転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 翌朝、昨日行われた調停の話し合いの場に、アリアはいた。今日の戦い・・において、必要な資材を準備していた。ジョルジュやポールからは、
『お前なんでこんなことしているわけ?』
『意外に貴女はやりますね』
 と呆れながら言われたが、アリアは微笑んだだけで、何をどうするのか、という事は全く言わなかった。
 やがて時間になり、調停の場を仕切るディートリヒ王、リーゼベルツの面々、各国の責任者たちが現れた。昨晩遅くに『各国とも2人以上の出席がなければ棄権したとみなす』という文章を国王名義で送ってあり、どの国も二人以上でその場には出席していた。しかし、ディートリヒ王以外のいずれの責任者たちも、昨日使用した円卓が置かれているわけではなかったので、かなり困惑している様子だった。

「では、今からセリチア・グロサリア間の戦の決着、そして、この北部諸国における大義名分を決める戦いを始めます」

 進行役言い出しっぺのアリアは各国の責任者たちを目の前にして、そう言った。ちなみに、もうすでにただの・・・公爵令嬢ではなく公爵代理の資格を持つことは宣言してあり、ディートリヒ王からもそれを認める発言をしているので、身分的には各国の君主やら責任者を相手取るのには不足なく、それを咎める者は誰もいなかった。

「ルールは単純です。この場から矢を放ってあの木まで届くかどうかを勝負する、というものです」
 アリアがそう言った瞬間、全員が『おっしゃぁ』とガッツポーズをしているのが見えた。しかし、唯一クロード王子だけが、首をかしげて尋ねた。
「しかし、それでは一人一人の勝負になってしまうのではないのか?」
 それに対してアリアは笑いながら首を横に振った。
「いいえ、一人ではありません。もっとも、ルール自体は同じで矢をあの木に向かって放つのですが、条件が二つ。一つ目。的はこのリンゴです」
 アリアは自分が持っていた袋の中からリンゴを取り出し、各責任者に渡した。それによって、リンゴに細工が仕掛けられていないことをはっきりさせた。

「そして、二つ目、この的であるリンゴのになるのは人で、頭の上にのせてもらいます。しかし、台になる人は射手と同じ国の人ではなく、違う国の人、セリチアの場合はグロサリア、グロサリアの場合はスルグラン、スルグランの場合はリーゼベルツ、リーゼベルツの場合は『白き土蜘蛛』、『白き土蜘蛛』の場合はセリチア、というように。そうすれば同じ国同士の不正を防げるうえに、同盟国との口裏合わせも防げます」
 アリアは笑いながらそう言った。
「ならば、勝負というのであれば、どのように勝敗は決めるのですか」
 軍師ヨセフは穏やかに聞いたが、彼の眼はかなり勝負に燃えている眼だった。
「勝負は三本勝負で、何個のリンゴを割れたのか、というのを競います。それぞれの的になるリンゴを載せるのは本人、割れたか割れていないかの判定はこの調停・・の最高責任者でもあるディートリヒ国王にお願いしてあります」
 アリアは微笑みながらそう言った。ディートリヒ王は各責任者に頷いて、それが正しい、と言った。
「ということなので、では少しばかり時間を取りますので、誰が射手になるか、誰が台座になるか話し合ってください」
 と、アリアは宣言し、彼女はリーゼベルツの一行のもとに来た。そこには当然、国王はいない。アリアは三人から質問攻めにあった。

「どうしてこんな勝負にしたんだ。もっとましな戦いもあったのではないのか」
「そもそもこんな勝負する必要はあるのか」
「何故あなたが審判ではなく、陛下が審判なのでしょうか」
 そのどれも、アリアの性格とこの勝負の意味がきちんと分かっていれば、答えは出るはずだった。

「この勝負を行うのは単純にこの北部周辺での勢力争いに勝つため、そして、スルグランと『白き土蜘蛛』の本心を聞き出すため。そして、この勝負にしたのは本当に腕があるのならば、誰でも勝利をつかむことが出来るから。そして、陛下が審判になったのは―――――」
 アリアはそこで一回区切り、三人を見渡した。
「―――――私が射手・・として出るからですよ」
 その言葉に、三人は絶句していた。唯一、クレメンスはあまり驚いていないようだった。
「勝てるのか―――」
 クレメンスは呆れながらも『勝つ自信があるのか』とではなく、『勝てるのか』と聞いた。幼馴染(?)のセルドアに武芸を習っている、と聞いてはいるので、そこから妙な信頼はあるのだろう。アリアは、
「ええ、もちろんです」
 と言った。もちろん、セルドアに習ったから、というのはあるのだが、そもそも前世のスペックを受け継いでいるアリアは、どうやら弓道に似ているこの世界の弓術の筋がいいらしく、真実は言ってはいないものの、セルドアにも筋がいいことは認めてもらっている。それを知っているのか、それ以上クレメンスは何も言わなかった。
「そして、台座役にジョルジュさんお願いします」
 アリアはジョルジュの眼をしっかりと見た。ジョルジュは一瞬、目を逸らしかけたが、
「ああ、分かった」
 と言った。


 そうして、各代表が集まり、組み合わせが発表された。
 フィリップ王子が射手の時はダリオ王子が、グロサリアの陸軍准尉マルクスが射手の時はスルグランの軍師補佐ラケルが、ヨセフが射手の時はジョルジュが、アリアが射手の時は『白き土蜘蛛』副頭領のヨリが、そしてイサクの時はクロード王子がそれぞれ的役を務めることになり、矢を射る順番は枝くじで決め、セリチア、『白き土蜘蛛』、スルグラン、グロサリア、最後にリーゼベルツの順となった。

 そして、戦いの火ぶたは切って落とされた。

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