転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「ミスティア、が―――――」
 ディートリヒ王はセルドアが言った言葉に顔色を悪くした。クレメンスはそんな彼に、ある推察・・を言った。
「恐れながら陛下。あの女の元へ向かったのは、恐らくミスティア王女殿下ご自身の判断、もしくは計画的に何者かによって準備されたものである、と思います」
 その言葉に、王も宰相も驚きの色を隠さない。そんな反応を返されると思っていたのか、クレメンスはそのまま続ける。
「おそらく王女殿下には多くの護衛や侍女をつけさせました。しかし、その侍女たちさえ帰ってきていない、という事を考えると、彼ら・・の仲間と途中、もしくは最初からすり替わっていたのだと思います。そうでなければ、あまたの侍女や護衛が今現在、物言わぬ状態になっているでしょうが、そう言った大量殺戮の報告は上がっていません」
 そして、その言葉ではじかれたように、宰相が顔を上げる。
「よく考えてみると、この前我々が王宮へ帰還した時に殿下だけなぜか自由に動かれていました。そのことを踏まえると、宰相一派と何らかの取引をしたのかもしれません」
 宰相が思ったことを言うと、ディートリヒ王も頷く。彼も気になっていたのだろう。
 ディートリヒ王は少し逡巡した後、セルドアに尋ねた。
「して、軍勢はいかほどだ」
「軍勢は二千ほど。密偵の報告によれば、前の宰相の一族とそれに追随するものが多くを占めているそうです」
 セルドアは淀みなく答える。クレメンスも頷いていることから、かなり信ぴょう性が高い話なのだろう、と王も宰相も理解した。
「ただ、何故このタイミングだろうか、そして何故ミスティアは我に反旗を翻そうと思ったのか」
 その王の問いには誰も答えられなかった。誰にも全く理解が出来なかったのだ。
「まあ、あれこれ考えているよりも、当然、討伐せねばならない」
 王の呟きに、セルドアもクレメンスも、そして宰相も頷く。たとえ身内であろうが、王に反旗を翻した以上、討伐されなければならない。ましてや、各国にディートリヒ王が正当な王である、という声明お墨付きをもらった以上は。
「しかし、今回陛下が出陣なされてはなりません」
 セルドアは口を開きかけた王に警告した。大体自分だったら、こうするであろう、と思っていたセルドアのみが先手を打つことが出来、他の2人はただ唖然として王とセルドアを見るだけであった。
「前宰相一派の企みがどうであるかはわかりません。しかし、これ以上陛下が王都を空ける必要性、いえ、空けてはならないです」
 セルドアはいつもの彼とは違って、至極真面目な目をしていた(もっとも、彼は王の御前で笑う回数が少ないのだが)。セルドアの言葉に王は納得し、あっさりと引き下がった。
「分かった。ではだれが一番適任だと思うか」
 その問いには少し迷ったが、セルドアはそれでも答えた。
「王太子殿下とダリウス王子殿下かと」
 その答えは王自らの出陣を断られていたので、彼自身も想像はしていたらしく驚かなかったものの、それでも身内同士の戦いを想像してか、少し唸った。
「もちろん、私も出陣いたします。今回出陣する将として、両殿下、私と副団長で、書記官は置いていきます」
 セルドアはそう言った。
「そうか」
 王は渋々ではあるが納得した。しかし、セルドアはさらに続けた。

「そして、親国王派として2公爵、グレルモナ公爵とスフォルツァ公爵・・・・・・・・を同行させます」

 その言葉には、王や宰相のみならず流石のクレメンスも驚いていた。
「何故、そのような」
 王は驚愕の表情をして言った。セルドアはあまり理由を言いたくなさそうだったが、やがて、
「一応、あの女はスフォルツァ家の人間です。いくら面識がなくても、当主本人が汚名を雪ぎに行く、それはいつの世でも当たり前でしょう」
 セルドアはそう厳しくそう言ったが、クレメンスにはそれがセルドアなりに考えた結果の決断だったと、彼の爪を見て理解した。彼は深く手を握りしめているのか、掌には血が滲んでいた。
「そう言えば、にはどう言い訳する?」
 王はそうか、と呟き、さりげなく話題を変えた。もちろん、話題を変えたとはいえども、同じ身内の話だった。
「すでにバルティアの小童を護衛兼情報操作役として潜らせております。しかし、クロード殿下が同時に北へ入ったという話を聞いておりますゆえ、どう転ぶかは彼ら次第かと」
 それにはクレメンスが答えた。アランがミゼルシアへ留学・・したのは、クレメンスが内乱の情報を察知していたからだった。
「そうか。まあ、まあかなり早い段階でばれることを想定しておこう。そして、彼女が帰ってきたら、すぐさま内務相補佐につける」
「御意」
 王の言葉に内心ガッツポーズを決めたクレメンスだった。

「そして、すぐさま南方軍に申し入れよ」
 その言葉に、宰相もセルドアもクレメンスもきちんと身繕いする。


「お前らの勝手にはさせん。いかなる要求があろうとも、我の前にて直接言え」
 王の言葉に三人とも御意、と頷く。




 その翌日。
 二千の反乱軍に対して、三千の軍を王の嫡子であるクリスティアン王子、その弟ダリウス王子を総大将、実際の指揮官としてコクーン騎士団長兼軍務相が率いて南方へ向かった。人知れず政変が起こった前回とは異なり、今回は王都に住む平民まで反乱の発生が伝わっており、人々は不安に書き立てられていたものの、国王の派遣する騎士や兵士に武運を託すものも少なからずいた。
 その派遣される国王軍の中には若きスフォルツァ公爵の姿もあり、出陣式の最中、未婚の貴族女性たちから最も視線を集めたが、彼の眼には誰も入っておらず、ただ淡々と大隊長の位を拝命していた。



 出陣から数週間後、誰かが引っ掻き回すのか、国王軍にとって戦況は芳しくなく、内乱が長引いていた。そして、一通の知らせが国王の元へもたらされた。
「ダリウスが行方不明だ、と―――――」
 その言葉に隣で聞いていた王妃は卒倒し、侍女に支えられつつその場を後にした。
 手紙によれば、野営地で奇襲を受けたらしい。

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