転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 翌日、アリアは母エレノア、『相原涼音』がアリア・スフォルツァとして転生してからは一度もあったことのない祖父ジェラルド共に、裁判の被告人として議場にいた。ジェラルドは正装としてモーニング、エレノアとアリアは黒色の肌があまり露出していないドレスを着用しており、三人とも今回の件に対して自らの意思はなかったが、どうしてそう経緯になったのかはわかっていたので、どのような処分が言い渡されようとも文句を言うつもりはなく議場においても堂々としていられた。
 裁く側にはディートリヒ王、内務相クレメンス・ディート伯爵、軍務相兼王立騎士団長としてセルドア・コクーン卿、法務相、財務相、そして公爵家を束ねる筆頭公爵としてバルティア公爵がおり、傍聴席の来賓として、『白き土蜘蛛』の頭領イサク、スルグラン国執政・メッサーラ、スベルニア皇国から皇帝代理としてかの国の宰相が出席していた。恐らくスベルニア内部でももめているのだろうと考えられ、今回の裁判によってはリリスを廃す動きが起こるのではないかと、アリアは考えた。

「では、先だっての事変に関して、王位の簒奪を目論んだ・・・・という罪でジェラルド・スメルニコ子爵、その娘エレノア・スフォルツァ前公爵夫人、そして元公爵代理で元王秘書官のアリア・スフォルツァ3名の裁判を始める」

 王の宣言により裁判は始まった。裁判の内容は簡単だった。一応、今回の事変において、宰相一派が2国に持ち掛けた提案の書かれた手紙密書おかげで、ジェラルド自身の意思があるかないかは別にして、彼らに擁立された元王族という事を強調させており、傍聴席にいる非常に貴族からのジェラルドへの心象は悪く、かなり非難的な視線が向けられている。それに増して、昨日の首謀者たちも証言・・を得ているので、状況証拠としては非常に悪いと認めざるを得なく、ジェラルド自身はそれに対して否定も肯定もしなかった。そのため、傍聴している人たちはそれが本当の事なのだろうと思っている。しかし、アリアはその証拠・・は誰かの抜け道作られた証拠ではないかと疑ってしまった。
(今の裁判の状態では、貴族たちからの視線がかなり非難的だ。しかし、その証拠だけで王は何がしたいのか)
 アリアは法務相の提示する証拠文書について、もう一度頭から考え直した。
(二つの組織への宰相一派からの手紙。そして、宰相一派の発言。もちろん、二つの組織へあてた手紙は双方の代表の言葉と同じものになる。ここで、セリチア・グロサリアの名前が挙がらなかったのは、不幸中の幸いにしても何故その国からの手紙が必要なのか、そして、何故双方の代表はこの裁判へ出席・・しているのか)
 しかし、いくら考えても理解が追い付かなかった。
 そうこう考えているうちに、裁判は終盤に差し掛かっていた。考えている間も傍聴席からの視線は非難を含んだものだったので、どうやら非常に立場が悪いみたいだと、他人事のように思ってしまった。まあ、どうせここで悪あがきをしたところで、結果は覆らないだろう。祖父もそうだが、それ以上に母や自分もこの事変には巻き込まれた側の人間だ。しかし、王がそのように判断するのならば、それはそれで仕方がないとも思った。歴史はいつでも同じようにたどる。今回もその繰り返しの一つだろう。
「では、被告人から反論する事はあるか」
 内務相クレメンスがそう尋ねた。その質問に対して、3人とも首を横に振った。それを見たクレメンスは本当に大丈夫なのか、という意味を込めた視線を3人に向け、最後にアリアの方へ視線を向けた時、彼女へ、心配するな、大丈夫だと目で訴えている気がした。

「無いようならばここで、判決を下す」
 王はそこで区切った。傍聴席からは声は上がらなかったが、極刑を受けさせてやれ、という意思が感じられる。

「3名とも有罪とする。ジェラルド・スメルニコ子爵については、爵位はく奪の上にタナルヴァ修道院への流罪、エレノア・スフォルツァ前公爵夫人については、王宮への出入り禁止の上、スフォルツァ領での謹慎を命じる。そしてアリア・スフォルツァについては、全ての職務を解き、またいかなる場合でも公爵の地位を引き継ぐことを禁ずる。以上だ」

 その宣言にアリアは唖然とした。そんな方法があったのか、と。確かに他国との関係性を考えれば、どうしても昨年の調停のことを考えなければならない。しかし、それはアリアの力がすべてではなく、たとえ非難が出たとしても、王自身の功績にしてしまえばいい。それなのに、王はアリアを残す・・ことにしたらしい。王のしたいことがわからなかった。
 ちなみに、この場合だと、リリスもまた単純にスフォルツァ家の継承権を失うことになるであろうが、そこはスベルニア皇国との交渉によるだろう。アリアの知ったことではない。
 傍聴席からは残念がる気配が大きかったが、アリアもまた驚いているくらいだから、それも仕方のないことだろうと思った。



 傍聴席にいた貴族たちと退室した後、議場にはアリアたち三人と裁判官役の王と内務相、法務相、騎士団長が残っていた。
「あなたは何が狙いなのでしょうか」
 最初に口を開いたのは、ジェラルドだった。どうやら祖父も気付いていたらしい。
「狙いなどはただ一つだ」
 王は叔父であるジェラルドに対してはぞんざいな口調になった。
「アリア・スフォルツァを残しておくための方法だ」
「何に使うのだ?」
 王はたった一つの答えを言い、その答えにジェラルドは今にもつかみかかりそうな口調で詰め寄った。
「後々は外交官として役に立ってもらうつもりだ」
 王はアリアの方を見て言った。アリアはその発言に驚いたが、同時に納得もした。確かに功績を自分アリアのものとするのならば、外交ではそれは大いに役に立つ。ある意味アリアは不本意だが、全員にとって最良の選択ともいえよう。
「アリア姫、あなたはどうなのですか」
 クレメンスが問う。アリアはエレノア、ジェラルドをまず見て、それからセルドア、クレメンス、そしてディートリヒ王を見た。
「私は問題ありません」
 アリアはそう言った。
「それが国外に関しては最良の選択だと思いますし、国内にとっても最良の選択だと思います」
 今のアリアにはそう言い切れた。
 ジェラルドは少し不満そうな顔をしたが、エレノアも妥当なところでしょう、と呟き、アリアの復帰を望んでいるセルドアやクレメンスはよく言った、と満足げな顔だ。

 こうして、それぞれの事情が絡まる裁判は終わり、無事に家へ戻ってくることが出来た。久しぶりの実家には、ある思いがけない人がアリアを待っていた。

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