「やるしかないの、ね」
 一瞬の呟きにアリアは自分が言ったものだと、瞬時に気づくことはできなかった。しかし、全員の眼がこちらに向いたことで、ようやく自分の発言に気づき、改めて宣言した。
「明日の朝、霧が晴れると同時に屋敷へ総攻撃を行いましょう」
 彼女の宣言に、アラン、セルドア、ユリウス、そしてほかの騎士たちも、一斉に頷いた。



 翌朝、日の出前―――――
 アリアは謎の『内通者』の暗躍に関する謎や総攻撃への緊張感からか、予想以上に目が冴えてしまい、眠ることが出来ず、不用心だとは思いつつも一人で天幕の外をうろついていた。
「何やっているんだい、スフォルツァの姫さん」
 もう少しで見晴らしのいいところまでたどり着く予定だったが、その前に背後から声をかけられた。その声の持ち主は、アランでもユリウスでもセルドアでもなかった。背後を振り返ると、そこには見覚えのある人間がいた。
「あなたは――――――」
 アリアは驚愕するとともに、ほんの少し後悔した。まさか、彼がここに来るとは思わなかったのだ。
「まあ、スフォルツァの姫さんがそんな反応をするのは無理ないか」
 灰色の髪を持つ彼――――ウィリアム・ギガンティアはそう笑う。その笑みはどこか儚い感じだ。いったいどうしたのだろうか。しかし、ウィリアムはまるで自分のことは聞かれたくないのか、彼自身の用件を話し始めた。
「俺が来たのはスフォルツァの姫さんかコクーン卿に話があったんだ。真偽のほどは他の連中に尋ねてくれればいいから、よく聞いてほしい」
 ウィリアムの眼は真剣だ。そして、法務にいた時の彼、もしくはクレメンスについていた時の彼の眼だった。敵としてのウィリアム・ギガンティアは信用できないが、アリアは昔の『眼』を信用することにした。アリアは無言で頷いた。
「あの館の正面の入り口は襲撃には向かない。襲撃を行うのならば、ここからまっすぐ見えるところ、赤い旗を立てた場所があるから、そこから入るといい」
 ウィリアムの言葉にアリアは再び頷いた。
「じゃあ、健闘を祈る。俺は反乱軍側の人間として職務を全うする・・・・・・・
 そういう残し、来るとき同様、音を立てずに去って行った。

 アリアはウィリアムの最後の言葉の真意を考え、しばらく呆然としていたが、やがて事の重大さに気づき、天幕へ急いで戻った。出かけるときは誰も起きていなかったが、戻ると既にほかの騎士たちも起きていた。
「アラン」
 天幕の奥へアランの姿を探した。
「どうした」
 アランはまだ起きたばかりなのか、少し眠そうだった。だが、アリアの様子から何かあったのだと悟り、外へ連れ出した。
「今回の内通者はウィリアム自身」
 アリアの言葉に一気に眠気を吹き飛ばしたのか、目を瞬かせた。
「私も嘘だと思ったけれど、でも、それで辻褄があってくるような気がする」
「だが、それはアリアの推論だろう?」
 アランはその説には半信半疑の様子だ。しかし、アリアはさっき張本人に会ったことは言えない。
「いいえ、推論ではなく本当のことよ」
 彼女の眼をアランはじっと見つめる。
 アランは少しため息を吐いた後、
「まあ、俺としてもウィリアムが内通者ではないかと思う。でも、完全に僕は彼のことは信じられないんだよね」
 という。アリアも確かに全く知らない赤の他人だったら同じように疑っただろう。しかし、彼は一応『クレメンスが拾って』きて、そして、彼女自身・・・・を見た人だ。アリアとしては信じたい部分が勝っている。その思いがアランに通じたのか、
「分かった」
 と折れてくれた。アリアはありがとう、とお礼を言う。
「構わないさ。もうすぐ時間だ、行こう」
 アランは右手をアリアの方に差し出した。一瞬、アリアは戸惑ったが、彼を見上げ、
「ええ、行きましょう」
 と微笑み、彼の右手に自身の左手を重ねた。

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