転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「何故そこで君は固まるのかね?」
 案の定というべきか、マグナムが突っ込んだ。
「あ、いえ。すんなりと了承していただけるとは思わなかったので」
 アランは茫然としながら言う。すると、マグナムは、
「いや、少なくともこちらの事情を理解していただけているようなので、この先どのような形で婚約話が持ち上がるかが全く見えていない。軍の合同演習の件はともかく、婚約の件はバルティア公が了承しているのならばこちらは構わない」
 という。それに対してアリアは驚き、固まる。まるで本当の・・・婚約のようではないか。しかも、アランも否定せずにええ、問題ありませんというではないか。
「こちらは『政略結婚がいやならば、自分で好きな人間を然るべき立場にせよ』というのが家訓なようなものでして」
 彼はにっこり笑うとアリアの手を取る。その手に震えはない。アリアの頭の中は混乱せざるを得なかった。何故彼は自分に対して微笑むのだろうか。まるで本物の婚約のようではないか。自分はベアトリーチェヒロインではない。
「すでに王太子殿下も婚約されていますし、あなたのご子息であるスフォルツァ公爵も成人を迎えることになるので、これから見合い話がわんさか舞い込んできそうですよ」
 そう、ユリウスは一応当主の身であり、諸々の事情により当主代理の地位は誰もついてない、もう少しいうとこの度重なる混乱のおかげで成人を迎えることはできていない。しかし、今の貴族(正確に言うと一年前のリーゼベルツの状態)の有望な『貴族の子息市場』のトップはすでに成人を迎えているアランだとしても、ユリウスも形はどうであれ、一応名門公爵子息だ。それを考えると、未婚女性たちの眼は二人に向くことになるであろう。そのため、アランはいち早く逃げ出したいと考えているみたいだった。
「いい加減に好きな人未来の妻を連れて行かないと好きでもない見合いをさせられそうで怖いんですよね」
 アランは赤裸々と事情を暴露した。なんなんだ、その家訓はと思ったのはアリアだけでないだろう。その証拠にエレノアとマグナムの眼は点になっていた。ほかの知らない誰かと婚約させられるよりはかなりましだ。それに、なんだかアランと離れたくなかったのだ。自分の願いが叶ったのだろうか、と少し遠い夢を見ているような気分だった。
「それでアリアはいいのか?」
 アランの心意気?を聞いて、マグナムはアリアに尋ねた。アリアは気持ちを切り替え、はい、と頷く。どちらにせよ、この状況ではそれしか方法はない。そして、この先どのような状況になろうとも、自分たちスフォルツァ家は文句を言う立場にない。先ほどの気持ちは持っていても、いざというときの覚悟は常にしておくべきだろう。隣のアランを見ると、アリアの考えていることを理解したのか、まるで大丈夫だ、何も心配することはない、と言いているかの如く手を強く握られた。


 それから数刻の間二人はエレノアとマグナムから状況の説明を受けた。どうやら国境で尋ねたのが最後の真新しい情報だったのだが、現在はそれよりもはるかに深刻になっているようだった。
 まずはダリウス王子について。彼は反乱軍であるフレデリカ一派に捕らわれて以降、消息がつかめなかったものの、ある地点における戦闘において完全に人質の役割を果たしていたという。そして、交渉の末、王子は解放されたものの、かなり衰弱しているようで王都に戻されて療養中らしい。
 そして、騎士団の方も間者が入り込んでいたらしく、一部の騎士が壊滅的な被害にあったらしい。ちなみに、セルドアやユリウスを含む一部の騎士は命からがら逃げのびているらしく、リーゼベルツ国内のどこかに入るらしいが、今はたとえ同じ王立騎士所属であろうとも彼ら以外は居場所を知ることはできていないという。
 最後に、王宮。前の政変で追われた宰相一派の残党により、再び政変が引き起こされ、クレメンスをはじめとする一部の相は地位をとどめているものの、国王含めアランの父親であるバルティア公爵など多くの親国王派は地位を追放されるか監禁状態にあるという。しかし、今回は相手が狡猾というべきか、かなり内密に行ったらしく、スフォルツァ家の二人もベアトリーチェの両親であるセレネ伯爵夫妻がいなければ気づかなかったらしい。

 そんなリーゼベルツの情勢を聞いて、アリアもアランも愕然とせざるを得なかった。
「まさか、ここまで、とは――――」
 アリアのつぶやきにアランも同意した。
「全くだ。そうすると、確実に安全だと言えるところは、北部だけだ。それもこのスフォルツァ領とバルティア、いや。父上が監禁状態、という事はあそこも危ない」
「ええ、そうだわね」
 アランはバルティア領に行く考えも最初は言っていたが、確かに危ないのではないのか、とアリアも思っていた。しかし、
「あそこは『最後の砦』になると思うが」
 と、切り込んだのはマグナムだった。アリアもアランも驚いた。
「クワンツァという地名を知っているか?」
「クワンツァ、ですか?」
 マグナムが二人に尋ね、アランは聞き返した。マグナムはそんな彼の様子を見、アリアの方へ視線をずらした。
「バルティア領の隣にあるミゼルシアの飛び地ですよね?」
 アリアは記憶の片隅に残っていたことだけを言った。しかし、マグナムにとってみれば十分だったようで、その通りだ、と言われ、アランに羨望のまなざしで見つめられた。
「そうだ。あの土地はうっかり王家所有の土地、と思われがちだが、れっきとした外国になる」
 確かに、クワンツァという地名があり、そこがバルティア領と隣接した王家直轄地のすぐ南側にある事から、うっかりバルティア領や王家直轄地と間違えてしまいやすい。しかし、理由は不明ではあるものの、確かにミゼルシア王家・・所有の土地がある。そのため、数代前の国王からクワンツァの返還交渉が行われているのではなかったか、と思い出した。
「ミゼルシアの国王の庇護を受けるつもりはないだろうが、最悪そこに逃げ込めばよい。それに、逃げ込まないにしても相手が南方の王家直轄地を押さえている、という事は、北方はそれだけ手薄になる。いくら相手が数に物を言わせていても、王宮の方は所詮、諸国に手出しをさせないために内密に行っているために、軍を置いておけない。だからと言って、北方に向かわせることになるとセリチアをはじめとする北方に喧嘩売ることになる。あいつらはそれだけは避けたいはずだ」
「ならば、僕たちは――――」
 アランはアリアを見た。アリアもその可能性を考えてしまった。
「聖戦、ですか―――」
 アリアの言葉にアランは彼女の手を強く握った。アリアの意味することが分かったらしい。
「確かに、私たちが北方で軍事演習・・・・を行ったとしても諸外国の方へは問題ありませんでしょう。しかし、それを行ったところで反乱軍には何の影響があるのでしょうか」
 アリアはそれに直接的な意義が見いだせなかったし、間接的にもメリットがあるのかどうかさえ疑わしい。

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