転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 二人が祈りを捧げている間に、侍女たちに温室へ紅茶と菓子などの準備をするように言い、アリアはアランと共に中庭へ来た。
「どうなっているのでしょうか」
 アリアはこの屋敷といい、ここに来るまでの街の雰囲気がおかしいことに気づいていた。おそらくはこの内乱が悪い方向へ作用しているのかもしれないと思った。
「そうだね。僕も宿泊した街で情報を求めてみたけれど、情報統制されているような気がしたよ」
 アランもまた、おかしな状況になっていることに気づいてみたいだ。
「僕が経験してきたこととしては、二回目かな」
「えっ?」
 アランの言葉に一瞬アリアは聞き返してしまったが、それは前世に関わることだとすぐに気づいた。
「もちろん、アリアと同じ国の同じ時代から来てはいる。だけど、ある意味ありがたいことに、僕は大人の事情・・というのも見たことがあるから、それを思い出したんだよね」
 アランは遠くを見つめおり、望郷を感じさせるようなまなざしだった。
「そうなの」
 アリアにはアランの前世だった人の事情は知らない。逆もそうだ。アリアの前世だった『相原涼音』のことを彼は知らない。知らなくていいのだ。だから、その『事情』とやらに深く首を突っ込む気はなかった。するとアランは不思議そうな顔をした。
「聞かないんだ」
「なんで?」
「普通、いやの周りの人たちは聞いてきたからだよ。前世現世も」
 それこそアリアにとってみれば、どうでもいい事実だった。アリアはアリアなりの考え方がある。ほかの人と一緒にしないでほしかった。

「そうね、あなたも私も同じ転生者境遇よ。でも、それぞれに事情はあるんだし、別に言いたくなければ言わなければいいんじゃないの?」
 アリアは直球で言った。こんなところでグダグダ言う必要性はない。

「―――――そっか」
 アランは少し照れていた。そういうところはまだ、12歳の男の子なんだな、と思える。
「君ってやっぱりすごい、ね」
 彼は羨ましそうにつぶやく。
 そうこうしているうちに、エレノアとマグナムが礼拝堂から出てきたのが見えた。
「お母様、お父様」
 アリアは二人に駆け寄った。
「アリア」
 先に父マグナムがアリアに気づき、立ち止まった。隣のマグナムが立ち止まったことに気づいたエレノアが、こちらを見て驚く。
「お久しぶりです、父上。そしてお母様もお変わりなく」
 父親に会うのはもう何年ぶりだろうか。あの一連の事件で、父親は公爵位をはく奪され、この地に隠遁している。しかし、このように父親はおとなしくしているのに、マグナムが追い出された事件の黒幕となった人物は再び事件を起こし、死罪となっている。アリアはあの男――デビト・フェティアに対して、許すつもりなどない。
 しかし、このようにようやく会えたことについてだけは、許そう・・・
 三人は温室に用意してもらった即席の茶席に向かった。

「この領の軍を鍛えなおす?」
 エレノアもマグナムもアリアが言った、案に驚いている。確かに普通ならば、考え付かないことだ。しかし、アリアの考えそのものには反対しなかった。
「そうだな。今この領地にいるのは私とエレノア、そしてアリアの三人だけだ。ユリウスがいない今、正式にこの地の軍を扱えるものはいないぞ」
 マグナムはそう指摘した。父の指摘にアリアは納得せざるを得なかった。
 そもそもマグナムは、(形とはいえども)公爵位をはく奪された身。そして、エレノアも領内における地位ははく奪されていないものの、すでに当主代理の地位を返上してしまっている上に、実質は罪人の妻でもある。世間から見たらかなり印象が悪い。さらに、アリアも当主代理の地位をはく奪されている。そう言った意味で、かなり条件が悪い。やはりそれがネックだったか、とかなり落ち込んだ。
 しかし、そこで割り込んできた声があった。
「でしたら、の婚約者としてはいかがでしょうか?」
 アランは一応家族会議だから、と言って一歩引いていた構えをとっていたが、まさかこのタイミングで出てくるとは、アリアは想像できなかった。しかも、今彼は『アランの婚約者』と言ったはずだ、どういうことなのだろうか、と思って、彼の方を見た。
「どういう事かな、バルティアの嫡男君?」
 マグナムもエレノアも全く理解できていない状況だったみたいだ。確かに、端から見ればいい年をした貴族令嬢(ただし訳あり)を好き好んで、『自分の婚約者』だという年下男子がいるのだ。アリアでも正気を疑いたくなるだろう。しかし、アランは顔色変えずに続けた。

「そのままの意味ですよ。私の婚約者になって、バルティア領でスフォルツァ軍を育てればいいのですよ。基礎位は出来ているでしょうから、実際の戦を想定したことをするのにも、うちの領は最適ですし」
 アランの言葉に納得した。そうすれば、武官にとってもまだ見ぬ相手や環境での戦、という経験を積むことが出来る。
 実は、アリアの方にもメリットがある。アランとアリアはもしここで本当に婚約したとしても、かゆくもいたくもない。反対を言えば、婚約解消がいつでもできる相手なのだ。このご時世なので、公にしなくて済む。そのため、この内乱が終わったら、人知れず婚約解消もできる。という事から、公爵令息という優良物件でありながら、ここまで条件がそろうのは実に難しい。(これ以上、厄介ごとに巻き込まれたくない意味で、婚約破棄することを前提として)お付き合いするには十分な相手だった。
 アランの言葉にマグナムとエレノアがどう思ったのかは、分からない。しかし、二人とも数秒間固まっただけで、
「それしか方法ないね」
「アリアがいいというのならば、それしかないわね」
 と口々に言った。
 その言葉に、アリアも言った張本人であるはずのアランも驚きで固まっていた。

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