転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「そう、だったんだ」
 アランはアリアの頭を撫でる。彼はアリアよりも年下のはずだが、その仕草は本物の兄のようだ。
「まあ、僕自身も君と同じような立場だったのかもしれない。でも、たぶん僕自身は仲良くしてたつもりだったんだけれど、な。どういうつもりで、あいつらは俺と付き合っていたんだろうか」
 アランはそう呟き、アリアはしまったと思った。そういえば、アランもまた恵まれ、そして望まれる道を進んでいた人物だった。
「ごめんなさい」
 アリアはアランを見た。するとアランはきょとんとした目でアリアを見返した。
「ごめんなさい。昔の話をすべきではなかった、わね」
 彼女はアランの眼を直視できなかった。何を言われるかわからない、少し怖かった。だが、うなだれた彼女に、
「大丈夫」
 と、アランは声をかけた。
「まあ、もう今更な話だ。もちろん、が受けてきた仕打ちは酷いもんだし、俺もあいつらの心の中ではどう思われてきたのかはわからない。でも、もうこの世界にあいつらは来ないはずだ。来たとしても俺らのことはわからないだろう。だから、アリアもこの世界をもっと楽しもうよ」
 アランはアリアを抱き寄せた。もう、どちらが年上のなのかは関係なかった。ただ、二人ともに互いを必要としているし、隣にいると安心するのだ。アリアは彼に身を任せた。
「そうね、と言いたいけれど、今はどうにかしてこの内乱を対抗できるかを考えない、とね」
「ああ、そうだな」
 アランの声は彼女にやさしく響いた。
 (おそらくこの戦いでは、誰しもがハッピーエンドになることはない。でも、誰かが傷つくことは出来るだけ減らしたい。それが私にできること。そのためには、誰かに『甘える』ことも覚えなきゃ、ね)
 彼女はアランに抱かれている状態で考えて、決意した。


 それから数日たった後、スフォルツァ領の騎士たちがバルティア領へ到着した。
 送られてきた騎士たちはかなりの精鋭ぞろいで、一度バルティア領の騎士たちと手合わせをしたのだが、遜色はなかった。
「これだったら、実戦形式での大規模な演習だけでいいかな」
 現場を見ていたアランが副官へそう言う。元王立騎士だった彼がそう言うのだから、そうなのだろう。ちなみに、アリアもまた、久しぶりに体を動かすという目的で、アランにこの後手合わせをしてもらう予定で動きやすい服装だった。
「そうなの?」
「うん。というかたぶん、その逆で前公爵殿の方が数よりも質、がこの反乱の終息に重要だと言っていたと思うよ」
 その言葉に、一瞬アリアは驚いた。父親がそのようなことを考えついた経緯への疑問と、あのわずかな会話の中で伝えた謎について不思議に思った。その様子を見たアランは、アリアの不思議そうな顔に驚きつつも言う。

「ずいぶん前、あの方は国王に反発している数人の貴族を排除するために、あの方自身が追い落とされる真似をしたんだよ。その方が今回の内乱の終息に向けて動き出すって言ったら、もう『頭で考えるしか勝ち目はない』、すなわち頭脳戦になるっていうことを伝えたかったんじゃないのかな。だから、こんな辺境であるバルティア領を最終決戦の場に選んだんだと思うし、自分の生まれた土地が戦場になるのが嫌なら、頭を使って被害を最小限にして戦え、っていう意味のメッセージだと僕は思ったよ」

 アリアはアランに指摘されて、あの事件・・のことを思い出した。確かにあの事件の時、方法は間違ったとはいえ、結果的にセレネ伯爵を守った。つまるところ、父親はいろいろと性格が濃い人の中に紛れ込んで、思いっ切り印象に残りにくいものの、かなりのやり手だったのだ。
「なるほど、ね」
 アリアは納得し、頷いた。
「じゃあ、一つ私からもこんな作戦どうかと思うけれど、どうかしら」
 と、その作戦内容をアランに耳打ちした。すると、アランの顔色が変わる。
「そっか、その方法があるのか」
「ええ、本当ならばいざとなったときの切り札だけれど、ここで切った方がより有効だと思わない?」
 アリアの言葉に、アランは強くうなずく。
「確かに今切っても後で切っても同じ効果ならば、今切っておくほうがいいかもしれないね」



 そのころ、王宮では―――――
「陛下。より手紙が来ております」
 監禁中の国王の元へセレネ伯爵夫人レリによって一通の手紙が届けられた。通常のルートでは没収されかねない状況ではあるものの、監禁されている一角に見張りはいなかった。正確に言うと、見張りは機能・・していなかった。ディートリヒ王はその差出人を見て、息をのんだ。その相手からくるとは思ってもいなかったのだ。彼女は手紙を渡したのちも退出しなかったが、ディートリヒ王は咎めなかった。王は手紙をさっそく読み、満足げな顔で頷いた。
「どうされたのですか?」
 彼女は少し不思議そうに尋ねた。それに対して王は、
「とうとう彼女が動いた」
 と答えただけだったが、レリ夫人は理解したみたいだった。満面の笑みを浮かべて、
「そうですか。それはよかったことですね」
 というと、王はほっとした顔になった。そして、落ち着いた声――――それも何かつきものがごっそり落ちた声で言う。その言葉には、娘の婚約でさえ動じなかったレリも驚いた。

「ああ。これで私は責任を取って、王位返上できる」

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