転生したからって、ざまぁされなくてもいいよね?~身内との8年間、攻略対象達との3年間の駆け引き~

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 ダリオ王子の言い分を聞いた後、ディートリヒ王はセリチアの2人に向かって問うた。
「そうダリオ王子は言っておるが、其方らの父王、ギヨームはこの件について何か言っておるのか」
 いくら来賓として狩り会に呼ぶ仲であり、名門公爵令嬢との文通を認めている王子がいるといえども、国王は容赦しなかった。それにはフィリップ王子、クロード王子共に理解していた様子で、『リーゼベルツ』としての発言後に、ディートリヒ国王自身、ましてやアリアにつかみかかるような真似はしなかった。二人は神妙な面持ちで頷くと、
「間違いありません」
 と言った。リーゼベルツ一行から見て左側の位置に座っているフィリップ王子が続けて、
「父上に確認済みです。
 確かに他国や地域の河川の通行料と比べれば高いと思われます。しかし、それはあくまでも我が国を自衛するための措置である。国土は広いといえども、グロサリアのように軍備にかける金はそう多くできない。だから、軍備を十分とはいえぬが、できるだけ確保できる金を、とれるところからとるしかない。
 あとは、そうだな。自国の経済を守る、という意味でもそのように自衛するしかないのだ」
 と言った。その言葉にグロサリアのダリオ王子はふん、と鼻を鳴らし、
「だったら、国ごとつぶされればよい。今は弱肉強食の時代だ。この大陸の北半分がグロサリアのものになれば、そのような心配もいらんぞ」
 と言った。さすがにここまでおとなしくしてきたクロード王子だったが、ダリオ王子の発言に怒りをあらわにし、机を叩きながら、
「ふざけるな。その前に経済で叩きのめしてやるわ」
 と罵った。クロード王子の罵りにダリオ王子が再び何かを言いかけようとしたが、遮られた。
 さすがのディートリヒ王も互いのやり取り・・・・を暗黙に認めていたようだったのだが、うんざりした顔をしながら、口をはさんだのだ。

「お前ら。これ以上やり合うのならば、正式な決闘での勝負にしろ」

 その言葉に、三人ははっとして周りを見た。真っ先にクロード王子はアリアを見、彼女と目があったと同時に、ばつが悪そうな顔をして俯いた。

「大変失礼いたしました」
「申し訳ありませんでした」
「申し訳ない」
 フィリップ、クロード王子は周りの白けた反応に真っ青になっており、王太子とその弟としては本来してはいけないことをしていた。その一方、ダリオ王子は謝ってはいるものの、渋々感がみられ、本気で謝っているとは考えにくかった。

「では、ゴルンゴ川の通行料の話は両国で話し合うものとして、明日時間をもう一度とる。そして、いまはっきりさせておかなければならないのはもう一つ」
 ディートリヒ王はため息をついて、今度はスルグランと『白き土蜘蛛』の代表二人をみた。
「何故今回、そしてこのタイミング・・・・・・・で協定を結ぼうとした、ヨセフよ」
 そうディートリヒ国王に問われたヨセフは待っていました、とばかりにニヤリと笑った。

このタイミング・・・・・・・ねぇ。リーゼベルツアンタらが何も企んでいないのは知っていますが、漁夫の利を得たいのはどこの国でも同じではありませんか?俺らとしては、国を大きくするチャンスだと思ったんですよ。でも、アンタらが余計な真似をしてくれたおかげでほとんどがおじゃんになりましたよ」
 ダリオ王子が虎のような存在であるのならば、ヨセフはまるでトンビのようだ。正確に言うとグロサリアが虎で、スルグランがトンビ、といったところか。何故、こちらの情報を知っている、という疑問にここでも行き当たった。さらに、ヨセフは続けて、
「まあ、でもおかげでこの場からアンタら含めて諸国の皆さんに脅威に怯えてもらいたいもんですわ」
 と笑いながら言った。
 『白き土蜘蛛』の頭領イサクもまた、
「ああ、まさかこう来るとは思わなかっただろう?確かにグロサリアと組んで、挟撃という手段もあったし、セリチアと組んで『海軍』の補充というという手段もあった。だが、俺らは所詮、金でしか動かない。それはお前たちもそれは知っているだろう」
 と言った。だが、もちろんそれだけでリーゼベルツの質問に答えたとは言えなかった。だが、これ以上このまま質問し続けるだけ無駄だろう。もとより、素直に吐いてくれないだろう、と踏んでいたので、打ち合わせ通りに・・・・・・・・リーゼベルツの一行はそれぞれ顔を見合わせた。その時に、アリアはディートリヒ王へ視線で合図をした。そして、他の3者が暇を持て余しかけた時、前へすっと出た。
 実はアリアが前に出る、という事は国王以外のリーゼベルツ一行の他の者にも知らせていなかった。ほかの人たちには知られないように、ある取り決めを出立前に国王とすでにしていたのだ。なので、クレメンスと休憩時に喋ったときにはすでにこの人選の理由は知っていたし、調停前の打ち合わせでのジョルジュとのやり取りは演技だったのだ。
 ほかの人たちの困惑、特にクロード王子は止めようとしたが、隣のフィリップ王子にその行為を止められていた。

「あなた方の思惑はよく・・分かりましたわ」
 彼女は精一杯無害な笑みを浮かべていた。そのため、セリチア以外の他の代表者たちからは『なんでこんなところに女が?』という視線を向けられていたし、セリチアの代表とクレメンスとジョルジュ・ポールからは困惑のまなざしを受けた。しかし、いまさら他人の視線など気にしないのがアリアだった。

「やはりスルグラン国も『白き土蜘蛛』も正直言ってくださらないようなので、では、その理論・・が無効になるようにしましょう」
 彼女はにっこりと笑いながら爆弾を落とした。ヨセフもイサクもアリアの顔をガン見して、何者なんだこいつ、という顔をアリアに向けたが、もちろんアリアは無視を決め込む。

「もちろん、明日の話し合いの場で、セリチアもグロサリアもおとなしく話なんかしませんよね?」
 そして、そう言いつつ、二つの国の代表者の方を見ると、若干一名、心当たりがあるのか顔を背けた人物がいた。

「という事なので、明日、お互いの『正義』をかけた戦い・・をしてもらいます」

 そう言ったアリアに、セリチアもグロサリアからはぁ、ふざけるな、という罵声が入ったことは言うまでもなかった。そのうえ、スルグランと『白き土蜘蛛』からは、何のためにこんなお遊び・・・が必要なんだ、と詰め寄られたが、アリアは全てに対して、『あなた方は自分たちの行動に対して、大義名分・・・・が欲しんですよね?』と首をかしげながら言ったので、彼らも黙った。

 そして、調停の場は混乱により流れ解散となり、アリアは単身必要なものをすぐ近くの商店街まで買いに行った。それ・・は貴族の女子が、通常一人で持つのには少し重いが、アリアは持てる上にある程度の護身は習っていたので、特に護衛は必要なく、無事に宿まで戻ってこれた。
「お前、何すんの?」
 ジョルジュはそれを見て、尋ねてきたがアリアは微笑んだだけで答えなかった。

「明日見ればわかるよ」

 アリアはそう言って、すぐに寝る態勢に入った。明日はアリアもまた戦う・・。そして、それは失敗は許されない。

 緊張はしていたものの、すぐに夢の世界に落ちることが出来た。

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