転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「姉上」
「ユリウス」
 ダリウス王子が薨去したと聞いてから、二日。付近の森や山などへ捜索隊を、街の方へは偵察隊を出したあと、アリア自身も街へ繰り出そうかと考えていた時だった。いきなりバルティア家の騎士が天幕内へ駈け込んで来た。最初は襲撃かと思い天幕内が身構えたが、伝えられた内容にアリアたちは一抹の不安を感じながら彼らと再会したのだ。セルドア、ユリウスを除けば騎士は12人。恐らく、もっと多くの騎士が出陣しているはずなので、例の襲撃によってかなりの数の騎士が犠牲になったのだろう。
「まさかここまで来られていたとは。スフォルツァ令嬢がご無事で何よりです」
 彼らの服装は見るからにくたびれており、かなり過酷な状況に置かれていたのだろうと推察される。騎士たちは隣に設営された騎士専用の天幕で休ませ、ユリウスとセルドアには情報の交換のために、本陣の方へ来てもらった。
アリアもユリウス、セルドアをはじめとした王立騎士団の面々と再会できたことにほっとした。しかし、セルドアは本来ならば戦場に立たなくて良いアリアの姿に心を痛めているようだった。
「いいえ。私たちは私たちなりの理由でここまで来ました。ですから、あちらがミスティア王女殿下を旗頭にしたのと同じようにしていただければ、と思います」
 アリアにもセルドアの気持ちは分かった。しかし、アリアも一人の人間だ。理由がなくここまで来るはずなどない。そう言いたく、セルドアに言うと、彼は顔をゆがめた。少なくとも彼自身は、そうなることを望んでいないだろう。
「そうですね。俺もアリアと同じ考えですよ、コクーン卿」
 アランはアリアの意図に気づいたのだろう。
「たぶんこの反乱は国王への反逆であり、本来ならば国王自らが率いていくべきことなのだろう。しかし、国王の代理でもある王太子――――クリスティアン王子でさえ、手こずる。あまつさえ敵は姿を見せない。僕も考えましたが、反乱軍は最もつぶしたい相手がアリアなのじゃないかってね」
 そう、あの後二人は考えたのだ。何故、クリスティアン王子や王立騎士団の軍へちまちまとした嫌がらせのような戦い方をするのか。誰かを引っ張り出したいために、責任をクリスティアン王子に擦り付けてダリウス王子を誘拐し、彼を本隊から引き離す。そうすることによって、国王が動くことを願ったのではないのか。そして、動かしたい本人は国王の可能性も否定はできないが、物事を中立的に視ることが出来る人物を彼らは求めた。そして、もう一つ、それがアリアと断定できると思ったこと。それは―――――
あの・・ウィリアム・ギガンティアがあちら側にいることです」
 アランはそう言った。アリアもアランに言われるまでは気づかなかったものの、ある事に気づいた。
「彼は前にフェティダ公爵が捕縛された際の裁判・・で、元宰相側である元軍務相と元内務相に付き、フェティダ公爵の名ばかりの弁護人を引き受けました。しかし、その後の処罰対象には含まれておりません。そして、あの場にいながら、その処罰対象に含まれていないのはもう一人―――――」
 アランはそこで区切って、もともとの上司であり、現在は軍務相を兼任している目の前の騎士団長を見上げる。セルドアははっと気づき、かすれた声でその名を言う。
「クレメンス・ディート伯爵」
「ええ。はっきり言うと、その彼があちら側の仲間であり、ウィリアムと共にわざと泳がされたとも考えられなくもありませんでしょう。それに――――――」
 アランは目を伏せながら言う。
「彼はそんなことをするはずがありません―――――――」
 セルドアはアランが何を言いたのかを悟ったらしい。それを真っ向からセルドアは否定する。彼は幼馴染であり、セルドア自身を拾ってくれた伯爵の息子であるクレメンスのことを本当の意味で知っている。
「ええ、そうでしょう。あの方はそれを起こすことはないでしょう。しかし、何も知らない人からすれば、ここはそこを突かれる可能性もあり得ってしまう『世界』だと思いますよ」
 アリアもアランもクレメンスとセルドアの間に存在する詳しい事情は知らないが、否定できた。アランもアリアも彼ら自身のデビュタントのためのマナー講師としてのクレメンスを知っているし、そして文官としての彼も知っている。なので、彼ら自身もクレメンスが敵と通じていることはない、と断言できる。しかし、世間からはそう見られてもおかしくはないだろう。その可能性を指摘したのだ。アランは頷いて続けた。
「僕たちは先ほどの考えであり、反対の結論に至りました」
「先ほどの考え――――――反対の結論――――――」
 ユリウスが首をかしげる。
「はい。正確に言うと、潰したい相手が私であり、交渉したい相手も私である、という事です」
 アリアはきっぱりと言った。もちろん推論だ。しかし、以前クリスティアン王子に会った時の話を思い出していると、ある事に気づく。

「たぶん、王宮で彼らが殺したと思っている相手は『クリスティアン王子』ではないでしょうか」

 そう、彼はダリウス王子が襲撃・誘拐されたのは、彼らが入れ替わっていたからだと。しかし、二人ともそう柔に口を割る性格をしていないだろう。だから、反乱軍側がその入れ替わりに気づいていなかったら?ウィリアムぐらいは気づいていそうだが、彼もミスをすることはあるだろう。それにアリアは賭けている。案の定、ユリウスもセルドアも驚いている。
「私は一応、スフォルツァ公爵家の娘であり、王太子殿下と深い関りがあるのを貴族たちは知っています。それに、一応先だっての政変時に諸国からディートリヒ王の正当性を得るのに役に立った、というのも公然の秘密と化しているみたいなので、その線も可能性としては深いんですよね」
 アリアは可能性を列挙した。ユリウスは姉である彼女をガン見し、セルドアは渋面を作る。確かに、淑女らしい振る舞いでなかったのはアリアも反省している、一応。

「ということで、私は、いいえ、私とアランは偵察隊が戻って来次第、あの町へ総攻撃を仕掛けます」
 アリアは結論を言う。もっとも、これは結論というより、決意というべきだろう。
「待ってください」
 セルドアはそれでも引き留める。
「ならば僕が貴方を乗せます。そうすれば、あなたも寒くないでしょうし、共に望む・・結果になりましょう」
 アリアは一瞬迷い、アランの方を見た。セルドアの判断に一瞬アランはムッとしたが、アリアの迷いの含んだ視線を感じ、そんなことを気にしている場合ではないと思い直したのか頷く。
「では、お願いします」

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