転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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「今現在、スフォルツァ領はどうなっているのだ」
 粗方セルドアから情報を聞き終えた後、ディートリヒ王は彼に尋ねた。その言葉に、あるものははっとしアリアを見た。アリアは顔色こそ変えなかったが、流石に自分の実家の事だったので、内心は穏やかではなかった。それに気づいたらしい隣のクレメンスが、
「下がっているか?」
 と、小声で尋ねてきたが、首を横に振り、その場にとどまることを選択した。二人のやり取りはセルドアも気付いていたらしく、アリアがとどまることを選択した後、
「今のところは何もありません。しかし、最近宰相一派の手の者が出入りしていることを考えれば、また何かしらの動きがあるのかもしれません」
 と答えた。護衛騎士の一部が唸ったが、セルドアはそれを無視して続けた。
「アリア姫がおっしゃられてていたそうですが、確かにリーゼベルツの王宮内を見ていると宰相一派も一枚岩ではなさそうなので、誰を担ぎ出したいのかが全く見えない、というのが現段階の状況です」
 セルドアは騎士団長を罷免されたものの、王立騎士としての身分はあった。そのため、さまざまなところに潜入していたのだ。ウィリアムもそれに同調した。
「確かに僕もそう思います。あくまでも僕の意見になるんですけれど、法務における宰相一派への評価は分かれています」
 そういう彼に皆の視線が集まる。
「それはどのような?」
 クレメンスが尋ねた。すると、ウィリアムは顔色を変えずに、

「『過去を清算した人物』、もしくは『はた迷惑な混乱を招いた集団』」

 と言った。その言葉に、ディートリヒ王まで渋面を作った。
「まあ、確かに間違ってはおらんが、下の者たちに言われると、少し、いやかなり申し訳なかったと思う」
 そう王は呟いた。アリアを含めて、誰しもがそれに頷いたと思われたが、それを口に出せるほど正直でもない。ほとんどの人は下を向いていた。
 その後も話し合いは続き、もうしばらく様子を見ることとし、新たに加わった一行もこの城にとどまることになった。


 それから数日後―――
 アリアは特にすることがなかったので、城主夫人と共に中庭へ散歩をしに出ていた。今までは、あまり城の外へ出たことがなかったので、伯爵夫人に案内してもらって、中庭まで出てみることにしたのだ。
「この辺の花は綺麗ね」
 アリアは秋にもかかわらず真っ赤に咲き誇る花に目を奪われていた。リーゼベルツではセリチアよりも南方に位置するものの、この時期にはほとんど花は咲かない。しかし、この国で未だに咲き誇っており、少々羨ましかった。しかし、伯爵夫人は『この辺の』という言葉を、『この一角の』という風に思ったのか、
「そこは5代前の当主夫人が設計されたと聞いております」
 と説明してくれた。アリアは伯爵夫人の返答を聞き、一瞬何か違うと思ったが、夫人の言葉を否定するのは憚られたので、
「あら、そうなんですか」
 と、少し興味深そうに返しておいた。正直、アリアはこの花のようなはっきりとした赤色が嫌いなので、絶対にこんな花壇は設計しないし長居もしたくなかったが、一応滞在させてもらっているわけだし、後学のためだと思って、じっくりと眺めていた。
「そういえば、窓から温室が見えたのだけれど、あそこにも花はあるのかしら?」
 伯爵夫人は、そのアリアの問いに満面の笑みで頷いた。
「ええ、ございますよ。南方原産の果実の木もありますよ」
 そういって、案内してくれた。温室には様々な果実の木があったが、その中でも目を引いたのは、アリアが見たこともある白い花の木だった。今は花しか咲いていないが、もう少ししたら黄色い果実が出来るのだという。かなり甘くておいしいらしい。
「綺麗―――――」
 アリアは『涼音』の実家にも植えてあったミカンの花によく似た花を咲かせる木に思わず目を細めた。伯爵夫人はそんなアリアの様子に、
「お誉めいただきありがとうございます。今度リーゼベルツへお帰りの際に苗をお渡しさせていただきますね」
 とはにかんだ。その言葉に思わず、アリアは伯爵夫人に抱き着いてしまった。
 その後、伯爵夫人と共にお茶を温室で頂いた。
「ここはね、先の王妃様が訪れたこともあるらしいの」
「先の王妃様、と申しますと、5年前に身罷られたソフィア王太后さまの事でしょうか」
 アリアはセリチアの系譜を思い出しながら、尋ねた。伯爵夫人はええ、と言った。あっていたらしい。アリアはかなりほっとしていた。
「私はまだ嫁いで間もないころだったから、義母ははや夫について回るのが精いっぱいで、年下である貴女がしっかりしているところを見ると、かなり羨ましく感じるわね」
 そう言ってほほ笑む彼女はかなり若々しく見えた。


 その後は伯爵夫人と共にお茶をすることもあり、時にはクレメンスやセルドア、アラン、そして夫人の夫である伯爵も加わることもあり、しばらくは笑いの絶えない場内となった。




 リーゼベルツを離れて半年以上たった今。内乱の足音が聞こえていない場所では、ゆったりとした時間が流れて行った。もちろん、この事変のおかげで新たな戦乱が幕を開けることは誰しもが予想していた。しかし、その戦によって何が失われるのかはまだわかっていなかった。

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