転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

1

1
 結局、セリチアで新しい年を迎えてしまった。リーゼベルツでは、いつものような夜会が開かれ、その上座には宰相がいたらしい、と風の噂で聞いた。しかし、ディートリヒ王をはじめとする一行がセリチアに追放状態となりながらの開催だったため、参加拒否をした貴族も多かったとも聞いた。ここでもまた、宰相たちの思惑外れたという。
 アリアたちは王宮夜会の話をクロード王子からそう聞いた。
「そうか」
 ディートリヒ王はただただそう呟いた。彼の表情は以前に比べればやや明るくなったような気がする。おそらく、不本意なことではあるものの、ここでの生活に慣れてきたからだろう。アリアもまた、前と比べれば思いつめるようなことは無くなっていた。
「こちらとしてはこの一か月の間にでも片をつけようと思う」
 ディートリヒ王はクロード王子に言うと、彼はひどく驚いた顔をした。
「このタイミングでですか」
「君なら、何故このタイミングにするのか、分かるはずだと思うが」
 王は隣国の王子にそう問いかけた。クロード王子は少し考えて、
「もしやスルグランの内紛ですか」
 と言った。
 スルグランの内紛、というのはリーゼベルツで疑惑の夜会・・・・・が開かれた直後に勃発した。
 事の発端はほぼ一年前の調停の場だ。かの国はそこに軍師・・ヨセフを寄こした。どうやら自称・『軍師』というのは間違っていなかったらしく、実際に自国内でも『参謀長』という役職についていたらしいのだが、その調停の場においてセリチア・グロサリアのどちらかとの交渉できないどころか、リーゼベルツの小娘にしてやられた、ということで国の長である執政・メッサーラに罷免されていたのだ。その彼と、彼を信奉する軍人たちはメッサーラへ反旗を翻し、ヨセフの統治を望んでいるのだ。グロサリアと同じく元は軍国主義をとっていたので、かなり血の気が盛んな男たちが多い。そんな彼らの内紛なのだから凄惨だろうと思われた。アリアは自分が引き金になっているとは分かっており、指をくわえてみているのは性分に合わなかったが、ただそうしているほかなかったのが現実だった。

 しかし、そんなスルグランの内紛がディートリヒ王にとってみれば、好機だという。もちろん、彼の独断ではなく文官のトップであるクレメンスや武官のトップであるセルドアの意見も入れての判断らしい。二人とも頷いている、
「その通りだ。だから、あえて戻るのだ」
 ディートリヒ王は静かにそう言った。すると、わきから予想だにしなかった声が上がる。
「勝算はあるのですか」
 青年にしては高い声が空を切った―――今まで静かに聞いていたウィリアム・ギガンティアがそう反論した。
「勝算ですか。そうですね、宰相一派を追い落とすための罪状も実はもうすでにそろえてあります。それに、最短距離で戻ろうと思うと、宰相一派の思うつぼでしょうし、南方から行こうと思うと、これもまたスフォルツァ領であるので、いささか都合悪いですね」
 セルドアは軽やかな声で言った。『スフォルツァ領』という単語にはいまだに俯いてしまう。しかし、先日までとは違って思いつめてはいない。アランがアリアの方を心配そうに見ていたが、大丈夫、という風にほほ笑んだ。
「ですので、その中間地点、セリチア・スベルニア間の国境を目安に突破していきたいと思います」
 セルドアは笑みを浮かべながらそう言った。彼が微笑んで言うと、なぜか絶対に大丈夫だという気がしてくる。

 クロード王子はそのあとすぐに帰って行った。何か必要な支援があったら喜んで引き受ける、とまで言ってくれたが、また何か変なものを要求されるのではないのかと、全員がひきつった笑みを浮かべていた。
 彼が去って行った後、ディートリヒ王は改めて全員に向き合った。

「これからは出来るだけ大きな町に泊まるつもりはない。だが、もう少しすれば、リーゼベルツに帰ることが出来る。それまで一緒に戦ってくれるか?」

 その問いに、いまさら答えは不要だった。ほかの人たちも同じで、何を言っているんだか、という顔で、王を見ていた。

「転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く