転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 どうやら二人の話を聞いている限り、リーゼベルツのある人物から『お願い』されたことだという。その人物は彼らにさえ名乗らなかったらしいが、この二つの組織の同盟・・により本人が得をするもの、というよりは、それによってリーゼベルツという国―――もしくはディートリヒ国王―――が不利益を被ればよかったらしく、スルグランと『白き土蜘蛛』にとって同盟を結ぶこと自体はあまり現実的にはうまみはない話だった。
 なぜなら、この周辺諸国の状況で同盟を結んだとしても、リーゼベルツへの攻撃は難しい。もし実際に、リーゼベルツを攻撃するとしたら、最大の難関はスベルニア皇国である。なぜなら、かの国を通らなければ内陸国であるリーゼベルツにはたどり着けないし、そもそも挟撃されたとして、まっとうな皇帝であるのなら、かの国に嫁いでいる『リリス』の保護、そして教会の保護という名目のために、リーゼベルツという国を無視できないはずだ。なので、その戦に勝つという見込みは薄くなる。
 しかし、リーゼベルツ自体に打撃を与えたい『誰か』はこの同盟の話をスルグランと『白き土蜘蛛』に向けて持ち掛けた。そして、この同盟が成り立っている以上、その誰かはこのうまみのない同盟を最大の美味極上グルメとみせかけて取引をしたのである。
「で、その最大の利点極上グルメとは何だったのでしょうか。軍備費?リーゼベルツからの援助?」
 アリアはにっこりしながら聞いた。彼女の態度に、ヨセフもイサクもすっかり怯えきっていた。そんな二人は顔を見合わせると、観念したように口を開いた。
「武器などの物資援助だ」
「ああ。弓や剣などを安く譲ってくれるって言っていた」
 二人の回答を聞いて、アリアは内心頭を抱えた。ここでつながってくるとは思わなかった。
 ちょうどその時、天幕の外が騒がしくなった。最初、アリアはそのままほかっておいて、後からその騒ぎの原因を尋ねればよい、と思っていたが、意外早くその原因は転がってきた・・・・・・・
「アラン―――――」
 なんと、転がり込んできたのは王都に残っていたはずのアラン・バルティアだった。
「すまない。もうすでに陛下にも伝えているのだが、王宮で事変が起こった」

 一瞬、彼の言ったことがわからなかった。
「どういうこと?」
 アランは人目もはばからず、アリアを抱いた。2歳の差があるとはいえ、そしていくら彼が12歳だからとはいっても、この世界ではもうすでに二人は立派な『成人』だ。夜会や茶会で休憩しているときに茂みから見えるような状況になっているのに気付いたアリアは、自分たちの状況が周りからどういう風に思われるのか知っているのだろうかと、鼻をつまんでやりたくなった。
「落ち着いてよく聞け。王宮そのものが宰相一派に乗っ取られ、宮中に残っている王妃シシィ殿下をはじめとする王族方が捕らわれた。陛下もお尋ね者になっている。
 そして、騎士団長セルドア・コクーン卿は解任され、宰相一派の息がかかったものが新騎士団長として据えられた。あなたの弟であり、スフォルツァ公爵であるユリウスは、今のところ生きてはいる・・・・・・。そして、公爵家はほとんど・・・・捕らえられた」
 アランの言葉を聞いて、アリアは目の前が真っ青になった。
「あ、なたは大丈夫だったの…?」
 アリアの掠れた声を聴いて、そして、彼女の身体が震え出したのに気付いて、アランはアリアをしっかりと抱いた。かなり強い力であったが、今のアリアにとっては確かな存在であったので、文句を言う事は出来なかった。
「俺の心配をしてくれてありがとう。一応、僕もお尋ね者になっている。でも、父が逃してくれたおかげで、追手が家に来る前に逃がしてくれたから、こうやってここまで来れたんだ」
 アランはアリアの頭を撫でた。
「そう、だったの…」
 アリアはその言葉に幾分かほっとしていた。アランは一瞬その言葉に戸惑ったが、結局続けて、
「まあ、あなたには酷な話なのかもしれないけれど、スフォルツァ前公爵夫人は宰相に『保護』されているし、唯一リーゼベルツ内に残っているスフォルツァ公爵令嬢であるあなたは宰相が最も手元に置きたがっているみたいで、陛下とは反対に保護するように御触れ・・・が出ている」
 と言った。アリアはその言葉に納得した。
「という事は、宰相はやはり先々代国王の息子であるジェラルド殿下・・を信奉している派閥だったのね」
「そうみたいだね」
 彼は頷いていた。アリアの震えが収まったのに気付いたのか、彼はアリアから離れた。彼のぬくもりが離れるのはさみしかったが、甘えてばかりではいけない、とも思った。

 アランはアリアから離れた後、その場にいたイサクとヨセフに対峙していた。
「ということで、申し訳ありませんが、わが国で最大の事件が起こったみたいです。よって、この会談・・で得られた情報をさっそく活用させていただきます」
 12歳とは思えない堂々とした態度で、二人の大人に向かっていった。二人はただただ頷くしかなく、アランはもともとついてきていた騎士たちに二人の監視をするよう、伝えた。


 リーゼベルツで起こった政変のことは、他の国にも伝わっていたらしく、クロード王子とフィリップ王子も心配された。
「これはあくまでも提案なのですが、しばらくはセリチアに滞在しませんか?」
 リーゼベルツ一行が揃い、他の首脳級もそろった場においてフィリップ王子は真剣まなざしでそう言った。思いがけない申し出に一行を含め全員が戸惑った。それに気づいたフィリップ王子は、
「ああ、先に申し上げますと、今後いかなることが起ころうと、セリチアからは一切何も要求は致しません。あえて言うのであれば、あなた方が正当なリーゼベルツの一行であると、いかなる場合においてもセリチアの王子の名に懸けて宣言いたします」
 とまで言った。すると、グロサリア・スルグランの責任者も、
「そうだな、グロサリアもアンタが正式なリーゼベルツの王であり、その一行であることを示そう。対価はこの話し合いの場を設けたことだ」
「そうですね。僕たちもディートリヒ王がリーゼベルツの王であると、我が主に伝えましょう。グロサリアと同じ対価を示しますね」
 と口々に言った。まだ言っていないのは、『白き土蜘蛛』だけだった。ダリオやヨセフにじっと見つめられ、ため息をつき、
「ああ、グロサリアもスルグランも言うんじゃ仕方ねぇ」
 といい、アリアの方を少し見た後、
「俺らもディートリヒ王、お前らを正式な国の代表として認める。報酬は――――――いらん」
 とそっぽを向いて行った。その顔は少し赤くなっていた。

「すまない、迷惑をかける」
 ディートリヒ国王をはじめとし、リーゼベルツ一行は頭を下げた。

 そうして、一行はセリチアの南端の都市、ブロサリスにとどまり、様子をうかがうことにした。

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