転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 クロード王子が連れてきたのは、セルドアやウィリアムをはじめとする数人の貴族や文官たちだった。アリアも含めて、その場にいた者たち(特に護衛騎士たち)は驚くとともに、みな喜んでいた。
「馳せ参じまつることが遅くなり、申し訳ありません」
 おそらくこの一行をまとめていたのはセルドアだったのだろう。彼が代表でディートリヒ王に挨拶をした。王は頷き、
「いや。そなた方が来てくれるのを待っていた。しかし、何故今、この時期にここまでたどり着けた」
 とセルドアに尋ねた。王からの質問に、セルドアは一瞬ためらった。しかし、
「一つは宰相のやり方に耐え切れなくなったものを集めるのに時間がかかったため遅くなったのと、もう一つ。クロード王子のご協力を得るのが少し難しかったためで」
 そんなセルドアの言葉に、全員の視線がクロード王子に向かった。全員の視線を受けて、クロード王子は不遜に笑った。アリアはセルドアが躊躇った理由に気づいた。セルドアは昔起こった出来事により、クロード王子のことが嫌いなんだっけ、とセルドアに同情した。
「ええっと。決してこの騎士団長・・・・さんを疑っている、という訳ではないんだけれど、一応僕としてもセリチアの王子としての体面もあるので、今回は勝手だと承知しておりますが、取引させていただきました」
 クロード王子は全員の顔を見ながらそう言った。
「な」
 ディートリヒ王は案の定、言葉が出ないほど驚いていた。
「まあ、とはいえども、それは成功してもしなくてもどちらでもよい取引です。なんだか気になりませんか?」
 クロード王子は驚くディートリヒ王を無視して続けた。そういと、すぐにアリアの方に向かってきた。アリアは嫌な予感に背中がぞくぞくした。

「やはりアリア・スフォルツァ公爵令嬢、聡明なあなたをセリチアの王宮にご招待してもよろしいでしょうか?」

 アリアはその場から逃げ出したかった。なんでこんな羞恥プレイをされなければならないのか。怒りと恥ずかしさで真っ赤になったが、それを指摘する者は誰もいない。ちなみに、後々思い出したのだが、クロード王子が言った言葉は、彼のルートにおいてヒロインが告白されるときの言葉だった(思い出したときもかなり身もだえた)。

「待たれよ。それはどういう意図で言っておるのか」
 ディートリヒ王は彼の言葉に正気を取り戻し、彼に言った。
「どういう意味かはあなたが一番お判りでしょう。今回のリーゼベルツの事変は、もともとあなたの先代と先々代の不始末。これ以上、スフォルツァ公爵令嬢をリーゼベルツに煩わせる必要はないと思いまして」
 クロード王子はにっこりと笑った。部屋のわきではアランが、クロード王子の後ろではセルドアがかなりの殺気を放っている。相当クロード王子の事が嫌いらしい。ちなみに、ウィリアムはにやにやと笑っているだけだ。
「で、あなたのお気持ちをうかがっておりませんが、アリア姫?」
 彼は見せつけるかのように、アリアの手を取り口づけようとした。しかし、アリアは彼の手を払いのけた。

「お断りいたします。先日の夜会の時もお伝えしたとおり、あなたの立ち位置を非常に危うく存在ですよ?」
 アリアは挑戦的に彼の眼を見た。彼はアリアの言葉にひどく興味を持ったみたいだった。否、彼はアリアのことを試しているのだ。
「あなたの派閥とフィリップ王子の派閥はそもそも御母君のご出自のことで争われていたはずです。最近はその情勢が落ち着いてきていると言えますが、いつ再燃してもおかしくない事案なんですよ。それなのに、その場に私を巻き込まないでください」
 アリアは彼の眼に答えるかのようにそう強く言った。すると、彼の眼は優しい眼差しに変わった。彼が望んでいた答えと一致していたみたいだった。
「はは、本人に二回・・も振られるとは、ね」
 彼は演技だと感じさせない笑いをした。先ほどまで殺気を放っていた二人も、流石に同情しているみたいだった。
「まあ、でも、いつでもおいでよ。僕も兄もあなたの事なら大歓迎さ」
 さらりとそう言って、クロード王子は、ではまた、とディートリヒ王や他の一行に軽く言って、去って行った。
「何がしたかったんだろうか」
 (おそらく)この中で最も表情を表していなかったクレメンスが、そう呟いた。彼の言葉に誰も真剣に聞いていることを考えると、同調しているのだろうと察せられた。

「まあ、改めて、という訳ではないが、ここまで来てくれてありがとう」
 つむじ風クロード王子が去って行って、今度は食堂に全員がそろった。情報の整理も兼ねて、ここで旅をしてきた彼らを労わろうとしているのだった。アリアは国王の右隣、セルドアの正面に座っていた。食事は海に面しているセリチアらしく海の幸料理が多く、フライや香辛料で煮込んだもの、穀物と共に炒め煮にしたものが多く出されており、リーゼベルツとは一風変わった味覚だった。また、デザートについても、焼き菓子ではなく、穀物をミルクで煮込んだ粥が多く出されていた。
 もちろん、食事だけではなく、情報整理の方についても、頭を巡らせていた。セルドアたちの話によれば、宰相一派は国王であるディートリヒ一行を追い出した後、傀儡王を立てて政を行う予定であったものの、諸国の声明により、それが難しくなったらしい。しかし、人事権などは持っていたがゆえに、セルドアをはじめとする文官武官問わず、親国王派の官吏たちを罷免していった。そうして王宮内の人事を刷新して、国王に降伏を促そうとしたものの、誰か・・が必死にかき回しているらしく、それは叶う気配がなさそうらしい。ちなみに、人質に取られている貴族たちも具体的な名前が挙がっており、そのなかには先だって疑惑をかけられたがために捕縛されたマクシミリアンも入っており、彼は今現在、再び捕らわれて王宮内のどこかに監禁中だという。

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