転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「ま、俺は嬢ちゃんのその年相応の感情が見れただけで十分やわ」
 バルティア家別邸のテラスでアリアたち三人は茶を飲みながら、話をしていた。しかし、先ほど・・・やらかしてしまったことについて、ヨセフにそう言われると、アリアはますます顔を赤くした。
「ちょ、だから、すみませんでした――――」
 アリアは居た堪れなくなり、そう言い残してテラスを出た。
「坊ちゃんの方も、やっぱり嬢ちゃんのことが好きやったんやね」
 ヨセフは、アリアとは異なり涼しげな顔で茶を飲み続けているアランにそう言う。彼は顔色を変えずに、
「ええ、そうですよ」
 という。そのあまりにもの動じなさにヨセフはため息をつく。
(いや、これはこれは。今代は崩壊しかけているが、次代はかなり手強いだろうな)
 もし、リーゼベルツが安定し、自分が国へ戻ったら、リーゼベルツとも相手をしていかねばならない。その相手は可能性として低いが、目の前にいる公爵子息だと仮定すると気が重くなる。

 事の発端は、数日前。アリアがヨセフを連れて帰ってきたときにはじまる。
 バルティア家別邸にたどり着いた時、アランが家の前に立っており、アリアは馬車を降りた瞬間、アランに抱きすくめられた。アリアはアランのぬくもりにほっとし、アランもアリアが無事なのを確認するとホッとし、しばらく抱きしめられ続けたのだ。とはいえども、そこは第三者の眼もあるわけで。馬車の中でヨセフが咳払いをするまで、二人は彼の存在を忘れており、かなり恥ずかしかったのだ。
 しかし、どうやらことがどうであれ、最初に会ったのがあの調停の場であったため、アリアの印象として、年をごまかしている女、というものだったらしい(確かに、年齢については何とも言えないところがあるので、黙っていた)。しかし、年頃の貴族の娘らしく隙あった誰かを熱い抱擁を交わすアリアの年相応な姿を見て、ヨセフは安心していた。ただ、その一方で、アランは少し不機嫌な様子だったのだが。

「で、俺を召還したんは何のためやの?」
 ヨセフは今までとは一転、非常に冷たい口調になった。
「ま、アンタらの今までの行動をよう見てると、たぶんディートリヒ王の救出、そして、諸侯の結集、騎士団への合流を目指しているんとちゃうか?」
 ヨセフは机のそばに置かれていたカートに寄り、そこに置かれていたものを見てニヤリと笑う。そう、そこにはこの国内と近隣諸国の地図、さまざまなピンが置かれていた。
「そうですね。ヨセフ閣下の仰る通りですよ。ただ、諸侯の結集はこの時点では無理でしょう。それに、僕らはあくまでも単独で動く方が何かと都合がいい・・・・・もんで」
 アランも負けじと笑いながら言う。
「なるほど。で、俺に依頼したいのは、そこまでの過去の実践に基づく軍師の知識の伝授か」
「その通りです」
 アランから見てヨセフは一応20代半ばに見えるが、この国リーゼベルツの社会からすると、ある程度爵位やその地位が大きくものをいう。元は一国の軍師であったヨセフもそれを分かっており、アランの軽口には何も文句を言わなかった。アランの返答にうんうんと大きく頷き、なるほどねぇと呟いた。もちろん、彼もスルグランに戻る予定であり、いくら現在は更迭されていると言っても、自国スルグランのことを考えねばならない。アランは彼が頷き終えた後、黙り込んだ理由をそうだと思った。しかし、
「へーえ。ほな、アンタはどないして孤立無援、そして互いに事を荒立てたくない双方の状況の中で、ディートリヒ王を助けるんや?」
 と、ヨセフは直接尋ねる。アランは彼の割り切ったその口調に驚いたが、すぐに頭の中を切り替え考えた。

「―――――そうですね。僕ならば、王宮の正面からの突破は不可能です。ですが、おそらくスフォルツァ公爵家にもう一度行けば、何とかなる・・・・・と思います」

 アランの答えに、ヨセフは度肝を抜かれた。はぁ?と思わず尋ね返してしまった。だが、アランの答えは変わらなかった。
「バルティア家は現在、元宰相一派に睨まれているので動きが取れません。それに、自分がノコノコ出て行っては、僕を自由・・にしてくれた陛下や父親に申し訳ないです」
 アランの言葉に、ヨセフは、
「アンタ、アホちゃうか?そもそもスフォルツァ家も王宮から追い出されてるんやろ」
 と眉を顰めた。それに対して、アランは慌てるどころか笑いながら、
「ええ、そうですよ。だから、これからいう事を行う僕たち―――いいえ、は馬鹿かもしれませんね。でも、スフォルツァ家には最高の切り札があるのですよ」
 という。スフォルツァ家と聞いてアリアの事しか浮かばなかったヨセフは、
(これ、自分は要らなかったんじゃね?)
 と思ったが、口にはできなかった。

「ええ、最高でそして最悪の切り札が一人、スベルニア皇国にいるじゃないですか?」

 アランの言葉に一瞬誰かわからなかったが、ヨセフは今の皇太子の正妃を思い出す。
「ご想像通りですよ、ヨセフ閣下。アリア・スフォルツァ嬢の妹、リリス・スフォルツァ嬢―――すなわち、スベルニア皇国彼の国の地位を利用してしまうのですよ」
 どうやら、アランはヨセフの少し斜め上を行く人物だったと、ヨセフは認識した。まさか、本当に一国の妃をだしにするつもりなのか。
「まあ、端的に言うと、あの国は近親相姦理のタブーを認可していた代わりに、かなり医学や薬学が盛んなんですよ。なので、『最近、リーゼベルツの国王が病気である』という事をあえて王宮内に伝播させ、それを真実とさせるのです」
 アランの言葉にヨセフはいよいよ言葉を失う。自分が考えていた手順も結構不合理極まりないものを考えていたが、この目の前の赤毛の少年の方がえげつないのでは。何のためにアリア・スフォルツァは自分を呼んだのだろうか。そこまで考えて、ようやくヨセフにはわかってしまった。
(確かに、これは俺が必要だ。アラン・バルティアの考えているのは最悪、とどまることのない暴力になるおそれがあるのか――――そして、そのための冷静に考える役ストッパーか)
「なるほどな」
 ヨセフは初めて口を開いた。
「どうでしょうか?」
 アランはにっこり笑って言うから怖い男だ。
「いや、いいかと思う。だが、スベルニアまでは遠いから、いくら鳩や鷹でも時間がかかる」
「そうですね。確かに、王宮内に伝播させるのに時間もかかりますしね」
 アランは今気づいたのか、しきりに驚いている。
(おいおい。まさか、本気で実行しようとしていたんじゃねぇよな)
 ヨセフは冷や汗が背中に流れたのを感じたが、今はそれどころではない。早く代替案を彼に提示せねば。考えてきたもののうち、最も彼に近いものを言う。

「食料を攻めてみたらいいんじゃないか?」
 ヨセフの言葉に、アランはきょとんとする。ヨセフが今度はニヤリと笑い、アランは目を見開く。
「いろんなところで食料は必要だと思うぞ?」

 そう、食料の搬入に紛れての王宮入りを提案したのだった。

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