転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

ぽっきーげぇむ

「何よこれ」

 きっかけはアランの差し出したものに始まった。
 彼が差し出したのは、この世界のパンに似ているが、前世の某お菓子のような形をした何かだった。
「いや、この季節にちょうどいいかと思って焼いてもらったんだ」
 アランは外を見ながら言う。確かに、バルティア家別邸にある広葉樹はもう赤く色づき始めている。もうそんな時期になったのかと、アリアは少しため息をついた。
「そうね。今年は特に時間が進むのが早かったわね」
 転生してからというもの、時間がたつのが早かった。転生発覚による猛勉強にデビュタント。それに、クレメンス、ユリウスやベアトリーチェとの出会い。クリスティアンとの再会・・と婚約騒動。父の隠居に叔母の追放。しかし、15歳になってからはもっと時がたつのが早く感じられた。新年をセリチアで迎え、リーゼベルツに戻ったと思えば、すぐさまミゼルシアへの留学という名前の追放。そして、いない間に起きた反乱によってリーゼベルツへの帰還。そして今に至る。時をゆっくり感じられないのも仕方ないことだと思う。
「そう。だから、季節感を感じられるこれを食べるのもいいかと思って、ね」
 アランは笑いながら言う。まあ、ソレが本当に季節感を感じられるのかどうかは疑わしかったが、確かに毎年恒例で学校でも流行っていたのは覚えている。二人は室内に用意されたテーブルに着き、綺麗に盛られた皿からソレを食べ始めた。
(な、これって見た目じゃなく味までアレに似ている)
 アリアは驚いた。
「これってあのお菓子に味まで似せてあるのね?」
 この世界でお菓子と言えば、かなり甘い。ケーキとかも普通にあるのだが、非常に甘く、紅茶はストレートかせめて、無糖のミルクティーでしか一緒に食べる気が起きない。しかし、彼が作らせたというこのお菓子はほとんど甘くない。サラダ味の様な塩辛さは無く(少なくとも塩味の調味パウダーはまぶされていない)、バター味よりも甘さは控えめだろう。そんなアリアの評価に、アランは頷いた。
「うん。昨日思い立って製作レシピを考えていたんだけど、君に好評でよかったよ」
「昨日なの?」
 今度は、アリアの方がその思い立った日に驚いた。もっと前から作っていた物だと思っていたのだ。
「そう。せっかくアリアと二人きりなんだし、前の世界でのイベントも面白いなって思って、ね。ちなみに、これもあるよ」
 と、取り出したのは黒っぽい色の物がかかっているお菓子だった。
(ま、さか)
 アリアはまさかと、驚いてアランを見ると、彼は大きく頷き、にっこりと笑う。
「そうだよ」
 アリアはそれを勢いよく掴んで一口味見をした。それは、まさしくあのお菓子通りの味だったが
(なんか甘くないわね?)
 そう、甘さがどう考えても、元の世界の物よりも甘くないのだ。アリアは少し首を傾げた。すると、アランがそれに気づき、
「ああ、日本の物に比べたら甘くないと思うよ」
 と、言う。
「だけども、昔海外に旅行した時に食べたポッキーの方が僕の口には合ってね。だから、今回はこちらの方の味事情にも合わせてみて、甘くない物にしてみたんだ」
 アリアは元の世界にも甘くないアレがあるとは知らなかった。甘くないそれに感動して、二、三本食べている内にある事を思い出した。
「ねえ、昔あのお菓子でゲームをするって聞いた事あるんだけど、どうするのかしら?」
 それをアランに問いかけると、彼は顔を真っ赤にした。
「あ、あのアリアさん?」
 今までスラスラと喋ってきたアランが口ごもる。その様子にアリアは何故だろうと首を傾げる。質問を撤回しないアリアに、アランは観念して、ゲームの内容を説明する。すると、アリアの顔も真っ赤になる。
「本当に知らなかったんだ――――――」
 説明し終えたアランは、顔が赤いままそう呟く。それに対して、こくりと頷いたアリア。しかし次の瞬間、アランは予想だにしない言葉を耳にする。

「じゃあ、そのゲームをしましょう?」

「は?」
 アランはアリアの発言に思わずそう言ってしまった。
「だから、それをしましょうよ?」
 アリアはにっこりと微笑みもう一度言う。アランはアリアのその破壊力ある笑みから逃れようと、理性を保たせつつも、元々は自分が招いた事だと今更ながら非常に後悔した。
(確かに自分はアリアの事が好きだけれど、今ここでアリアとこのゲームをしたら、後々アリアに嫌われる事をしそうで怖い――――――)
 意を決して、アリアに言う。
「アリア」
「何?」
 アランの口調にアリアはビクッとなる。申し訳ないな、と思いつつも、アランは己の精神衛生上、少し強めの口調で言う。
「もちろん、君の事が好きだからこの婚約だってした。だけど、俺は君とゆっくり暮らせる様になってから、本当の恋人同士がする事をしたい。だから―――――」

「いいわ」
 話の途中でアリアが遮った。
「ごめん、本当に」
「違うの。アランのせいではないわ。 今までは、新しい事を知った途端、すぐにやりたがる癖があって、それが良い方向に作用してきたから、問題無かったよ。だから、今も面白そうだからと言って、舞い上がったの。だから、駄目な時は、そうやって拒否してくれると私もうれしいわ」
 アリアは少しショゲていたが、割り切ってもいる様だった。

 その証拠に、
「なんだか、コレを食べ切りたくなったわ」
 と言い出す。アランも割り切られた言葉と顔を見て、
「そうだな。僕もなんだかコレを食べ切りたくなってきた」
 という。

「じゃあ、コレを食べた本数を競いましょう」
「ああ、そのなら勝負受けてたとう」

 互いに手を伸ばし、ソレを食べ始めた。

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