転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「どう意味でしょうか――――」
 ディートリヒ王の言葉は、驚いたレリが持っていた手巾を落とさせるのに十分だった。
「そのままの意味だよ、セレネ伯爵夫人」
 王は彼女に静かに言った。だが、彼女にはそれが理解できていなかった。
「二代前の話は知っているかな?」
 王はレリにやさしく語り始めた。その話は、以前アリアに話したことと同じ内容で、この国の王家の『恥』と罵られてもよい話だ。レリはそれを聞いて、少し驚いていた。彼女が聞いていた話とは少し違っていたらしい。
「だから、私は一部の貴族たちからは望まれない王として君臨してきた。そして、十数年前の醜聞。それらをあわせただけで、もうすでに王としての資格はなかった。しかし、誰も後を継ぐことのできる人間がいなかった、そして、自分の後を継いだ人物の補佐をできる人物がいなかった」
 王は静かに言った。レリはただ聞いているだけで、何も意見を言わなかった。
「今は違う。武官ではコクーン卿はこの国で一番の腕前をもつだろうし、スフォルツァ公爵やバルティア公爵の嫡男は、いずれは公爵の方で活躍してもらうつもりだが、武官としても役に立つ男たちだろう。文官の方は、ディート伯は次期宰相になるだろうし、今言ったバルティア公爵の嫡男、そして、スフォルツァ公爵令嬢・・が今いる若手としては将来の国王側近候補の上位だろう」
 彼はそう言ったものの、レリが何も反応しなかったことから、興味がなかったか、と謝った。しかし、レリはその謝罪にいいえ、と答えた。
「これ以上、私がついていなくても後継者は人材には困らないだろうし、傀儡になる心配もない」
 ディートリヒ王はすでに覚悟しているようだった。
「この戦には過去の私の負の遺産がすべて関わっている。だから、この反乱を終結させた後、犠牲者の追悼式、そして叙勲が終わったら、私は隠居しようと思う。そして、次の世代へ託すことにしたのだ」
 レリはそこまで王の決意を聞いてしまった後は、何も言えなくなった。
「そうでしたか――――」
「そうだ。そして、其方はそれをスフォルツァ公爵家へ伝えてくれるかな?」
 ディートリヒ王は意外な伝達先を指定した。
「たぶん、彼らならどう動くべきかわかっているんじゃないかな?」



 一方、そのころアリアはスルグランに来ていた。
「で、リーゼベルツの女が俺に面会をせねばならん?」
 口の悪いこの男―――国のトップである執政・メッサーラは、アポなしで彼の執務室に現れたアリアに対してそう悪態をついた。確かに、断られる可能性が高いからと、アポを取るのを断念したアリアであったが、この男の口の悪さには反論せざるを得なかった。
「そうですね。こちらはメッサーラ閣下に約束を申し込めば確実に断られる可能性があったので、こうして乗り込んできたんですよ」
 アリアの言葉に少し興味を注がれたメッサーラは、彼女を注視する。
「なぜなら、あなたは私を憎んでいるから。そしてその憎しみはどこから来ているのかと言えば、あなたの腹心であったヨセフさんがあの調停の場で、格下の相手である私から指図を受け、さらに、勝負でボロ負けしたことから。でも、結局それってあなたが誰かさんに唆されて『白き土蜘蛛』と同盟を結んだことからはじまっているんじゃないのかしら?」
 ほかの貴族や武官たちの手前、メッサーラ自身にさえ、リーゼベルツからの客を手にかけるようなことはできなかったに違いないが、それでもアリアは冷や汗をかきながら、喋っていた。
 ところで、何故彼女がこの国にいるのかというと、アリアやアランには決定的に実戦経験が少ない。なので、実戦経験が豊富で、国の重要ポストについていない人間、を探そうと思ったとき、一人当てはまる人物がいたのだ。
 そうアリアが言うと、メッサーラは言葉を詰まらせた。どうやら図星だったらしい。
「で、その代償という訳ではありませんが、結構こちらにもいい迷惑をこうむりましたし、それに、ぜひリーゼベルツの実情、というのを見ていてもらいたい人物がいるので、こうしてお願いにきました」
 アリアはさっきと打って違い、低い腰でお願いをした。すると、メッサーラは数分間考えた後に、
「分かった。確かに君の噂は聞いているが、やはり実際に会ってみるまでは信用ならない女だと思っていた」
 と静かに言った。こちらも、かなり最初の態度とは違っていたので、アリアは拍子抜けした。メッサーラは回りくどい言い方を好まないらしく、ほとんど単刀直入にそう言う。
「もちろん、そんなことを国としては認められるわけがない」
 アリアは内容が内容だけにリスクの高い交渉であり、国のトップがそういう事は目に見えていた。もちろん、拒否をされれば、食い下がる必要がないことはアランに話をしていた段階で、彼にそう宣言されていたので、これ以上の交渉は必要なしと判断された。しかし、メッサーラは、不機嫌な顔から一転、メッサーラ自身個人の表情になって言う。
「いや、いいとおもう」
「え?」
 個人的には納得いくような話なのだろうか。
「すでに彼は、この国中枢の人間ではない。だから、彼を使いたいのならば、彼自身に直接交渉しろ」
 その理由には、もはや何も言えなくなっていた。いくら罷免したから、とはいえども、普通は王家なりその組織のトップが同席して、内容の確認をするべきではないのだろうか。

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