転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 その晩、アリアは与えてもらった天幕ではあまり眠れず、まどろんでいたところで朝を迎えてしまった。行方不明であるユリウスやセルドアの動向がつかめなかった上に、クリスティアン王子の様子も気になったのだ。しかし、そのどちらも解決されるのはまだ先だろうと思い、これ以上思うのを今はやめようと自分の中に沸く悩みを隅へ追いやった。

 その後、アリアたち四人は、一度クリスティアン王子の天幕を辞去し、スフォルツァ・バルティア公爵軍を正式に国王軍として南方に連れて行くために、バルティア領へ戻った。国王の奪還という目標は国王本人によって砕かれ、結局得たものと言えば、クリスティアン王子本人からの情報のみ。アリアとしても、なんとかしていい加減にこの反乱を抑えたいと願っている。
「アリア」
 バルティア家別邸に戻った翌朝、朝食のために食堂へ向かうと、アランだけがおり、彼は入ってきた彼女を見て呼び止めた。
「僕の考えなんだが、ヨセフ閣下には帰国してもらう」
 アランはどういう訳か、そんなことを言い始めた。アリアはどういうことだと、一瞬思ったが、すぐに納得がいった。
「そうね。契約・・時には、『リーゼベルツが安定するまで』という事だったけれど、これ以上はおそらく私たちの精神的な部分なんだろうという事がよく分かったわ」
「ああ。それに、多分あのクリスティアン王子もセルドア様もヨセフのことは気に入らないだろうと思うよ」
 アランは肩をすくめた。アリアもそれに同感した。セルドアは確かに人の好き嫌いが激しく、一国の王子であるクロード王子でさえ嫌っているのだが、クリスティアン王子も似たような一面が見られると感じた。
 遅れて朝食にやってきたヨセフに話をすると、
「あー、そっかぁ。ま、嬢ちゃんと坊ちゃんがそう言うのならそうなんじゃないのかな?」
 と否定も肯定もしなかったのだが、スルグランへ戻ることについては、否定した。
「ついでに、他ん国の近況も見て回ろうと思っていたから、しばらくは戻れへんよ」
 そう言って、彼はアリアたちから謝礼として少しの金子を受け取り、昼過ぎに旅立った。

 そして、よく明け方、未だ長距離の移動には不可能であるマクシミリアンはバルティア家別邸で預かることとして、アリアとアランは双方の領軍を率いて、南方へ旅立った。
 反乱軍の拠点となっている直轄地までは、数日もかからず、いくら軍を率いていようとも、最短3日で着く。しかし、先日遭ったクリスティアン王子の軍は、その場所に見当たらず、彼の行き先も全くつかめなくなっていた。
「まずいな」
 アランが呟く。丘の上から見下ろしても見当たらないのだ。
 仕方がないので彼らは単独で幕営を設置した。ユリウスたちとも連絡がついていない中、それぞれが単独出るのは厳しくなっているところだった。
 それからしばらく各地域の偵察と、厳重な警戒を行っており、気づけば年の暮れとなった。
「早く解決できるといいわね」
 アリアは年の暮れの夕餉をほかの騎士たちと一緒に取りながら言う。
「もちろんだ。だが、果たしてこの戦は終わって言いものなのか、と思うときもあるよ」
 アリアにもその葛藤はあったが、見て見ぬふりを決め込んでいた。しかし、アランはそこを突く。やっぱり『大人の余裕』というものなのか、アリアとしては羨ましかった。


 そして、戦場で年明けを迎えた。

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